先ほどから何度もコールしているのだが、
どういう訳か通信機が繋がらない。
原因は恐らく、と空を見上げた。
薄い灰色の空。
モノクロの世界なのだから当然の事だが、そうではない。
その灰色の空に薄っすらを皮膜を張る黒いガス。
それが、僅かにシェル内部に充満しているようだった。
今までに経験した事のない条件だ。
麻奈や緋菟たちの話しによると、
“アジール”側の世界でもターゲットは似たような物を噴出し、
一般プレイヤーが三名ほど身体の異常を訴えていたという。
此処へ至る前、本部から送信されてきた精密検査の結果を見た。
肉体的に異常は見られないが、その代わりに精神的なダメージを受けている
という報告だった。
彼らが訴えた頭痛はや吐き気は、どうやらその為に起こった物らしい。
つまり、余り長くこのガスを吸い続けるのは、
自分たちにとっても危険だという事だ。
良太「さて……、どうしたものか」
そう、一人ごちる。
与えられた情報から考えられる最善は、恐らく早急なレギオン本体の討伐。
行方が判らない三名の隊員を探す事に時間を割くよりも、
本体のレギオンを仕留めてしまう事で合理的且つ迅速に救出も行なう
という思考だ。
良太は部隊長としての方針を固め、麻奈とライにそれを説明した。