普段のアテとは全く違っている。



身体にベールを纏い、額には綺麗な宝玉が輝いている。



全身が優しい光に包まれ、一層美しさが増している。



大きな違いはやはり雰囲気と威力だ。



いつものアテとは違う、厳粛な威圧感が感じられる。



背が伸びた分余計にそう感じる。



怒りが肌に痺れるほど伝わってくる。



私を抱えている反対の手には、不思議な形をした美しいロッドが握られていた。



その指す先にはリュークが立っている。



アテは鋭い眼光を向ける。



「別に隠してたわけじゃないけどね…下界では本来の力は使わないんだけど…本気で行かせてもらうよ…」



「あ…アテ…あっ貴方って…!?」



「ん?あぁそうか…この姿では初めましてなんだっけ。ごめん…隠してたわけじゃなかったんだけど色々あって結局言わず仕舞になっちゃったね~」



「えっ!?アテって天使だったの!?」



「そうだよ。改めて自己紹介かな…
ボクはアシーム・メナデル。皆からはアテムって呼ばれてる。幸福や光とかを司る女神様に仕えてる守護天使ってとこかな」



「えぇぇ!?そんなにお偉いお方なの!?」



アテが普通の能力者じゃない…とは思ってたけど



まさか天使だとは思わなかった。



しかも神様に仕えている守護天使って…



かなり…相当上級の偉い位だということだ。



今までの自分が急に恥ずかしくなる。



「あわわわっアシーム様!??」



「普通にアテって呼んでよ~キミにその名前で呼ばれるのって何か違和感があるし…ボクそんなお偉くないからね」



そう言って微笑むアテは相変わらずだった。



その笑顔自体天使そのものだ。



天使じゃなくたってアテは十分偉いお方だと思う。



「さて…宰ちゃんを傷つけた奴に消えてもらわないとな……」



アテはリュークを睨み付ける。



リュークは相変わらず不敵な笑みを浮かべていた。



「何だ…てめぇあのクソ女神のとこのかよ……」



「ハピナス様を馬鹿にするな…!!」



アテはロッドを振り上げる。



すると、先に付いている宝玉から光が膨張する。



途端に辺りが真っ白になる。



リュークの姿も見えない。



その間にアテは私を抱え込んだまま、少し遠くの方へ飛んでいった。



そして私を地面に降ろすと、私に向けて手を挙げる。



何が起こるのかと思いきや、何も起こらない。



見たところ変化はない。



「アテ?何を…」



「キミはここにいて。今キミの姿を見えなくしたからね。体力が回復したら隙を見て…」



「嫌だっ私も…」



戦いたい…



あいつを…リュークを倒したい…



例え能力が奪われようと関係ない。



ちょっとした武器ならポケットに入っている。



無力な自分が情けない…でも奴を倒したい…



無茶なことは分かっている。



けれど黙って見ていられるわけがない。



私もアテと…



「ごめん…気持ちは分かるよ…でも…これ以上キミを危険な目に合わせたくないんだ……ごめんね……」



アテは悲しそうにそう言って、今度は手を奇妙に動かす。



良く見ると、目の前には透明な光の壁らしきものが出来た。



そしてリュークの方へ戻っていく。



立ち上がって追いかけようとするも、その壁で遮られる。



「アテ…」



「…宰ちゃんの敵はボクの敵だ…大切な人を傷つけた奴は絶対に許さない……」



光に包まれた一面から漆黒の稲妻が走る。



次の瞬間、光のカーテンが引き裂かれた。



そこからリュークが姿を現す。



その手には巨大な漆黒のカマを握っている。



前よりももっと闇の力が強くなっている。



これ以上まだ力が増幅するの!?



本当どれだけ強いのだろう。



強すぎる……



「チッ…もう一人どこ行きやがった……」



「言っただろう?お前の相手はボク一人だ。ボクがお前を倒す…!!」



「何だよ……まぁ良い……結局奴も消える運命だ……もう手遅れだしな…神も天使も邪魔なんだよ……さっさと消えろ…」



「……あのことをまた起こすつもりか……!!絶対にさせない!」



「お前は覚えてんのか……前回はあのクソ女神のせいでまた振り出しに戻ったが…今回は違う……」



「宰ちゃんの世界をお前なんかに渡さない!!」



アテのロッドとリュークのカマが激しくぶつかり合い、火花を散らす。



私の世界…



リュークが言ったこと…本当なのだろうか。



信じられないし、訳が分からない。



7年前…



思い出そうとすると頭痛がする。



一体何…?



菜奈達は…私達の世界はどうなってしまうの?