興味深いニュースを発見!
世界最大のステーブルコイン発行企業のテザー社が本社をエルサルバドルに設立することを発表しました
— アンゴロウ@暗号資産 (@angorou7) January 14, 2025
エルサルバドルは世界で初めてビットコインを法定通貨にした国です。#ビットコイン
エルサルバドルは暗号資産関連事業を推進するための規制やインフラが整備されつつあるので、… pic.twitter.com/5EQhbjioDV
テザー社といえばUSDTを発行する会社ですが、
ビットコインが法定通貨になっている国に本社を設立する目的とは…?
今回は、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にした経緯と、現在の状況について調べてみました。
エルサルバドルとビットコイン
中南米に位置するエルサルバドルは、2021年9月に
世界で初めて仮想通貨を法定通貨にした国です。
ビットコインはエルサルバドルが認めたお金であり、
一般市民がいつものお買い物で使えるようになりました。
さらに2021年11月にはビットコインを核にした
「ビットコイン・シティ」の建設計画が持ち上がり、
エルサルバドルは世界で最もビットコインを活用する国を目指したのです。
ところが、それから1年を経過しても進展が見られず、
政策は失敗かと国内外で噂される事態となりました…
そもそも、どうしてエルサルバドルは自国の通貨を廃止し、
ビットコインを法定通貨にしようとしたのか。
それは、金融包摂の加速、経済の活性化のためです。
金融包摂とは英語でファイナンシャル・インクルージョンとも呼ばれ、
簡単に言えば「誰にでも金融サービスへアクセスできる仕組み」を作ることです。
例えば路上で拾った不用品を売りながら暮らしているような貧困層が多い国では、
銀行口座を持たない、定職を持たない、安定的な収入がない、
その日暮らしの人もたくさんいます。
こうした人が投資をしたり、融資を受けたりするのはほぼ不可能です。
金融包摂(きんゆうほうせつ)は、これまで金融と関わりの持てなかった人へも必要なサービスを届けられるような仕組みを指します。
仮想通貨のシステムは、スマホ一つあれば保有も取引も可能。
ビットコインを法定通貨にしたのは、
エルサルバドルが従来の銀行システムを利用できない市民が多いからだと考えられます。
エルサルバドルが仮想通貨を選んだ理由
内戦で自国での就労が難しくなったエルサルバドル国民は、アメリカをはじめとする海外へ労働の場を求めるようになりました。
現在でも銀行口座を持たない人も多く、
海外で働いて得たお金で国内に住む家族に仕送りする人も珍しくありません。
従来の海外送金システムでは高い手数料を支払うため、
一生懸命働いても、家族が受け取るお金はほんのわずか…ということもあります。
ビットコインなら、少ない手数料でスピーディーに送金できます。
国が破綻しても、ビットコインとして保有している個人の資産が差し押さえられることもないのです。
政府としても、内戦のたびに価値が地に落ちる自国通貨よりも、需要と供給のバランスで価格が決まるビットコインでやりくりした方が安心だと考えたのでしょう。
法定通貨同士の為替は他国の影響を大きく受けるため、
それならいっそ仮想通貨を国のお金にしてしまえ!というのもうなずけます。
エルサルバドル政府は、
公式ウォレットアプリとして「Chivo(チボ)」を開発。
これを国民に無料配布し、
インストール&本人確認を条件に30ドル相当のビットコインを提供しました。
利用するかどうかは任意ですが、
タダで3,300円(当時のレートで)もらえるなら欲しい!という人も多かったでしょうね。
しかし、もらったビットコインはすぐに米ドルや自国通貨に換金することはできないとされ、
一度は買い物に使うか送金して、
二次流通的に取得した人が換金できる仕組みが採用されました。
Chivoは手数料要らず!交換ポイントも設置
エルサルバドル政府は、国民のビットコイン利用を促すために
決済や送金、換金の手数料を完全に免除します。
これまでのお金で取引するより、
ビットコインでピピっと支払いを済ませた方がお得になるわけですね。
また、ビットコインと米ドルを交換するための「Chivoポイント」を国内各地200か所に設置します。
24時間365日稼働するこの交換所のおかげで、
エルサルバドルでは昼夜を問わずいつでもビットコインを米ドルに換えることができました。
エルサルバドルの現在
こうしてスタートしたエルサルバドルのビットコイン政策でしたが、国内では法定通貨化に反対の声も多かったといいます。
2022年の調査では、国民の約8割がビットコインにNOを突き付けたとか。
さらに、国際通貨基金(IMF)からも
「国の経済にとってリスクとなりうる」として法定通貨採用を取りやめるよう求められています。
しかしながらエルサルバドル政府は、
米ドルに依存する自国経済の立て直しのためにビットコインを利用するのは有効であり、
「世界的な信用を得ている通貨だからこそ選んだのだ」と自信満々の様子。
いっぽう市民は…
観光地のおやき売り場でビットコイン決済が使えるところもあれば、
首都サンサルバドルの市場ではビットコインによる支払いに対応していないお店も多いです。
なぜ受け入れないのか聞くと、
「誰もビットコインなんて使わないよ」だって(^_^;)
世界的にはビットコインの需要が高まっているものの、
エルサルバドル国民にはまだまだ一般的に普及していないのが事実です。
そもそも銀行口座すら持っていなかったような一般市民にビットコインを取り扱うスキルを求めるのは現実的ではなかったと言えるでしょう。
30ドルが入ったウォレットを渡されたところで、
土産物店のおばあちゃんにいきなり「今日からこれで管理しろ」っていうのは難しいですよね![]()
NHKによるエルサルバドル市中への取材記事を見ましたが、
まあ、日本でいうところのPayPay普及率と同じくらいなのかな?という感じみたいです。
使っている人は日頃から使っているし、
導入していない店もまだまだたくさんある。
都会と田舎で異なるというより、
お店側と利用者側の意識の問題とか、
新しい決済方法を導入できる経済的余裕があるかとか、
そういう話なんだと思います。
ビットコイン決済が当たり前で、
現金で買い物する人の方が珍しくなってからの法定通貨化だったら問題なかったかもしれませんが、
エルサルバドル政府の決定がちょっと時期尚早だったせいで
一般市民から反発されることになったのではないでしょうか。
エルサルバドルの法定通貨は3種類
エルサルバドルには、かつてコロンという自国通貨がありました。
これはエルサルバドルだけの法定通貨であり、
国民に長く親しまれていた「お金」だったのですが…
内戦を経て、エルサルバドル政府はコロンを「米ドル化」する政策を打ち出します。
この経験が、国民のビットコイン法定通貨計画を疑問視する理由になっている可能性もあるでしょう。
現在、エルサルバドルでは米ドルとビットコインが法定通貨として流通し、旧通貨であるコロンは市中でもほとんど見られない状態となっています。
しかし、コロンも正式に法定通貨から外されたわけでもないため、厳密にいえば法定通貨に認められている通貨が3種類もあるということになります。
銀行振り込みとか、納税とか、
商取引とか、
そのあたりに支障はないのか…?
エルサルバドル市民のなかには年寄りも子どももいるわけで、
レートの異なるコロンと米ドルを使い分けたり、
ビットコインを取り扱ったりするスキルを全国民に求めるのは難しいのでは?と思います。
お店によって使える決済方法が異なるのも、
国民や海外からの観光客にとっては不便ですよね。
ビットコインを法定通貨にするぞ!という発表に対し、
「またかよ…」と呆れた国民も多かったでしょうね![]()
エルサルバドルで法定通貨に採用された時は、
ビットコイン価格にも追い風が吹いたと話題になりました。
しかし、エルサルバドル国内の状況を見れば、
まだまだビットコインが当たり前の世界にはなっていないようです。
内政が不安定な国では、
ビットコインの価格どうのこうのより、
やはり国の経済状況が一番のネックになっていると思います。
取引のしやすさを提供するよりも、
まずはエルサルバドル国民が国内でもっと稼げる労働市場を作り出さなければならないのではないでしょうか。