ここはどこだろう。




今までの世界とは違う。




何もない空間。




またバグったのかな…




「ここは……?」




「キミの心の中……正確に言うと夢の中だね……」




ふいに後ろから声がした。




振り返るとそこには少年がいた。




とても不思議な雰囲気だ。



何故か浮いていて、私を見下ろしている。




見たこともない美しい少年。




でも聞き覚えのある声。




「あなたは……!!」




「ありがとう……」




「え……?」




「キミのおかげでやっとボクはボク自身を取り戻すことができた……本当にありがとう……」




「あなたは一体……」




その少年は「あの声」と同じだった。




私を導き、警告してくれた…




「何故私に話しかけてきたの?何故あなたは私を救ってくれたの?……あなたは何者なの?」




「ボクはキミと同じ存在…って言ったらいいのかな?」




「私と同じ…?」




「キミと同じように世界を救う……まぁボクの場合は世界だけじゃなく幻想や夢の中とかも行けるんだけどね……」




「あなたも!?」




「でもボクは……キミより弱くて臆病で…そんなに救うことは出来なかった……ある時世界の破滅に巻き込まれて…ボクの身体と精神が離れちゃったんだ……そんな時キミに出逢った……」




「私に…」




「キミは世界を救おうと必死だったね…どんな危険を冒しても救おうとしてた…ボクはそんなキミを見てることしかできなかった……残酷だよねボク……何一つ手伝えなかった……」




「そんなことない!!あなたの警告に何度も助けられたんだよ?本当にありがとうっ」




「ごめんね……ボクには警告ぐらいしかできなかった……時にはキミに悲観的なことを言ってしまった……本当にごめん……」




「謝らないでっあなたのおかげで救ってこれたんだ…」




「…どういうわけかキミが世界を救うたびに、ボクの身体は精神に引き寄せられて…やっと元に戻った……ありがとう……キミのおかげだよ…本当にありがとう!!」




「ううん、あなたの警告がなければ救うことは無理だったよ…本当にありがとうね!!」




少年は静かに首を振り続けた。





そして笑顔を浮かべて私を見た。



吸い込まれそうなほど美しく、綺麗だった。



「キミはすごいね…キミみたいな子見たことないよ……キミは本当に強いね…羨ましいな……」




少年の澄んだ瞳が私に向けられている。




そこには何かの思いが込められている気がした。




「これからもキミは救い続けるの?」




「もちろん!!それが私の使命だから…」




「もちろんボクは止めないよ…本当に危険だけどキミは今まで乗り越えてきた…君を信じるよ…でもこれだけは言っておく……」




少年は私に近づいてきた。




さっきよりもずっと真剣な顔になった。




「無理はしないで……いくら不死身だからって怪我はするし、絶対に無理はしちゃダメだ……」




「大丈夫!無理なんかしてないよっこれからも頑張るから~…」




「絶対だよ!!お願いだから無理しないでっ」




「わっ…わかった……無理しない……」




「もしも危機を感じたらボクを呼んで?いつでもどこでも助けに行くから!!」




「うん…ありがとう」




「絶対に呼んで…もう何も失いたくないんだ……」




「うん……」




「……もう…行くんだね……」




「うん…そろそろだね……」




「ボク…今度こそ救ってみせるよ……その間、時々キミに話しかける…喋ったりまた警告したり……」




「うん……そういえばあなたってどんな世界に住んでるの?」




「…綺麗なところかな…凄く綺麗な場所なんだ…まぁ大体はいろんな世界を巡り廻ってる」




「そうなんだ~行ってみたいな!あ、じゃあ今度私の世界にも来てね?いつか連れて行ってあげるっ」




「うん…ありがとう……頑張ってね!!」




「お互い頑張ろうね!!……ん?あれ…あっ!」




なんで今まで気がつかなかったんだろう。




なんでこんな重要なことを忘れてたんだろう…




「どうかした?」




なんでこんな重要なこと今まで聞かなかったんだろう。




自然すぎてすっかり聞くのを忘れていた。




おかしくて自分に笑いながら聞いてみた。




「あの…あなたの名前は?」




それを聞いたと同時に少年は不思議な笑みを浮かべた。




「…知りたい?」




「え?」




「ボクの名前」




「うん」




少年は不思議な笑みを浮かべたまま静かに答えた。




「僕の名前はね―――‐‐‐」




名前を聞いた途端、目の前が明るくなった。



眩い光が私を包み込む。




少年の手を振る姿が微かに見えた。




私はまた新たな世界へと飛ばされていった。









「……キミはボクが守るからね……」