ぺこきゅあのブログ -5ページ目

ぺこきゅあのブログ

ブログの説明を入力します。

【本文】
九月ばかりになりて、出でにたるほどに、箱のあるを手まさぐりに開けて見れば、人のものに遣らむとしける文あり。あさましに、見てけりとだに知らせれむと思ひて、書きつく。
(うたがはしほかに渡せるふみ見ればここやとだえにならむとすらむ)などと思ふほどに、むべなう、十月つごもりがたに、三夜しきりて見えぬ時あり。つれなうて、「しばしこころみるほどに。」など、気色あり。これより、夕さりつかた、「内裏にのがるまじかりけり。」と出でつるに、心得で、人をつけて見すれば、「町の小路なるそこそこになむ、とまり給ひぬる。」とて来たり。さればよと、いみじう心憂しと思へども、言はむやうも知らであるほどに、二日、三日ばかりありて、暁がたに門をたたく時あり。さなめりと思ふに、憂くて、開けさせねば、例の家とおぼしきところにものしたり。つとめて、なほもあらじと思ひて、(なげきつつひとり寝る夜のあくるまはいかに久しきものとかは知る)と、例よりはひきつくろひて書きて、移ろひたる菊にさしたり。返りごと、「あくるまでもこころみむとしつれど、とみなる召使いの来あひたりつればなむ。いとことわりなりつるは。げにやげに冬の夜ならぬ真木の戸もおそくあくるはわびしかりけり」さても、いとあやしかりつるほどに、ことなしびたる、しばしば、忍びたるさまに、「内裏に。」などと言ひつつぞあるべきを、いとどしう心づきなく思ふことぞ、限りなきや。

【訳】
九月ごろになって、兼家が帰って行ったときに、文箱があるのを何の気なしに開けて見ると、女のもとに送ろうとした手紙が入っている。驚きあきれて、見てしまったということだけでも知られたいと思って、書きつける。
(疑わしいことです。よその女にお渡しになろうとしている手紙をみると、こちらへのお渡りは途絶えてしまうというのでしょうか。)などと思っているうちに、案の定、十月の末ごろに、三夜続けて姿の見えないときがある。何食わぬ顔をして、「しばらく試しているうちに三日ほど経ってしまった」などと思わせぶりなことを言う。ここから、夕暮れがたに、「宮中にどうしても避けられない用事があった」と出ていくので、言ってやるすべもわからないでいるうちに、二日、三日ほどして、夜明けの頃に門をたたく音のするときがあった。兼家が来たのであるようだとおもうけれども、気が進まなくて門を開けさせないでいると、例の家と思われる方にいってしまった。早朝、このままでは済ましておけないと思って、(なげきながら一人寝る夜が開けるまでの間は、どれほど長いものであるかおわかりになるでしょうか。)と、いつもよりは取り繕って書いて、色の褪せた菊に挿した。返事は、「夜が明けるまででも戸を開けてくれるまで待ってみようと思ったけれど、急な召使いが来合わせたので、全くごもっともでございますよ。本当におっしゃる通りですよ。冬の夜は明けずに辛いものだが、その冬夜でもない真木の戸も、なかなか開けてもらえないのは辛いことですね。」それにしても、気が知れないほど平気で通って来るのは、しばらくの間でも、こっそり隠している様子です、「宮中に急用で参上した」などといって取り繕うのが当然であるのに、いっそう不愉快に思うことが、果てもなく続くのであったよ。