高校一年の冬、おれは子供の頃から続けた大好きな野球を辞めた。
あの時はもう二度と野球なんてやるはずないと思っていた。
中学時代は県内で1、2位を争う有名な選手。県外の有名な高校からも声を掛けられた。
地元で甲子園に出たい。そんな思いもあって県内の高校に進学したんだ。
1年からベンチ入りで全試合出場。甲子園を掛けた夏の県大会決勝。相手は名門霞ヶ浦高校。
霞ヶ浦のエースは同じ1年の二階堂。この試合おれは5打席連続三振でボールにすら当てること
すら出来なかった。結果は12-0の大敗。
野球人生で初めて味わった挫折だった。
その後、負ける事が怖くなり野球をするのが嫌になった。練習も行かなくなり次第に野球から
遠ざかっていった。
幼馴染でマネージャーの里香に言われた。「逃げてるだけだって。弱虫って」それから里香とは
しばらくグランドで逢うことはなかった。
里香がチームのために頑張ってる姿を見ると里香に素直に逢うことは出来なかった。
それでも、おまえ毎日家にきてまた「一緒に野球やろう」って言ってたな。
それから半年後、里香は親の都合で県外の高校に引っ越した。
里香が居なくなって初めて気づいた・・・
里香がおれの為にチームや監督にもう一度「野球をやらせて欲しいって」何度もお願いしてたことや
捨てたはずのおれのぼろぼろのグローブを大事に取ってくれていたことを。
もう一度だけ野球に掛けてみようと思う。
ぼろぼろのグローブと里香との約束の為に・・・
諦めた夢の甲子園 第2話へつづく