「本当にこいつ生かしておくのかよ……」
父、鬼利が私を地面に叩きつける。
泣く声も枯れている私は小さく呻く。
逃げようとしても、さっきの衝撃で体が動かない。
鬼利を見た途端、母の目が輝いた。
「あーん鬼利〜!!流石私の嫁!!」
「嫁…?」
刹那が褒め称えるのを父は怪訝な顔で応じる。
「毎回チョロチョロ逃げやがって…めんどくせぇんだよ…そろそろ殺りてぇんだけど」
私を睨みつける鬼利。
刹那も私を見下ろしている。
ただ何か父とは違う視線を感じた。
母は…いつもどこかに優しさがあった。
父が見ていない場所では普通の…優しい母。
特訓が終わった後や実験台にされた後、ボロボロの私を撫でてくれた。
母の励ましのお陰でほんの少し苦しさが消えた。
いつも泣きそうな顔で、何かを押し込めた表情で私を見つめていた。
そんな母は父の前では豹変する。
今目の前にいるのは優しい母ではなく…最強女暗殺者の刹那。
あの姿は幻のように思えるほど冷たく、冷酷に私を見据える。
冷酷な目の奥には少しも温かさがない。
静かに刹那が私に近づく。
肩が微かに震えている。
「でもまだ子どもだしさぁ…私と貴方の血を引いてるし?殺すのはもったいないじゃん…!」
「あぁそうだな…使うには最高な材料だ…使わなきゃ意味がねぇ」
つかわなきゃいみがない。
私は使われ、利用されるためだけに生まれてきた。
それは生まれた時から決まっていた運命だ。
「こいつには特殊な能力がある…まだ未完成だがな……誤作動を起こされても困るが…今のところあの実験は順調だ…次回は少しレベルを…」
私の特別な能力…
右眼に宿る力。
まだ詳しくは分からないが、時を操る力があるようだ。
でもまだコントロールが出来ず、使った途端倒れてしまう。
何故こんな能力があるのか、二人は教えてくれない。
この能力を悪用するため、日々訓練されている。
こんな能力がなければ…
「…こいつはオレらの……」
父…鬼利が私を見下す。
口元を緩ませ、奇妙な微笑みを見せた。
思わず後ずさる。
背筋に悪寒が走った。
「悪魔の子だからな…」