「漢字三文字から成る言葉が三つ、いずれも“無”の字が冒頭にありますが、“無”の読み方が異なるものが一つあります。()()の記号で答えよ」

と、難易度が意外や高めなる入試設問が一つ出来上がってしまいました。

独自な活躍を静かに続けられている作家の清水義範はこの私より十歳年長ですが、氏の代表作「国語入試問題必勝法」は昭和末期の昭和62年(1987年)に発表されています。余談として、清水氏は名古屋人です。名古屋の特異な文化人なら、`80年代の小劇場ブームの往時に取沙汰されました劇作家の北村(きたむら・そう)が何か思い出されるのですが、北村想・作の戯曲「寿歌(ほぎうた)」も現在では懐かしい、寓話的な終末論であり、核戦争後の氷河期突入までの短い時間に、生存者達(と申しても男2名、女1名、計3名)が、個々に宗教観や哲学観や倫理観を自然体に抱きつつ、恐らくは人類が死滅へと向うのであろうストーリーを、滑稽とも見える描き方で一貫し見せました。分かり易いのが大きな特徴の舞台でしたが、名古屋エンターテインメントのこれぞ持ち味なのでしょうか?しかし、加藤健一(`70年代は、つかこうへい事務所の看板俳優でした)が自ら主演し下北沢スズナリで上演した「寿歌」は、`80年代小劇場ベスト・アクトの上位に必ずやランク入りするであろう傑作舞台でありました。

名古屋人でもないのに中日ドラゴンズを声援する首都圏在住の人は、関西人でもないのに阪神タイガースを応援する首都圏在住者より、私には奇人に思えます。少なくとも当の私は、タイガース・ファンをずっと自認する東京人ですし、ドアラは好きですが、あのキャラはそもそもトラッキーを真似たようにさえ思えてしまう・・。

閑話休題、「国語入試問題必勝法」ですが、浅香一郎という国語が苦手な受験生に家庭教師が「入試国語」の解き方を教える話です。二十年以上前のバブリー頂点な時代に出版された本をいま一度の再読をしてみたいのですが、どうも絶版なのらしいです。古書マーケットで入手を試みんと考えます。また、北村想「寿歌」も、書籍は既に廃盤なのでありましょう。名古屋カルチャーは、維持される程度の基盤にも疎いのが弱点かも知れないと思います。浅香一郎は結局は入試結果がどうなったのか、肝心の結末を私はあまり記憶しないのですが、小説は短編ですから、是非とも再読したいものです。

タイトル問題は、選択肢「C」が正解、無頼漢(ブライカン)とは昨今はさほど用いない語彙かも知れませんながら、この手の“個性”が出現し難い世相なのと思います。

ちらかす無頼漢より、片付ける被管理者こそ無難な時代、これぞ現代の実情です。

何も国語に科目を限定せず、入試必勝法とは几帳面であること、その為の努力の継続と集中こそが、良い結果を導く手順であると考えます。人間業に限度はあるものの、自分自身のみ為らず世の中の誰々にとっても、一日は24時間と達観するや、納得し救われる思いを常から自覚することが多い私です・・。