*2013.10.8 メモ

 調停員氏から最後の調停日に契約書の法的解釈について教えてやろうとの話があった。当方の解釈を付けて判断を仰ごう。本訴に向けて必ずや役に立つ筈だ。

 

*2013.10.11 メモ

①借地借家法適用除外とは何か?

②高架下物件は借地借家法適用除外なのか?

③当商店街店舗は借家に該当するのではないか?

④借地借家法の強行規定は賃借人の力となるか?

⑤契約自由の原則があるとはいえ公序良俗違反は問えるのではないか?

⑥どこが借地借家法に違反するのか?

 

*2013.10.15 メモ

 賃貸借契約書に関しての質問状、「借地借家法適用除外という妄言」は、調停書証として、簡裁、近ビルおよび近鉄沿線の布施商店街と八尾商店街に、「注意喚起せよ!」と送り付けた駄文である。

 

「借地借家法適用除外という妄言」(2013.10.15)

 賃貸借契約書第1条(総則)に記された「借地借家法適用除外」という文言が、いったい何を意味するのか、またこの文言から何を導き出そうとしたいのかは、当の近鉄ビルサービスに聞いてみなければ分からない。だが賃借人が借地借家法の立法精神である弱者保護に値せず、借地借家法適用除外だから賃借人を守る必要はないと、賃貸人である近鉄ビルサービス側が思っていることは容易に想像できる。この借地借家法適用除外というという考えは賃貸借契約書の隅々まで色濃く染められていて、まるで借地借家法と敵対しているように見える。では近鉄ビルサービスが用意したこの賃貸借契約書は、借地借家法と相容れないものなのだろうか?

 しかし借地借家法適用除外という近鉄ビルサービスの主張は、世間一般に通用する論理として成り立つものかどうか疑問がある。賃貸借契約書に借地借家法適用除外と明記すれば、賃借人の権利は全て無視してもよいという論理には無理がある。そもそも借地借家法とは、弱者である賃借人を守るために作られた法律ではないか。その借地借家法を無視し否定することの中には、公序良俗に違反するだけでなく、もっと重大な法令無視・法律否定の内容が含まれていると考える。

 以下、賃貸借契約書に記された各条項のうち、どこが借地借家法や民法に違反していると思うのか、疑問点を挙げてみたい。

 賃貸借契約書第1条(総則)に記された借地借家法適用除外という文言が先ず問題だと思う。

 賃貸借契約書第1条(総則)には、「乙は、本物件が公共性を有する鉄道高架構造物を利用した特殊物件であること、借地借家法の適用除外物件であることおよび環境の特殊性を認識して甲から賃借し、これに伴う甲の指導監督を受けるとともに、近畿日本鉄道株式会社および甲が別に定める諸規則ならびに本契約の各条項を固く守ることを約諾する」とある。ここで借地借家法適用除外物件という文言が出てくるが、なぜ借地借家法の適用除外物件であるのか説明がない。賃料を払っているにもかかわらず、突然借地借家法適用除外物件と言い渡されて、理不尽な気持ちに苛まれるだけである。

 賃貸借契約書を見ると、賃貸対象は鉄骨平屋建てとなっており、ここから借地権を否定する。高架を支える鉄筋柱と壁のある建物に、賃借人は内装工事すなわち造作を施しただけと言いたいらしい。だが賃貸対象が鉄骨平屋建てとなっているのなら、鉄骨平屋建てを形成したのは賃借人であり、したがって自ら建てた店舗を自ら賃借するというおかしな話になるが、この矛盾点を近鉄ビルサービスはどう説明するのだろう?

 さて賃借対象は鉄骨平屋建てであり、土地ではなく建物を賃借する形を取っている。ここから借地権は発生しないと言いたいのだろうが、借地借家法適用除外と飛躍するには無理がある。

 借地借家法第1章第1条(趣旨)には、「この法律は、建物の所有を目的とする地上権及び賃借権の存続期間、効力等並びに建物の賃貸借契約の更新、効力等に関し特別の定めをするとともに、借地条件の変更等の裁判手続きに関し必要な事項を定めるものとする。」と記す。もし借地権が成立しなくとも、建物の賃貸借契約は成立し、借地借家法の適用条件下に置かれる。したがって賃貸借契約書のなかで借地借家法適用除外と強弁することは、賃借人保護の借地借家法の立法精神を否定するものであり、借地借家法に違反すると考える。

 借地借家法第3章は「借家」に関する事項である。この場合の「借家」とは何を指すのか?借家とは建物の賃貸借に他ならない。ならば近鉄ビルサービスが借地借家法適用除外とと記す当商店街店舗もその範疇に入ることは間違いあるまい。借地権を否定したとしても次に借家人の権利が発生する筈だ。だとしたらこの章が事態を打開する鍵になるに違いない。この章の強行規定は、第30条と第31条だ。

 第1節「建物賃貸借契約の更新等」の最後に位置する第30条は、「この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは、無効とする。」とある。更に、第2節「建物賃貸借の効力」の最後に位置する第37条は、「第31条、第34条及び第35条の規定に反する特約で建物の賃借人又は転借人に不利なものは、無効とする。」とある。これが強きを挫く力となり得る。

 次に、賃貸借契約書第16条2には、(免責事項)として、2項「甲は本物件が鉄道高架構造物を利用した特殊物件であることに起因する騒音、振動、漏水、高架構造物の一部剝離落下、地盤沈下等に関連して発生した事故により、乙が被った損害についてもその責を負わない。」とあるが、あまりにも身勝手な主張であり、いかに契約事由の原則があるとはいえ、民法第90条の公序良俗違反に該当すると考える。

 水漏れ・地盤沈下は当商店街の構造的な欠陥であるが、賃貸人近鉄ビルサービスはその根本的な解決を図ることなく、しかも賃借人にその危険を知らせることなく、反対にその責を賃借人側に押しつけることを目的にこの賃貸借契約書を作った、という指摘を以前から行ってきた。

 だが賃貸人近鉄ビルサービスは、その疑問・質問に一切答えることなく現在に至っている。この間の対応を見ても、ますます公序良俗に違反していると言わざるを得ない。しかも賃貸人近鉄ビルサービスは、文句があるなら裁判に訴えろという態度である。賃貸借契約書第26条(紛争処理「本契約に関し、甲・乙間において紛争または訴訟等が生じたときは、大阪地方裁判所を管轄裁判所とすることを甲及び乙は予め合意する。」これを近鉄ビルサービスの自信の表れと見るか、恥知らずと見るかは、立場によって当然異なるだろう。

 更に、賃貸借契約書第20条(使用中止、立ち退き、支障部分の撤去)1項には、「甲または近鉄が、鉄道高架構造物の改造、改装、改築、保守等の工事を行う場合において、本物件または共用部分の使用中止もしくは立ち退きを申し出たときは、乙は異議なくこれに応じなければならない。」

 同2項には、「甲または近鉄は、天災地変等の不可抗力による高架構造物の全部または一部の滅失、毀損に伴い改造工事等を行う場合において、鉄道輸送の早期復旧のため緊急やむを得ないときは、本物件または共有部分に関し、工事の支障となる部分(内装その他乙所有物件を含む)を乙の承諾を得ないで撤去することができる。この場合、前項の規定を準用する。」

 同3項には、「乙は前2項の規定により損害を被った場合においても、甲または近鉄に対して、一切その賠償を請求できない。なお第23条の規定は、前2項の場合にも準用する。」

 これらは全て借地借家法の強行規定に違反する。とりわけ3項の規定は、民法第9条の公序良俗違反にも該当すると考える。世間の常識とは全くかけ離れているものと言わざるを得ない。

 賃貸借契約書第23条(求償等の禁止)では、「乙は、本物件の明け渡しに際して、いかなる事由または名目によるを問わず移転料、補償費その他これに類する一切の財産上の給付を請求しないのは勿論、乙が本物件内外に設置した造作・設備等一切の動産の買い取りを甲または近鉄に請求できない。」

 これも一括して公序良俗違反を問いたい条項であるが、その前に借地借家法に抵触していないかが先ず問われるべきだろう。借地借家法第28条には、(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)として、「建物の賃借人による第26条第1項の通知又は建物の

賃貸借の解約の申し入れは、建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過、建物の利用状況及び建物の現況並びに建物の賃貸人が、建物の明け渡しの条件として又は建物の明け渡しと引き換えに、建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければすることができない。」とある。

 すなわち、賃貸借契約書第23条(求償等の禁止)は、借地借家法第28条の(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)に違反すると考える。もし賃貸人近鉄ビルサービスの都合で、賃借人が建物を明け渡す場合には、賃貸人は建物の明け渡しと引き換えに建物の賃借人に対して財産上の給付を引き換えにしなければならない筈だ。

 こうして見てくると、賃貸人近鉄ビルサービスは当商店街の賃貸物件が借地借家法に該当するにもかかわらず、さも借地借家法の適用除外物件物件であるかのように強弁し、賃貸借契約書を借地借家法の適用除外という記述で染め上げ、賃借人を悪意ある策術で混乱させようとする意図を感じる。これはもう借地借家法を否定する無法者の暴走と言えるかもしれない。賃貸人近鉄ビルサービスは、法令遵守する気持ちは毛頭なく、単なる企業論理で賃借人に対峙しているのだろう。

 賃貸人近鉄ビルサービスが用意した賃貸借契約書は借地借家法の適用除外という妄言で全体を色付けし、本来は大事に扱わなければならないお客様である賃借人を蔑ろにし、嘘偽りで店子を騙そうとするものだ。

 

 全くの門外漢が、無い知恵を絞って果たし状を叩きつける無謀な挑戦だった。布施商店街と八尾商店街からは全く反応はなかったが、情報は近鉄ビルサービスに筒抜けになっているだろうことは見て取れた。さてどんな波紋を起こすか楽しみだ。

(後で気付いたことだが、文具裁判近ビルS陳述書のなかに当商店街はスケルトン貸しという記述がある。スケルトン即ち基本構造のままで賃貸し、間取り・内装・設備などは借り手が自由に仕上げる。スケルトン貸し店舗が借地借家法に該当するかどうかは、建物の独立性と排他性によるらしい。)