レナは微かに苦しそうに息をしている。




その腹部には何かに裂かれたような大きな傷が痛々しく刻まれていた。




真っ赤な血が流れ広がる。




菜奈が頑張っているのか、傷口が仄かに光っている。




しかしあまり聞いていないらしい。




コウは光一に変わると急いで治療を続けた。




「何があったんだよ!?なんで・・・ッ」




『悪い……あの時……』




あの時…浜辺では「今のところ良い感じ」だった時か。




レナ達は影達を倒し続けていた。




しかし、どれだけ倒してもまた少しずつ増えていく。




「結構キツいな……」




「まぁ何とかなるさ!」




影の一匹を操り、他の影を襲わせる。




蛇は身体が大きいため、支配下にすると有利だ。




さすがは兄妹というものなのだろう。




どちらとも上手く協力し合っている。




しばらくして少し異変を感じた。




「何か減ってね?」




「そりゃ倒してるんだから当たり前じゃんか~」




「いや…そういうんじゃなくて……」




実はその間に影達の合体が始まっていた。




一匹の影がスライムのように他の影に引き寄せられ合体する。




さらに蛇にくっつくとますます大きくなる。




静かに少しずつそれを繰り返していた。




薄暗いのも原因だったのか、その時はまだ気づいていなかった。




「何かでかくなってるような……」




「まー倒せば同じだ!」




気にしている暇はなかった。




その時には既に「ヤツ」はほとんど完成していた。




あの時気づいていたら避けれたかもしれない。




巨大な影と化した影は、海の暗闇に溶け込み姿を晦ます。




まだ合体していない影達に気を取られていた。




背後に忍び寄る気配を感じた時、ヤツの存在に気づく。




その時にはもう遅かった。




「…!?レナ!!後ろ!!!」




「え!?」




コウが気づいて絶句した。




レナも振り返り、その巨大さに驚愕する。




その途端、ヤツの鋭く尖った触角のようなものが、レナの身体を引き裂いた。




黒と赤が混合する。




一瞬過ぎて何が起こったのか、コウもレナ自身も分からなかった。




視界が赤くなり、鋭い痛みが走る。




「うああぁーっ!!!」




「レ……レナ……!?」




ヤツはコウの存在に気づくと、今度はコウに襲い掛かる。




急いで距離を取るも、巨大な腕が頬を掠める。




「…ッなんだこいつ……!!」




コウは大怪我を負ったレナを抱え避ける。




巨大な人型だったヤツは急に妙な動きを取る。




徐々に形を変えていく。




すると竜のように巨大な蛇の形になった。