-3- 森と悪魔のワナ




森に着くと、光一と龍樹が途方に暮れていた。



特に龍樹は悔やんだ様子で沈んでいた。



「クソッ…俺のせいだ……」



拳を木に叩きつける。



「龍樹のせいじゃないよ…」



光一が優しく慰める。



皆が真剣に考えている中、菜奈だけは違った。



「運が良ければ捕まえられるかも!!」



菜奈が自信ありげな顔をする。



「何か良い方法があるの?」



皆は菜奈の様子に首を傾げる。



菜奈は頷く。



「あの子がいるからね~」



「あの子?」



「あっそっか!皆知らないんだったね~あのね…この森には実は…」



突如森中に響く人の叫び声。



ただでさえ物騒な森から、争っているような音が聞こえてくる。



その音に混じって甲高い笑い声が聞こえる。



聞き覚えのある声だ。



その声を聞いた途端、皆は目を丸くした。



「えっ!?あれ!?」



「あいつらドンマイだね~あの様子じゃあ相当痛みつけられてるよ~相手が悪かったね…」



意地悪っぽく菜奈が冷たく呟く。



「なるほど…良い気味だ……」



「とりあえず行ってみよう!!」



森に入り声のする方へ走る。



木で陽の光が遮られ暗い森の中。



獣の唸る声が所々から聞こえてくる。



いかにも危なく不気味な森だ。



しかし見たこともない木の実や、以外に綺麗な花々も咲いてたりと好奇心を擽られる。



この珍しい植物が目当てで入って、気がつくと帰れなくなるものが多い。



迷わないように自分達も慎重に進む。



しばらくしてふと前を見ると人影が見えた。



夢羽の楽しそうな声がする。



大きな木々をくぐっていくと、そこには喜んでいる夢羽がいた。



その近くには夢羽を連れ去った奴が倒れている。



そして夢羽が話している相手…



一人の少女と一匹の大きな豹がいた。



フードを深く被った赤褐色のロングコート姿の少女。



足元の豹はオレンジと黄色の混合色が美しい。



「吉良!!パル~」



名前を呼ばれた少女は首を傾ける。



夢羽は皆を見た途端、嬉しそうに駆け寄ってきた。



「皆ぁ~っ!!」



「夢羽!!」



どこにも怪我を負っていないらしい。



いつもと変わらないその様子に、皆がほっと安心した。



夢羽は龍樹の肩に飛び乗り、上機嫌な様子ではしゃぐ。



それを見て皆も緊張が溶けていった。



「ありがとな吉良。あとパルもサンキュー」



「本当ありがとうね!!」



「…………別に」



笑顔でいう菜奈達に、吉良は俯きつつ素っ気なく返す。



「瞬間移動で皆を学園まで送れるか?」



「任せといてぇ~」



「吉良も行こうよ!最近来てないし~」



皆は学園へと帰ろうとする中、菜奈も吉良を誘う。



吉良は応えずに、ぼーっとしていた。



じっと何かを見つめていた。



何か気になるのか辺りを見回している。



パルも辺りを動き回る。



「吉良?」



「………!!」



突然吉良が誰もいないはずのところにナイフを投げた。



木に刺さるナイフ…



と思いきやそれは空中で停止した。



まるでそこに何かがあるかのように、ピタリと止まった。



「…?」



響く不気味な笑い声。



皆も辺りを見回す。



途端に背中に悪寒が走る。



思わず身を竦めた。



吉良はナイフを構えたまま動かない。



皆も吉良のナイフが指す方向を見つめる。



黒い霧が立ち込めたと思うと、広がる黒い闇。



それが人の形になったかと思うと、



そこから黒いコート姿の男性が現れた。



背中には大きな漆黒の羽がある。



そして、襲ってくる悪寒。



気持ち悪くなるほどの魔力だ。



肌に刺激が来る。



「……来るなと言ったはずだ……」



吉良が静かに重々しく呟く。



「悪魔っ!?」



張り詰める空気。



一気に緊張が走る。



「能力者に天使…こんなところで勢揃いとは……おもしれぇ……」



皆を見回す悪魔。



不敵な笑みを浮かべる。



声を聞いただけで心が凍りつくようだ。



「……今度は何だ……リューク………」



吉良が睨みながら冷たく言った。