大学入試の「現代文」出典に頻度が高い文筆家は、広く知られるビッグ・ネームならば昨今では養老孟司だろうか。氏の文章「考えるヒト」を読みながら、私が現役高校生の頃は、大学受験生の必読書は小林秀雄「考えるヒント」だった事由を思い起こしました。養老氏の当の一文は題名からして敢えてパロディっぽく、これはよく「考えた」タイトル付けだと感心、現在の現役高校生(また、大学受験生)達には、小林秀雄とかもう読まれなくなったのかとも考え、世の趨勢を断面から考える機会を得ました。
小林は日本の知識人でいち早くディズニー(の漫画作品)を評論した作家としても、後に知られるところと為ります。
「人を笑うのだけが笑いではない。子供ならみんな知っている。生きるのが楽しい、絶対的な笑いもある。いよいよ増大する批評的笑いの不安と痙攣との中で、この笑いを、恢復しようとしたのが、ディズニーの創作であった」(小林秀雄、「考えるヒント」より)
`70年代に読まれた「智」の書物の代表一翼を「考えるヒント」とするのなら、`80年代的な本(作家)は玉村豊男のエッセイかな、氏は昭和20年(1945年)のお生まれで東大文学部フランス文学科を卒業され、JALPAK創始期には同社パック旅行のツアー・コンダクター(添乗員)として勤務、歴任されました。この私がJALPAKに入社しました頃は既に氏は退職された後で、文筆家として華々しい活躍を開始されてありました。玉村氏の名著「旅の雑学ノート」シリーズは、サラリーマン生活を始めた当初の私には座右の一冊でありました。いつかはこのような自著を記してみたいと若き往時の私は本気で考え、随分と「書き方」を学んだ本と為りました。
往時と申さば、「王子」は新入社員当時の私の自然発生的なあだ名でしたが、最近は「王子」とか「プリンス」と呼ばれる年齢では私はとっくになくなりました。眼鏡を付けないとホワイト・ボードが読めない。私より一歳年上の「さんま」が、カンペが老眼で全然見えないと嘆いておりましたが、中年男性とは、“少年の晩年”を指すのでありましょうね。
「JALPAKでアメリカへ行きたいのですが、ディズニー・ランドは休園日ってあるのですか?」
このような電話問合せをお客様から受けたことがありました。
電話を保留し先輩社員にその旨を尋ねるや、
「なに?“デズニー”、デズニーの休園日?デズニーに休園日なんてあんの?聞いたことないな、デズニーの休園日なんて・・・」
と即応しました。その言葉を上手く翻訳しお客さまへは電話口からご説明を返しましたが、どうも曖昧なニュアンスが漂い、旅行を具体的に計画される方の「考えるヒント」となったものか否か、今日なお、あの折の心配を私は時たま思い起こしたりも致しております。
本場の“デズニー”に、休園日って特にない筈ではありますながら・・・。