「ただいまー・・」
深夜3時だ。
朝から仕事なのだから起きているはずがない。
小声で声を掛けながら家に入る。
が、リビングの電気が煌々と付いていた。
「あれ?起きてるの?」
・・・・・・・寝てる。
「なーんでこんなところで寝てるのー。ベッド行けー!」
嫌がらせに鼻の穴をこちょこちょしてやった。
こうするとすぐに起きる。相当くすぐったいらしい。
「あれ?もう帰ってきたの?おかえり」
「もうって3時だよ。明日寝坊しても知らないよ」
「ん〜〜」
まだ起き上がれないらしく私に抱きついたまま離れなかった。
「うわ、タバコくさ」
「あの店は誰もいなくてもタバコくさいよ。お風呂入ってくるから一回離して」
そんなことを言っても解放してくれる彼ではない。力では到底かなう相手でもない。
またそのまま寝てしまいそうだ。
「ちょっと〜あーもう明日エッチなしだよ!いいね!」
「じゃあ今するからいい」
「やだよ!明日ランチ行くから早起きだもん!お風呂!」
「あー男だな。男だろ」
「そんなわけないでしょ、なつこだよ」
「嘘だな。男だ」
「違うって・・」
そのまま彼は半ば強引に私を抱いた。
強引と言ってもこれがいつもの私たち。
付き合って何年だろうか。
少なくとも3・4年は経っている。
私が前の夫と結婚している時からの関係だ。
この家に越して来たのは離婚してすぐだった。
離婚の3ヶ月前、私はようやくこの彼に既婚者であることを打ち明けた。
彼はさほど驚かなかった。
気づいていなかったとは言っていた。が、何かしら隠していることがあるとは思っていたらしい。
数年間にわたり独身であると偽り続けた私を、彼は責めなかった。
前と変わらず私を大事にしてくれた。
ここは私にとっては唯一の安心できる居場所、この人は大切な恋人。
<守られている>
そう感じられる初めての人だった。
「今日は店は暇だったの?」
「暇だよ。最初につまんないフリーついて、あとはいつもの」
まだリビングでダラダラしていた私たちはふと時計をみて流石に慌てた。
「もう5時じゃん!もう少しで起きる時間じゃないの?私風呂!風呂!」
「俺はもうそのまま出ちゃうから、ちゃんと寝ろよ」
「わかった、いってらっしゃい」
私たちはとても仲が良かった。
幸せに2人で暮らしていた。
このままずっと仲良く二人年老いていくのだろうと信じて疑わなかった。
休みの日は遊びに出かけ、彼の連休が取れれば旅行に行った。
夕飯を作るのが面倒な日は外で済ませ、なんとなくホテルに寄ることなんかもあった。
私が大きい風呂に一緒に入りたいと言った時だ。
家の風呂では流石に二人足を伸ばして入ることは難しかった。
そんなささやかな幸せを二人で感じながら生活していた。
私が一方的に怒ることはあっても、喧嘩になることは年に数回もなかったように思う。年が少し離れていることもあり、彼はとても寛大だった。
