さかのぼること約半年前の2022年11月30日。
その日、METALLICAの2023年と2024年のヨーロッパツアーのチケットの販売が開始された。
販売開始時間にPCの前で待機していた自分。レガシーメンバーの特権で通常よりも早めに購入できるものの、本当に行けるのかどうかもわからない状態なので購入すべきかどうかを躊躇していた。
しかし躊躇していたのはほんの数秒で、気がつけばフランス・パリとドイツ・ハンブルグのチケットを購入してしまった。(しかも2Dayチケットなので合計4回分!)
本当は行ったことのない都市が良かったけど、次のライブまで1週間程しか空かない日程はこの2つしかなかったので、この2都市に決定。折角ヨーロッパまではるばる行くなら、できるだけたくさん見たかったし、正直、場所はどこでも良かった。METALLICAが見れればそれで良かった。
そして気がつけばパリ公演まで1ヶ月を切っていた。
しかしこの時、問題が発生していた。一緒に行く予定だった人が諸々の事情により行けなくなってしまったのだ。
さすがに14時間以上かけてヨーロッパまで一人で行き、ライブも全て一人で参加し、しかも2週間近くも滞在するとなると、これは結構きつい。METALLICAのためとはいえ、これはきつい。
他の友人・知人などにも声をかけたけど、さすがにいきなりパリに行けるような人は皆無だった。物価の高いパリ、ウクライナ戦争のための迂回で2時間増しのフライト、そしてそもそもMETALLICAって何?っていう知り合いばかりなので、「高い、遠い、知らない」の三拍子が揃っていたので無理もなかった。
#自分の周りにはMETALLICA知らない人ばかり
#なので友人同士METALLICAファンとかとても羨ましい
ということで、パリとハンブルグのライブに行くことは断念し、チケットは転売サイトに売りに出した。でも転売目的と思われるのは嫌だしファンに申し訳ないので、買った値段で出しておいた。
しかし、やはりどこかで引っかかっていたのか、自問自答が続く日々が続いた。
「本当に後悔しないの?せっかくのMETALLICAライブだよ?これが見れる最後のチャンスかもしれないんだよ?常にこれが最後のライブかもしれないって心がけで今まで参戦してたのにそれでいいの?」
そんな中、4月のとある日に渋谷REXというライブハウスで、ちょうど開催されていたMETALLICAのトリビュートバンドであるHATTALLICAのライブを見に行った。
(その時のライブレポートはこちら)
20年もの間METALLICA愛を貫くHATTALLICAというバンドの忠誠心と情熱に、そしてそのバンドを応援し続ける熱いファンの人たちの熱気に圧倒され、自分自信もライブで得られるあの熱狂や興奮を思い出し、自分の中で眠っていたMETALLICA熱が再び呼び起こされた。
ライブ中に、そこで知り合った人に「来月パリにMETALLICAを見に行くんです!」と、さも既成事実のように話している自分がいた。
「あれ?パリ行くんだったっけ?まあいいや、うん、行くぞ!METALLICA魂だ!」
こうしてパリ行きを決意。一人旅行とか余ったチケットのことなどもう考えないようにして、淡々と旅行の準備に取り掛かった。
#なのできっかけ作ってくれたHATTALLICAさんには感謝しています
すでに1ヶ月切っていたので急いで旅の準備。しかしここで悲劇が。
転売サイトに出していたチケットの1つ、パリの17日の最初の公演が旅の準備中に見事に購入されてしまった。2つの転売サイトに出していたため、1つは取下げたけどもう1つは忘れていたという間抜けな結果だった。
キャンセルしたいと思ったけど、その場合ペナルティとして売却代金と同じ金額が請求され、さらに代わりのチケットを用意するための手数料も請求される、という鬼のように厳しい驚愕のルールがあることが判明。
500ユーロで販売したとしたら、ペナルティ500ユーロ+手数料となるので、本来500ユーロを受け取れることを考えると、1000ユーロ以上の損失となり、そのFXやビットコインもびっくりな大損失ぶりにさすがに白旗を上げチケットは泣く泣く献上することにした。
そのためにまたホテルを取り直したりキャンセルできない問題など色々と面倒なことが多々あったけど、なんとか事なきを得た。(さらに詳細はこちらのツイートで)
#もう転売サイトはコリゴリ
#すべては取下げなかった自分が悪いのだけれど
1日目あえなく参加不可となってしまったけど、それでもまだパリ公演2日目がある!
気を取り直して5月19日のDay2に参戦すべく、一路パリを目指したのでした。
——————————————————
そして迎えたライブ当日。
ライブが開催されるパリ郊外のスタジアムStade de Franceを目指す。宿泊先のホテルからは地下鉄メトロで一本で行けるようだ。余裕をもって早めに出発することに。
しかしメトロアプリのBonjour RTAPをチェックしていると、何やら警告が出ていた。"Traffic is disrupted"だって??
その下に詳細が書いてあるけど、しかしこれがフランス語で意味不明!でもこれ絶対何かあるでしょ!でも文章をコピーもできないから翻訳サイトにも載せれない!
でも焦ってはいけない、こういう時こそ落ち着かなければ。というこで、現代テクノロジーを駆使することに。
まずスクショで画像にする→それをiPhoneの写真アプリで新しく搭載されたOCR機能で読み取り文字としてコピー→それをDeepLに貼り付けて翻訳してもらう
こうして見事日本語での翻訳をゲット。
「全線で不通が続いています」
えー!どういうこと!止まってるってこと!?
なんでライブ当日にこういうこと起きるかなあ…。っと数分だけ嘆いたけど、それで事態が急変するわけもないので、落ち着くことに。こういう時こそ海外で困ったときの伝家の宝刀であるUBERの出番だ。
メトロだと駅まで歩いたり、乗り場間違えないように気をつけたり、スリとかよくいるらしいからそれにも注意払ったりで、結構色々気を張ってないといけないので大変だったりする。
でもUBERで行くとなったらなんだか急に気が楽になった。高いけど、だって止まってるんだから、仕方ないしね。
#でもUBERに乗ってる時にはもうメトロは復旧したらしいけど
#そういうもんですよね。
このきっかけを作ってくれたHATTALLICAに感謝を示すために渋谷REXで購入したTシャツを身に着けていざ出陣。
UBERの運ちゃんは海外あるあるの、まあ無愛想で電話で誰かとずっと話してる感じだけど、まあでもちゃんと着けばなんでもオッケー。
30分ぐらいでスタジアムに到着。マシンガンを持ったセキュリティがあちこちにいるという、パリ市内でもよく目にする光景が。
マシンガンまではアメリカでも中々見ないぐらいの凄さだけど、でもセキュリティチェックは結構適当、という謎のギャップもフランスのお国柄なのかな。
スタジアムの反対側で下りたので周囲をぐるっと歩いてると、あちこちにMETALLICAファンが。すでにスタジアムはMETALLICAファンに占拠されたピース&メタルという楽しい場所となっていた。
前を歩いているイカつい二人組がくるっとこっちを振り返って何やら話しかけてきた。街中だったら警戒マックスだけど、ここはすでにメタルの聖地。みんな心優しいMETALLICAファンしかいないのは分かってるので安心して話せる。
どこから来たのかって聞かれたので日本と答えると、びっくりされた。
「俺等はドイツのフライブルグから車で来たんだよ、でも日本からだなんて、日本にもそんなに熱いMETALLICAファンがいるのか?!」
って聞かれたので「もちろん!」と、過去に1年ほどドイツに住んでいたことがあるので、その時を思い出してドイツ語で力強く返した。
でも「ハーン?」と聞き返されて一瞬通じない悲しみにくれたけど、即英語に切り替えて再度答えた。
「日本には自分より熱いファンはもっともっといるよ!トリビュートバンドだってあるんだよ!」と装着しているHATTALLICAのTシャツを見せながら伝えておいた。
#ちゃんとYouTube見てくれよなって念も押しておきました
日本は最高だ!俺はHONDAが好きなんだ!S6000がどうたらこうたら!と車に関して熱く語られて全く分からなかったけど、BMWもベンツも最高だよ!と答えたらドイツから持参したビールをもらったので、みんなで乾杯。
この陽気なドイツ人たちはスタンディング席らしく、早めに中に入るとのことでその後バイバイした。「METALLICAのライブでスタンディング席以外の選択肢なんてないだろう??」という名言もいただきました。ごめんなさい、スタンディングじゃなくてシートをしっかり確保してます。
スタジアム周辺を歩くとライブをやっていたり、グッズ会場に人がたくさんいたり、すでにお祭り状態だ。
すでに並んでいる人たちも。16時半からゲートがオープンらしい。
グッズ販売も長蛇の列なのはおなじみの光景。
そんな光景を横目に目指すはスタジアム横にあるレストランのLe France。
ここでオランダ在住の日本人の方と合流した。
実は今回のパリに行くまでの一連の出来事をツイートしたんだけど、そのツイートを見て反応してくれたのがこの方。
「日本からはるばる来る人がいるのに、オランダにいる自分が参戦しないのはいかがなものか!?」ということで参戦を決意されたそうで、同じMETALLICAファンとしては良いきっかけとなれて嬉しい限り。
どうせ参加するならご一緒しましょう!といことで連絡を取り、ライブ前に合流することに。ライブってやっぱり一人よりも誰かと楽しんだ方が盛り上がるしね。
レストランを予約してくれていたのでここでしばしのんびりすることに。
この方、アムステルダムのライブにも参戦したようで、ライブは今回は2回目とのこと。パリは急な参戦となったにもかかわらず、チケットは何とかゲットできたとのことだった。
ここでささやかな提案をしてみた。
実は今回自分で購入したチケットはBLACK BOXラウンジに入れる “ONE Enhanced Experience”というもので、ギターとか写真とか色々な展示物が置いてあるラウンジに入れるパスが付いてくる。
ライブ前にそれをちょっと楽しむことができるので、せっかくなら一緒に入りましょうって提案してみたところ、とても喜んでもらえた。ということで早速向かってみることに。
スタジアムの中はさらに多くの人でごった返してきた。
ラウンジパスをもらうために、チェックインカウターに行く途中に遭遇したのが、あのMASAの呼び名で親しまれている伊藤政則さんだった!このライブに来ていただなんて!
ギターキッズの頃から知っているので、知り合いに話しかけるかのようにさらっと話しかけそうになったけど、あちらからしたら完全に赤の他人で迷惑極まりない、危ないところだった。
きっとまた素晴らしいインタビューやらレポートやらを出してくれるに違いない、楽しみにして待ってよう。
#じゃあ増田勇一さんもどこかにいるかも!って探したけどもちろんにいなかった
カウンターでチェックインをする。IDが必要らしく念のためパスポート持って行っておいて良かった。
パスもゲットしたのでいざBLACK BOXラウンジへ。
ここがラウンジの入口のようだ。
バンドメンバーの写真パネルがお出迎え。
なかなかムーディな雰囲気。
パーティ会場のようなにぎやかさで、イベントの最中なのかとてもにぎやかなこと。
MASTER〜の十字架にもぐったり、
RIDE〜の電気椅子に座ったり、
展示物を楽しんだり、
ギターキッズに戻ってギターを堪能したりして楽しいひと時を過ごした。
2019年のロンドンの時にもこのラウンジを体験したけど、あの時はギターピックがなくて何とか爪でギターを弾くっていう寂しいものだった。
しかし今回はドリンク券がギターピックという粋な計らいだったので、そのピックでギターも堪能できた。(がっつりチューニングが狂っていたけど)
ピックは3つもらったので2つだけドリンクに交換して残りは記念に持ち帰ることに。楽器やらない人には全く興味ない話だけど、いい記念となりました。
ラウンジには外バルコニーが付いていたので外に出てみると、ちょうど前座1組目のMAMMOTHというバンドが演奏していた。
あのヴァン・ヘイレンの息子がやっているらしい。ファンからも結構好評のようだった。
ひと通りラウンジを満喫したので、そろそろスタジアムの中に入ってシートに座ることに。
今回はラッキーなことに最前列シート!これはバンドメンバー目が合うぐらいの近さかも??
と思ったけど、ここは巨大なスタジアム。スタンディングエリアもまた巨大で、ステージは遥か彼方。
最前列よりもこれぐらい中腹の方がステージ一望できていいんじゃ?って思ったりもしたけど、でも初めての最前列なので楽しむことに。
しかし座席に行くとフランス人二人が4つの席を占拠していて、自分たちの2席にビールが置いてある。「エクスキューズミー?」って怪訝な顔で言うと、笑顔で「ソーリー、ソーリー」って言ってどかし始めた。
「なんなのこの人たち?」って思ってると、後から別な二人組が来て、その人たちも同じように「そこ俺らの席だけど」みたいに伝えていて。この謎のフランス人の二人は、その後その列から去っていった。
え??自分たちと全く関係ない列なのに堂々と座って、しかもビールとか飲みちらかして、しまいにはちょっとこぼしたりしてたけど、その見上げた図々しさはなに??とちょっと色々通り越してもはや感心してしまった。
後ろに座っていた紳士淑女のフランス人夫婦と目が合うと、このお二人も気持ちは同じなのか「やれやれ」って顔して大きく首を横に振っていた。そりゃ誰でもそう思いますよね…。
謎の占有屋も消えたので、これでようやく落ち着いたところで、前座2組目のARCHITECTSというイギリスのメタルコアバンドの演奏が始まった。
MANMMOTHの時もそうだけど、前座にも時間をたっぷり与えられているようで、45分以上は演奏していた気がする。才能あるバンドには絶好の機会をっていうMETALLICAの心遣いなのかもしれない。自分たちもそうやってチャンスをくれたOzzyに感謝していたしね。
その間も目の前を色々な人が横切っていくのが見ていて興味深かった。
セキュリティに追い出される人、酔い潰れて早々に運ばれていく人など、さまざまだ。医療チームも大変そうだ。
途中でスタジアム全体でウェーブが起きていた。ものすごい速さのウェーブだ。「オーレー、オレオレオレー、メーター、リーカー!」という海外で定番の掛け声も発生。
親子連れが通路にいて、子供がなにか書いてある紙をスタッフに必死に見せてアピールしていた。どうやらSnake Pit Ticket Please!らしく、スネークピットに入れて欲しいようだ。でも必死なのはお父さんの方で子供はよくわかってない感じもしたけど。
そうしたらまさかの出来事。本当にこの白髪オレンジのスタッフらしき人が2枚だけチケット上げるってことでこの親子を中に入れた!
うーん、すごいラッキーだ。子供にはきっといい思い出になったに違いない。お父さんはもっと嬉しそうだったけど。
時刻は8時半を過ぎたところ。そろそろスタジアムがざわつき始めてきた。というかすでに到着してから4時間以上経っているので、さすがにそろそろMETALLICAがみたい。
場内が騒がしくなり、登場ゲートの方にみんなスマホを構え出した。
ついに出てくるのか??
まだ音楽かかってない状態だけどそんな日もあるかも!?
最初に出てくるのJamesか?もしくはLarsか??はたまたKirkか??
そしてざわざわが一層激しくなった。
そしてついに登場!
出てきたのはレニー・クラヴィッツのようなドレッドヘアーのナイスガイ、クリス・ロックのようなブラザー、そしてモデルダンサーズのような女性陣だった。
「誰やねん!」
思わずそう叫びそうになった。関西の友人がいたら総出でそう突っ込んだに違いない。
(
本当に誰だったんだろうか?
いい加減そろそろ始まってくれ…。でももう少しの辛抱かと思ってふと横を見ると、大量の人が通路に陣取っていた。
自分の席は通路から2つ目の2番と3番。1番には誰もいなくて広々だったんだけど、通路にはさっきからなぜか大量の人が占拠していた。どうやら上の方の座席の人がここまで下りてきていた。できる限り近くで見たいからのようだ。
一番近くにいたのが、渡辺直美似の若いフランス人の子だった。その子が、こっそり、ちょっとずつ、わからないように、徐々に徐々に、1番の座席の方にちゃっかり入ってきて、気がつけばそこに立ってワーワー やってた。いやいや、バレバレですって…。
流石にこれには黙っていられなかったのか、後ろにいたさっきの夫婦が何かをフランス語で伝えていた。すると彼女は笑顔で1番の席に腰を下ろした。
どうやら立ってると見えないし圧がすごいからせめて座ってよ、って伝えたようだ。うーん、座ればOKなのか…。
アメリカかどこかの時は、通路に立とうものなら逐一セキュリティが来て追い出していた。でもここではそれはないようだ。うーん、これもお国柄の違いなのか。
隣にいるのはいいんだけど、問題はグイグイ押しがすごいってこと。バンドメンバーが出てくるゲートはもっと右奥の方だ。そのせいか、この子はそのナオミパワーでぐいぐい押してくる。色々なところが当たってますよ!って思うけど、気にせず押してきてそれが大変。その寄り切りの強さと勢いにこっちが負けそうだ。
おまけにタバコもスパスパ。他の観客も吸ってたけど、そもそもライターはOKなの?火器類が持ち込みOKなのがすごい。
でもこれは以前行ったドイツでもそうだったので、これまたヨーロッパのお国柄なのかもしれない。イギリスは電子タバコ以外は駄目だったし、アメリカもおそらくダメだと思うし。
こんなこともあろうかと用意していたマスクが大活躍。以前のドイツのライブでもこのタバコの煙にライブ中ずっと悩まされて喉が痛かったので、今回持参したマスクはコロナ対策ではなくタバコ対策のためのマスクとなった。
左からのパワフルなグイグイ、タバコの煙、そして目の前に見える荒れ狂う群衆、ライブ前に酔い潰れたり体調悪くして医療チームに運ばれる面々、そんな色々なものが目に入ったりで、ライブに集中できるか不安になってきた。
「どうしたもんかなこれ…。折角のライブなのに集中できるのか。パリまで来たのに勘弁して欲しいなぁ…」
とぶつぶつ言っていると、スタジアム内に響いていた音楽が止んだ。そして流れ出したのが定番のAC/DCの”It's a Long Way to the Top”だ。
遂にその時は来た。
この曲で場内のボルテージは一気にマックス。自分もさっきまでの心配事とかどうでもよくなった。
そうだ、このためにパリにまで来たんだ。楽しまなくてどうする!ナオミなんてもうどうでもいい!
待ちに待ったライブの始まりだ!
<ライブレポート後編につづく>