母は自分が死んだあと、どうして欲しいかなにも言ってなかった。

 

自宅で亡くなったので、自宅で家族葬をやることにした。

葬儀屋に頼んで祭壇をつくってもらい、母の実家と同じ日蓮宗でお経をあげてもらった。

出棺前、死んだ母を改めて見て、このとき初めて涙が止まらなくなってしまった。

 

遺影を持ち、霊柩車の助手席に乗り、クルマで15分くらいの火葬場まで行った。

火葬場の係員が、お別れの前になにか話したいことはあるかと訊いてきた。

すると、父が「母も好きだった宮沢賢治の『雨ニモ負ケズ』の詩」をそらで言い始めた。

ちょっと驚いた。

それから待つこと数十分で骨になって出てきた。

なんか呆気なかった。

 

火葬場から自宅に帰るときは棺が骨壷に変わっていた。