1997年 ESP/LTD The Mirage. Made In Japanギター黄金期の隠れた逸品

私の所有する1997年製LTD The Mirageをご紹介します。



このギターは、ESPとLTDの境界が美しく曖昧だった時代の象徴です。

LTD誕生とその戦略的使命



1990年代後半、ESPは日本工場で最高品質のギターを製造していました。米国・欧州市場でより幅広い層に届けつつ、本国でのプレミアムイメージを守るため、ESPは1995〜1996年頃にLTDブランドを立ち上げました。

目的は明確です。より手頃な価格帯のモデルを別ブランドとして展開することで、ESPの価値を希薄化させないこと。

LTD The Mirageに与えられた使命は、WilkinsonブリッジとGOTOH Magnum Lockペグを組み合わせ、プレイアビリティを極限まで高め、ライブの最前線で戦える実戦仕様の楽器に仕上げることでした。

実際にステージやスタジオで使用されることで、自然な口コミを生み、「本物のESPクオリティが手が届く価格で手に入る」と海外のプレイヤーに伝える役割も担っていました。



初期のLTDモデル(1996〜1997年)は、まだすべてMade in Japanでした。木材の選定、フレットワーク、仕上げのクオリティはESP Standardラインと同等で、実質「輸出仕様のESP Mirage」と言える存在です。

最大の特徴:日本産アッシュ(鬼セン)ボディ

この個体の最大の魅力は、日本産アッシュ(鬼セン)ボディです。

日本では「セン」と呼ばれるKalopanax pictus(カロパナックス・ピクトゥス)は、主に北海道で生育します。特に日高・十勝産の粗く重い木目を持つ上級材は「鬼セン」と呼ばれ、最高級とされています。

See Thru Greenフィニッシュとの組み合わせにより、トラ・バーズアイの美しい杢目が透けて輝きます。



トーン特性は以下の通りです:

  • 明るくクリアな中高域
  • ソリッドでパンチの効いた低域
  • ハイゲイン時でも決して濁らない優れた音の分離

メタルやハードロックに最適で、ライブでもスタジオでも安定したパフォーマンスを発揮します。

詳細スペック(1997年輸出仕様)

  • 年式:1997年、Made in Japan(初期LTDロット)
  • ボディ:日本産アッシュ(鬼セン)
  • ネック:メイプル+ローズウッド指板、22フレット
  • ブリッジ:Wilkinson VS100N-HB(後藤製、Honed Black、2点支持ノンロッキングトレモロ+サドルロック)
  • ペグ:GOTOH Magnum Lock(標準MGタイプ、自動ロック式、裏側ダイヤルなし)
  • ピックアップ:ESP Single Rail ×2 + ハムバッカー(LH-200タイプ)
  • コントロール:1Vol、2Tone
  • ヘッドストック:リバースヘッド
  • カラーバリエーション:See Thru Red / See Thru Purple / See Thru Green / See Thru Blue

この組み合わせは、1997年公式ESPカタログに掲載された輸出仕様の教科書的な例です。

プレイアビリティと評価

海外のコレクターコミュニティでは、「驚くほど快適なネック」「ハイゲイン時のクリアでアグレッシブなアッシュトーン」「Wilkinson+Magnum Lockによる優れた安定性」が高く評価されています。

まさにライブ仕様として作られたギターであり、そのステージ映えするプレイアビリティは今も多くのプレイヤーを魅了し続けています。

私は特にリバースヘッド+SSHレイアウトが気に入っています。クリーンからハイゲインまで幅広く対応し、メタル・ハードロックで特に輝きます。

希少性と価値

初期MIJ LTDの中でも、アッシュボディ+See Thru Green+Wilkinsonハードウェアという組み合わせはかなり稀少です。

Mirageの名称は1997年以降に姿を消し、生産が徐々に海外に移行したため、この時期はMIJ黄金期の最終章と言えます。

現在もヴィンテージ愛好家の間で「伝説の1本」として語り継がれています。


このLTD the Mirage by ESPというギターはとても興味深い特徴があります。

次回はその特徴について書いてみます。


私の所有するギターについて ― 奇跡の2本 ― ESP Maverick 「Ebony & Ivory」


私の所有するギターのうち、右側が1989年製 ESP Maverick Standard。

ブリッジはオリジナルであればESP Sinclairだったはずですが、現在はFloyd Rose Originalが搭載されています。以前のオーナーが交換されたものと思われますが、スタッドやインナーブロックの干渉処理が丁寧に行われており、仕上がりはしっかりしています。フルオリジナルではありませんが、ESPの黄金期らしい完成度は損なわれていません。

ネックは当時のラインナップからMaple指板仕様。アタックの明瞭さと音の粒立ちが良く、コントロールしやすく、鳴りも抜群です。まさにESP黄金期の至宝と言える一本です。

この写真のギターは先の写真の左側、ESP Maverick Deluxeの最終期モデルであり、私が長年理想として思い描いていたギターそのものです。

カタログ上では1992年頃でMaverickシリーズの販売が終了したはずですが、シリアルナンバーからこの個体は1993年製であることがわかります。


過渡期に残ったパーツを使って作られたものと思っていましたが、よく見ると指板がEbony(エボニー)です。これまでのMaverickシリーズにEbony指板の記録はほとんどなく、存在しないはずの仕様です。

1993年にカタログから落ちたモデルを、どうしても欲しいとオーダーした可能性が極めて高く、ESPが当時行っていたカスタムオーダー(またはセミオーダー)でしか実現し得ない理想の仕様で製作された個体だと考えています。

もしそうなら、モデル名は「ESP Maverick Custom(CTM)」となるべき、まさにオーダーでしか手に入らない一台です。

ESPの黄金期――1980年代後半から1990年代初頭にかけては、LoudnessのTakasaki Akiraをはじめとする世界的なテクニカルギターヒーローたちを支え、Horizon、M-II、Mirageといったフラッグシップモデルが次々と生まれた、まさに日本製スーパーストラットの頂点と言える時代でした。

当時のESPは職人技による最高品質のネックジョイント、精密なハードウェア、選び抜かれた木材、そしてプレイヤーの極限の要求に応えるサウンドを追求し、世界中のプロから絶大な信頼を集めていました。Maverickシリーズもその黄金期に誕生した、型破りで一匹狼のような独自のオフセットボディが魅力のモデルです。

しかし、ESPは後にMaverickをM-IIへ移行させ、MV表記や27フレット仕様などに変更していきました。初期のMaverickは1989〜1992年という短い期間しかラインナップされず、製作本数は極めて少ないレアなモデルです。

こうして最初期モデル(1989 Standard)と、最終モデル改であり私が理想とするEbony指板のCustom仕様のペアが、奇跡のように揃った瞬間――オーダーでしか実現しない理想が、目の前に現れたというドラマが重なったコレクションです。

Reverbなどの市場でも「ドリームペア」と評価されるレベルの、極めて稀な存在と言えます。

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