「あっ……」

 

 

気がつくとベットで寝ていた。

 

あの後私は倒れたらしい。

 

右目に触れる。

 

もう痛みはない。

 

あれは一体何だったんだろう。

 

今は包帯をして力を封印している。

 

この包帯はあの日出逢ったあの少女から貰ったものだ。

 

フードを取ると発作は襲ってくるが、右目の力は発動しない。

 

少しでも安心できた。

 

ゆっくりと起き上がる。

 

視界がぼやけている。

 

目に大粒の涙が溜まっていた。

 

慌ててそれを拭い、ふと窓の外を見る。

 

もう外は真っ暗だ。

 

横から寝息が聞こえる。

 

ベットの傍の机で寝ている少年…パルがいた。

 

私が意識を失っている間、ずっと見ていてくれたのだろう。

 

このまま起こすと可哀想だし、そっとしておいた。

 

窓から見える夜空。

 

あの時みたいに綺麗だった。

 

 

「ん……?」

 

 

パルが目を覚ましたらしい。

 

パルは欠伸をすると、私に気がついた。

 

 

「吉良!!大丈夫か?…良かった……」

 

 

パルが安心してほっと息を付いた。

 

パルの安心した顔を見て、過去の恐怖が消えていった。

 

 

「どうした……?」

「……昔の夢……見てた……」

 

 

星空を見ながら呟く。

 

 

「……そうか……」

 

 

パルも窓の外を見る。

 

 

「ねぇ…パル…覚えてる…?あの時の空……」

「あの時…?」

「……初めて森から……出た時の……」

「……あぁ…」

 

 

私の言葉を聞いた途端、顔を赤らめるパル。

 

そして真っ赤なまま顔を逸らす。

 

あの時のように。

 

あの時はよく見えなかったけれど、多分今と同じ顔をしていたのだろう。

 

その表情が指す意味は、まだ私は知らない。

 

嬉しい、けど少し違うみたい。

 

 

「……パルが言った言葉…私…まだ覚えてるの……」

 

「……そう……か……」

 

 

パルも私の言葉を忘れていないようだ。

 

だって同じ反応をしたから。

 

あの時…パルが言ったこと……

 

それは…

 

 

(あのさ…俺…絶対離れないから…)

 

(…?)

 

(…もう…吉良を一人にさせないから…絶対に幸せにする…好きだから…)

 

 

ぼそぼそ言うパル。

 

でもはっきり聞こえた。

 

そして私が言った言葉。

 

 

(これからもずっと…一緒に…)

 

 

心の底から全ての思いを込めて言った願い。

 

最高の笑顔ではっきり言った。

 

あの星空を見た時も同じ。

 

私の願いはただ一つ。

 

 

(これからもずっと…ずっとパルと一緒にいられますように…)

 

 

パルが教えてくれた、幸せって言葉。

 

パルといると暖かくって優しくて。

 

これが幸せ…ってことなのかな…

 

まだ顔が赤いパルを見て微笑む。

 

パルはそれを見てますます…

 

と思いきや豹に戻って誤魔化した。

 

 

「…どうしたの…?」

「なんでも無い…」

 

 

なんだかパルの行動が面白くて笑った。

 

その時ドアをノックする音が聞こえた。

 

私は笑うのをやめ、何事もなかったかのように無表情になる。

 

素直な自分を見られるのは何となく恥ずかしい。

 

ドアが開くと、数人がドヤドヤ入ってくるのが見えた。

 

 

「入るよ~あっ吉良目覚めたんだ!!よかったぁ~」

 

「だいじょーぶぅ?」

 

「はわわ…よかったですねぇ~」

 

『一件落着ね…』

 

「よぉっ気分はどーだ?」

 

「パル以外の男子は立ち入り禁止~」

 

「あの~自分お見舞いに来たんですけど…」

 

『保健室では静かにしましょう』

 

 

やはりいつもと変わらずうるさい奴らだ。

 

なんでこんなに騒げるのだろうか不思議だ。

 

 

「……うるさい……」

 

 

私はそう言って睨む。

 

 

……フリ。

 

 

心の中では笑いを堪えている。

 

 

「すみません…」

 

 

皆が一斉に謝る。

 

笑っているのが悟られないよう、窓の方を見る。

 

 

「あっ流れ星…」

 

 

私は願う。

 

あの時とは違う願い事。

 

はっきりと、皆に聞こえないように言った。

 

 

「これからもずっと…この仲間と一緒にいられますように…」

 

 

人と出逢って世界は変わる。

 

これからもずっと…

 

 

 

‐END‐

 

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