と、その時頭の中で声が響いた。



『わぁ久しぶり~っ』



「えっ!?アテ!」



懐かしい声。



いつもの能天気なアテの声だ。



でも少し疲れているようだった。



『ごめんね…色々あって話せなかったんだ…』



「最近忙しそうだもんね…今日はどうしたの?」



『…あのさ…』



アテムの声が低くなる。



何かあったのだろうか。



嫌な予感は徐々に強くなっていく。



『最近悪魔が多くなってること…気づいてる?』



「う…うん…それに強くなってるよね…」



『ボク聞いたんだけど…世界中を荒らしている厄介な奴がいるみたいなんだ…』



「え…?」



嫌な予感はもう誤魔化せなかった。



それはただの前触れに過ぎなかった…



あんなことが起こるなんて思いもしなかったんだ…



私は真剣にアテの話を聞いた。



「どんな奴なの?」



『今までの奴等とは比べ物にならないほど凶悪で危険らしい…しかも…』



「しかも…?」



『ボク達を狙ってるみたい…奴は異常に闇の力が強いから、もし感じたらすぐ逃げて!!奴はボク達のことをまだ知らない…能力を使わなければ大丈夫だと思う…気をつけて!!』



アテの声に真剣さが増す。



かなり危険な奴のようだ。



悪寒が酷くなる。



「う…うん…ありがとう…」



『何かあったらボクを呼んで…すぐに行くからさ!じゃあ気をつけて…』



「うん…アテも気をつけてね!」



アテの声が消え、また辺りが静かになった。



私は一度深呼吸をする。



恐怖は少しおさまった。



アテが言っていた世界中を荒らしている奴…



一体何者なんだろうか。



「まぁ大丈夫大丈夫!そんな奴私がやっつけてやるんだから!!」



慎重に行けば大丈夫だろう。



怖がって立ち止まっていても、前に進まなければ意味がない。



馬鹿な私は、そんな軽い考えで自分を元気つけた。



そして未来のことを何も知らないまま、丘を駆け降り立り仕事を開始したのだった…