
食肉に関して、イギリスに来て実感したことはやはり日本人はあまり肉食じゃないということだった。一度の食事にそんなにたくさん肉を食べないのが我々。ここではスーパーで「薄切り肉」とか「細切れ」なるものがない。肉は、牛肉、豚肉、鶏肉そして羊肉が一般的で、塊かステーキ用の厚切り、鶏肉はムネ肉などの一枚肉か一羽丸ごとの状態で売られている。ミンチ肉ももちろんある。ハムやソーセージなどの加工肉もとても「肉」という感じである。私はそれらの小さめの一パックを買って、どうにか薄切りにしたり、細かく刻んだりして使うのだけれど、一つにパックされている量自体も多くて、とても一回では調理しきれない。薄切りにするのは難しいけど、肉を大き目の塊で煮物なんかに入れてしまうと、やっぱりおいしくない。とんかつ(これは和食なのか分からないけど)、豚のしょうが焼きのような和風の肉料理もあるけれど、一般的に和食の中に占める食用肉の量はやっぱりかなり少ないのだなと思った。肉を含む料理を食べても、実際は一緒に調理されている野菜の方が分量が多いのではないかな。鍋料理などでも。しかし日本人は洋食や中華料理も大好きだから、結局、最近では案外、たくさん肉を食べている。
そしてイギリスに来て感じたこともう一つ。実は肉は思っていたよりおいしいものじゃないのではないか、ということ。ここのスーパーで売っている肉など、あまりおいしくない。ここに来て、しばらくして牛肉を食べることをやめた。臭みが強くて、つらい。日本人の私にとっては日本のスーパーで売られている肉の方が質がよく思われた。同居の中国人たちも臭みを感じるらしくて、自分たちでさらに時間をかけて血抜きをしたり、酢につけたりしている。日本人留学生の友人は、ここの肉の臭みやまずさは、飼料が原因かも知れないと言っていたが、とにかくここにいて私の肉に対する食欲はかなり減退した。不味いという表現は不適切かもしれないが、とにかく、鶏肉と豚のロース肉の高いもの以外、和食には向かない味。今は、肉は鶏肉にして、たまに豚肉を食べることにしている。
ここにいると、肉が動物の一部であることを嫌でも見せ付けられる思いだ。肉が塊で売られているし、骨付きも一般的だし。日本人はおそらくこれを見るのが苦手で、肉食に対する罪悪感みたいなものを持っている人も結構いると思う。だから日本では良くも悪くも食用肉はとても「加工」されている。薄切りにされたりしているし、臭いもかなり少ない。このような肉でないと調理の面では和食の味を損なうし、気持ちの面では肉食の罪悪感を刺激することになるのじゃないかと思う。
一般的なイギリス人や、あと同居の中国人たちも日本人よりよく肉を食べるから、ここでの生活では「肉」をよく見る。中国人4人は鶏を一羽丸ごと買ってきたりするし、よいダシを取るために骨付き肉を好む。イギリス人や中国人の方が、肉食文化において進んでいるから、臭みを消しておいしくするいろいろな調理法を知っているし、実際、たまにここのレストランで食べる肉料理、同居人たちが調理してくれる肉料理はやはりおいしい。中国人にとっては朝を除いてほぼ毎食食べるもののようだから、おいしい肉料理へのこだわりも強い。しかし私の作る食べ物、そして日本人としての私にはあまり肉は以前ほど必要ではないのではないかと感じ始めてしまったところである。
イギリスは同時に、ヨーロッパの中では一番、菜食主義者の割合の多い国だそうだ。実に人口の約9%弱。スーパーでもベジタリアン向けの食品も多い。先日、院生仲間と食事に行った際は、9人中2人がベジタリアンなので、2人はベジタリアン・メニューの中から、それぞれラザニアとべジ・バーガー(大豆由来のハンバーグのサンドイッチ)を注文していた。今、興味を持ってネットなどで調べているところ。ベジタリアンにもいろいろな種類があるらしい。純菜食主義者(この中にも細かい区別があるらしい)の他にも、乳製品も食べる人卵も食べる人、魚介も食べる人、鶏肉は食べる人。イギリスでは宗教・思想的な理由からという訳ではなく、菜食主義をファッショナブルであると考える人もいるらしく、若い人が実践したりするそうだ。あと、ダイエットにいいとか。ただし、肉食をやめて食事に物足りなさを感じてしまって、お菓子などをよく食べるようになり、結局、太っているという人も結構いるようだ。
では私は乳製品と卵と魚介と鶏肉を食べる人になろうかな、などと思う。しかし私は我慢など苦手なタイプだし、食べることが好きだし、ま、これと決めずにほどほどに。バランスの悪い食事が、なんだかんだ言って一番いけないのだし。それに年末が近くなり、日本で親しい人と囲むおいしいすき焼きやしゃぶしゃぶなど、そのうち夢に見るのじゃないかと思う今日この頃。
(写真は私の部屋から今日の窓の外。ここは大学の敷地の端でその向こうは小さな林と住宅街。先日、名古屋で霧が出た日に友人が写真を撮って送ってくれた。その日は、イギリスって霧の日は実際には案外少ないよな、と思っていたが、その日の夕方からここでも濃い霧が出てもう丸二日以上、晴れない。明日はブリストルへ行く。)