睨まれたその少年は、焦った表情で謝る。



「悪ぃっごめんなぁ!!許してくださいまし~っ!!」



「菜奈さん大丈夫ですか?……すみません……」



表情とは裏腹にふざけて謝る馬鹿とは違い、何故か全く関係のない少年が申し訳なさそうに謝る。



「だ…だいじょーぶ……輝は悪くないよ…おいっ!!バカアホ優斗!!何投げたぁっ!?」



怒りで捲し立てると、優斗は頭をかきつつ答える。



「いや~ただ野球の練習しようと思っただけで!!投げるボールなかったからさ~代わりに文鎮…」



「馬鹿っ教室で野球の練習すんな!!!てかなんでボールの代わりに文鎮使うんだよっ!!」



優斗の言葉はツッコミ所満載である。



「菜奈さんっ額から血が!!」



輝が慌ててティッシュを持ってきた。



なんで関係のない輝がやってくれちゃってんの!?



優斗を再度睨むと顔を逸らし、小さく「ごめん」と呟く。



心配そうな顔でティッシュを渡してくれる輝とは大違いだ。



「あっ大丈夫…治癒あるから~」



菜奈はそう言うと怪我をしている額に手をかざす。



微かな光が額を包み込み、徐々に傷が消えていく。



しばらくすると痛みも消え、傷も完全に消えた。



「あぁ…菜奈さんは治癒能力者でしたね。すみません、これ戻しておきますね。」



輝は少し微笑むとティッシュを元の場所へと戻した。



「いつ見てもすごいですね!!怪我が治るなんて…」



「俺のコピー能力もすごいぜ!!」



優斗がドヤ顔してみせる。



あんたは真面目に反省しろ!!



文句を言おうとした時、後ろから声がした。



声というよりは呟きだった。



「アイファ・スクニフェ……」



そう聞こえたかと思うと、優斗の足元から炎が上がった。



「なっ!?わちちっ!!」



暑さで逃げ回る優斗。



驚いて後ろを振り向く。



そこには背の高い、ゴスロリ姿の美少女が立っていた。