まるで、桜のようだった。

 

凛々しい、なのに儚い。

桜のように綺麗に美しく。

 

薄桃色を背景に、細い細い指で。

おれの髪をそっと撫でて。

 

お前と、逢えてよかった。

 

と、枯れそうな声で。

 

忘れない。

 

と、細い声で。

 

愛しているよ。

 

と透き通る声で。

 

 

 

 

貴方と出逢えたのは運命だったのかな。

それとも、必然だったのかな。

 

おれたちの大事なものを守るために刻を渡り。

そして貴方に出逢い、恋をした。

 

これが初恋だと気づいたのはいつだったんだろう。

 

貴方といるときが、

とても穏やかで幸せだってことに気づいたのはいつだったんだろう。

 

長い、長い時代の中での

短い、短いおれたちのあの恋を

きっとみんなは気の迷いだと言うんだろうね。

 

だけど、本物だった。

 

あの一瞬は、

おれの生きてきた十三年間の人生の中で

何よりも大切で、暖かかった。

 

貴方のことが好きだって気持ちは

なにひとつ、嘘なんかじゃない。


震える声で伝えたさよならに、

愛を紡いで返してくれた。

 

慣れない台詞を頬を染めて話す貴方を

見てるとなんだか可愛くて、気恥ずかしくて。

だけどやっぱり嬉しくて。

 

おれも好きです。だいすきです。

 

 

本当は。


離れたくないです。

ずっと一緒にいたいです。

この瞬間が一生続けばいいのに。

 

 

貴方を連れて、病気を治してもらえれば。


なんて、願う。

だけどそれは禁忌だから。

 

自分をそう言い聞かせるけど、

本当はわかってた。


時代を離れることを一番拒むのは

多分貴方なんだろうな、って。




最後の日。


具合は安定しているから、散歩に行こう。

と言った貴方に連れて行かれたのは

美しく、麗しい桜並木。

 

まるで、世界が一変したような景色。

 

まるで、貴方のよう。



 

おれ、一生わすれません。

貴方を好きだったこと。



無理に作った笑顔で、そう伝えた。


困らせたくない。貴方の枷にはなりたくない。

でも、悔しいな。

 

きっとおれは、貴方に、

ここに残って。

なんて言われたら揺らいでしまう。

 

だけど、おれはおれ自身より大事なものを

背負ってるから。

おれ自身も望んでることがあるから。


それを知ってるから、言わない。

貴方はそんな優しいひと。

そういうところがだいすきなんだ。

 

 

薄桃色を背景に、細い細い指で。

おれの髪をそっと撫でて。

 

お前と、逢えてよかった。

 

と、枯れそうな声で。

 

忘れない。

 

と、細い声で。

 

愛しているよ。

 

と透き通る声で。

 

 

そう伝えてくれた。

 

そんなの、不意打ちだよ。

 

これからもおれのことを、ずっと、

愛してくれるような口ぶりじゃないか。

 

こみ上げたものは止まるはずもなく、

大粒の涙は土を濡らした。

 

 

好きで、好きで。本当に大好きで。


おれだってずっとずっと。

貴方のこと大好きです。

 

 

漏れた言葉を聞いた貴方は、

おれのことを、けして優しくはない力で 

強く抱きしめてくれた。

 

 


水風呂

 

 

 

生まれ変わったらまた桜の下で



とても優しい声色だった。

この声、おれだけのものかも。

なんて思ったりして。

  

 

「ぜったい。ぜったいですよ。」

「おれ、待ってますから。」

「毎年、毎年。桜の花が散るたびに」

 

 

「貴方のことを、想います」


 

 


***



 


あれから何年すぎたかな。


いっぱい話したいことあるんですよ。

おれ、身長伸びました。

 

大事なものも取り戻せたんですよ。

 

貴方のおかげです。

 

 

ほら、みてください。

今年の桜もとても綺麗ですよ。

 

貴方と一緒に見た桜と同じように。

 

 

本当は、何度か

また貴方の時代に連れていこうか。

と、声をかけてくれたんですよ。

 

でも、断りました。

 

もちろん貴方には会いたかったです。

はやく会って、だきしめたい。

 

でも約束してくれたから。

 

 

おじいちゃんになっても待ってます。

でも、素直にいえば

そんなに待たせたらいやですよ。

 

はやく、あいたい。

 

 

 

春風がふわっと、髪を撫でた。

 

桜の花びらがはらはらと、散る。

 

 

「綺麗だな、桜」

 

 

耳に通る声。

優しい、春風のような声。

 

 

 

「そうですね。まるで」

 

「沖田さんみたいです。」

 

 

そう呟くと、一瞬綺麗な群青色の瞳を見開かせて。

 

 

「お前のようでもある。」

 

「何年経っても変わらずに、美しく、強い」

 

 

と、見惚れるような笑顔で返された。

 

まったく、ずるい。かなわない。



「待たせたか?」


 

「はい。すっごく待ちました。」

「おれ、もっとはやくあいたかったです」

 

「すごく待ったので、約束してください」

 

 

これから先、ずっとずっと。

 

毎年この桜をおれと一緒に見にきてください。

  

 

 

指切りのかわりの、小さな口づけ。

 

 


  

Fin.

 

BGM「風花-The whisper of snow falling-/黒崎真音」

http://www.kasi-time.com/item-55404.html

 

Illust:有理(@yuuri314)