先日、寝ぼけまなこで新聞を開くと、松村雄策さんの訃報が載っていた。

 

通常、政治家や大企業の社長、芸能人、スポーツ選手等著名な方ばかり載る欄なので、失礼ながら松村さんが載るのが意外だった。

 

松村さんは『ロッキング・オン』の創刊者の一人であり、編集者、執筆者としてご活躍された方。

 

僕は中学生の頃に『ロッキング・オン』に出会い、以後20年近く購読していた。

 

松村さんは既に編集者ではなく、いち執筆者だったが、社長の渋谷陽一さんとの対談が毎月掲載されており、この方の経歴を知るまで結構な時間を要した覚えがある。(Wikipediaも無い時代ですからね)

 

僕はそれまで「ベストヒットUSA」で紹介されるような、洋楽のヒット曲ばかり聴いていたが、『ロッキング・オン』に載ているアーティストは、見たことも聞いたこともない人が多かった。

 

でも、雑誌が売れないとお話しにならないので、当時、売れ線だったワム!とかマドンナとか、デュラン・デュランとかもたまーに、表紙になったり記事が載っていた気がする。

 

松村さんは当時30代だったが、ビートルズやニール・ヤング、ドアーズあたりのアーティストを中心とした文章を書いていた。

 

それらのアーティストたちは、当時の僕にとって遠い遠い昔に活躍した人たちであり、松村さんの文章はおっさんが青春時代を懐かしんでいる印象だった。

 

今の30~40代のライターがオアシスやニルヴァーナあたりを毎月のように取り上げて、「凄かったんだよな~」と言われても、今の若い人たちはピンとこないと思うのと同じ。

 

それと同時に「おっさんになってもロック聴くんだな」とも思った。

 

人間て30代くらいになったら、自然とサブちゃんとかの演歌が好きになって、マンガもアニメも見なくなって、ゲームもしなくなるもんだと思っていた。

 

実際、自分の周りに親も含めてロックが好きな大人はいなかったし、アニメに夢中な大人もいなかった。

 

仕事としてロックに関わっている渋谷さんは自然に受け入れたが、自由人のような松村さんがロックを深く愛しているのは不思議な感じだった。

 

今は逆にロックはおっさんの聴く音楽だし。

 

アニメやアイドル、ゲームに夢中なおっさんだって当たり前にいる。

 

居酒屋メニューや、昔食べれなかった蛎や山菜が好きになったりの変化はあるけど、ずっと好きだったものが急に変わるようなことは無いし、時には新たに受け入れたりするものもある。

 

渋谷さんが『ロッキング・オン』のHPに松村さんの追悼文を寄稿していて、松村さんの部屋はビートルズなどのポスターがびっしり貼られており、「とても70歳の老人の部屋には見えない。まるで学生の部屋のようだ」とのエピソードを書いていた。 そういうことなんだろう。

 

 

松村さんの文章はほとんど思い出せないけど、『ロッキング・オン』を購読している間は必ず目を通していたので、僕の考え方の片隅の一部になっているのかもしれない。

 

ただ、誰の曲だったか「my summer is gone」という歌詞が引用されており、それが「大人になった」とか、「青春が過ぎ去った」と言った意味であるという文章は今でも残っている。

 

だからといって「my summer」を満喫したとか、悔いなく過ごしたとかそういう話ではないのだが....。

 

松村雄策さんのご冥福をお祈りいたします。