*ネタバレ  *サウレスパロ *リュ-ク視点















狩猟の森。



そう呼ばれている森がある。



とても広大で危険な為、人は滅多に近寄らない。



この森の中には獰猛な野獣がいたり湖があったりするが誰も知らない。



…その森の奥深くに、木々がなく広くなっている場所がある。



あの時のまま、木々が無惨な状態で残っていた。



ここに来る度、鮮明に思い起こされる。



もう慣れてしまった。



というよりは何も感じなかった。



毎年この日になると無意識的にこの場所に来ている。



俺 がまだ覚えてるようだ。



「ったく…めんどくせぇ…」



目の前には大きな岩の塊。



そこには小さく拙い字で [おかあさん] と書かれてある。



傍には花が添えられていた。



墓なんざ立てやがって。



アイツ…吉良がやったらしい。



アイツは…俺の実の娘だ。



俺と…コイツの娘…



コイツの墓…



「……」



オレはそのまま岩の前に座った。



何も感じないまましばらく座っていた。



風の音しか聞こえない。



今は真夜中。



とても静かだ。



月が空にほんのり光っている。



「…………はぁ」



…今日はコイツの誕生日。



…めんどくせぇな…  



どのくらい時が過ぎたのだろう。



ちらちらと何かが降ってきた。



「……雪……」



昼は暖かかったのに。



ぱらぱらと降ってくる。



雪が月の光に照らされ綺麗だ。



時間が経つにつれ徐々に増えていく。



頭に冷たい雪が積もり払う。



思わず空を見上げた。



少し夜があけて明るくなっていた。



この様子だと今日は積もるだろう。



ポケットに手を入れると何かが当たった。



出そうとしてやめておいた。



今はまだ…渡さないでおく。



明るくなるうちに引き返さなければ。



これは今宵渡そうか…



その頃には雪で真っ白になっているかもしれない。



オレは立ち上がり、漆黒の翼を広げる。



雪が肌に当たって冷たかった。



実際は温度を感じないが。



そんな気がした。