北野映画は、だいぶ昔に座頭市を観ただけで、
その時もエンターテイメントとしてそこそこ面白かったという程度の印象しか残らなかった。
今回は、傑作の名高い「ソナチネ」である。
これを見てつくづく思ったのは、
映画の良しあしは、ストーリーではないのだな、ということ。
登場人物の感情描写は極力排し、全体的にドライ。
音楽もあまりなく、かと思ったら突然の暴力シーン。
そして沖縄の青い海と空。
これらを組み合わせることで、映画美を表現しようとしている。
淀川長治は、それを映画のポエムと呼んだ。
映画や小説や絵画など、様々な表現活動は、
つまるところそれを受け手の心に何かしらを訴えんとするわけだ。
映画では、涙を誘ったり、笑わせたりする作品が、最近多いようだが、
それは感情に訴えるものと言える。
でも、かつての映画には、このように美意識に訴えるものもあったということを
思い出させてくれる。
いや、今でもあるのだが、メインストリームではなくなっていると思う。
少なくとも20年ほど前までは、平日夜の民放でも放送されていたのだ。