「えっ…わぁ!!」


突如輝が夢羽に飛び掛った。


夢羽はその衝撃で突き飛ばされる。


輝は勢いよく倒れる。


「ふえぇぇ!?」


「輝!?何して…」


「逃げてください!!」


輝は倒れたままそう叫ぶ。


何故か酷く慌てている。


「え……!?」


その時、輝の足が徐々に黒く染まっていることに気がついた。


黒い何かに固定されている。


よく見てみると黒いものの正体は魔の手だった。


輝の足にまとわりつき、足首をガッチリと掴んでいる。


「キャーッ」


「なっ!?」


「早く逃げて下さい!!」


輝がそう言った途端、輝の身体が地面へと吸い込まれ始めた。


「わあぁっ」


「輝ーっ!!」


龍樹達は輝の腕を掴み、引っ張る。


しかし魔の手の方が力が強い。


このままでは龍樹達までも地面の中へ連れて行かれてしまう。


「龍樹さん達は早く逃げて下さい!!」


「逃げるかよっ」


「駄目ぇー!!」


どれだけ強く引っ張っても龍樹達の方が押されている。


輝の身体はもう腰あたりまで沈んでいた。


「離してください!このままではお二人共…」


「行かせねぇ……!!」


「早く逃げッ」


突然伸びてきた魔の手が輝の口を塞ぐ。


そして首にも巻き付く。


四方八方から黒い魔の手が伸び、輝の身体にまとわりつく。


「………ッ……ッ……」


「うぁああぁっ!!」


「きゃあぁ!!」


龍樹達へも魔の手が迫る。


輝の腕を掴んでいた手は魔の手によって引き離された。


輝の身体は無数の魔の手に包み込まれほぼ見えない状態になっていた。


「てっ…輝…」


「嫌だあぁー!!」


魔の手を必死に避ける。


しかし手や足を掴まれ身動きが取れない。


龍樹も夢羽も魔の手に包み込まれそうになる。


また伸びてきた魔の手が龍樹の身体に巻き付こうとした時…


背後から聞き覚えのある声が聞こえた。