みなさまごきげんよう。
ジャッカルの精ですウィリス、ぽんぽん工房です。
HELLSINGを参照されたし。
今回はいよいよ「ダイ・ハードで学ぶ英会話」の本編です。準備編はこちらから。
今回参考にする吹替は、最も人気が高い野沢那智氏がジョン・マクレーン役を務めるバージョン。翻訳を担当したのは「コマンドー」でお馴染み平田勝茂氏です。
「その前のセリフ」
原文
直訳
吹替による意訳
の形で紹介します。また、直訳と意訳は変わらないけどセリフそのものが秀逸だなと思うものはどちらかだけの表記とします。
「離婚したの?」「黙って運転しろ」
Hey,come on.You divorced?Or separated?She beat you up?
ねえ、離婚したの?それとも別居?奥さんが暴力をふるうの?
いいじゃないすか旦那ちょっとくらい。怖い?奥さん。ヌハハハハハハ
空港に着いたマクレーンが運転手アーガイルの運転するリムジンでビルに向かうシーン。原文ではちょっと表現が直接的すぎる。
「なんで奥さんはロスなのに自分はNYに?」
I got a six-month backlog of New York scumbags I'm still trying to put behind bars.
捕まえなきゃならないニューヨークのクズどもが6ヶ月分溜まってるんだ。
オリにぶち込まれたがってるワル共が署の周りに列を作って並んでる
平田節ですね。
We've been sticking him woth spears.Of course he has.
彼を槍で突っついていたところだ。もちろん済ませたよ。
コソ泥かと思ったよ。冗談だよ。
妻ホリーの勤めるビルに到着、社長と挨拶をするマクレーン。そこにホリーが現れ挨拶を済ませたの?と聞かれた社長の返答。多分直訳してもあまり面白くないと思うんですよね。
That was great,John.Good job.Very mature.
いいぞ、ジョン。よくやったよ。凄く立派だった。
ガキだなあ、大人になれよ、このバカが。
妻ホリーとはあまり上手くいっていないマクレーン。2人になるなり早速口論をしてしまいます。ホリーと別れた後1人になったマクレーンは自分にこう言い聞かせます。ここは直訳でも良いと思うのですが、なかなか面白い訳だと思います。
Thanks for the advice.
アドバイスありがとよ。
場面は飛んで、テロリストとの銃撃シーン。「バカが、引き金を引く時にはなぁ、躊躇うんじゃなえよ!」とテロリストが言い、リロードしてるスキを狙ってマクレーンが銃殺、そしてこう一言。意趣返しというヤツです。
Welcome to the party,pal!
パーティーにようこそ、相棒
パーティーにようこそ!
パトロールに来た警官、アル・パウエルにビルの異常事態を知らせるためにマクレーンが機関銃を乱射するシーン。ここでダイ・ハード屈指の名ゼリフ。他のバージョンでは「おっちゃんよく来たな」「待ってるぜ」などと訳されることもありますが、ここはやはりストレートな訳の方がクールですね。
直前には、ビルの異常事態に気づかないパトカーに対して「パトカーを運転しているのはスティービーワンダーか?」と苛立つシーンも。スティービーワンダーとは盲目のアーティストであり、つまりパトカーの運転手は目が見えていないのか?という揶揄です。
They're turning my car into Swiss cheese!
パトカーをスイスチーズにされた。
パトカーをスクラップにされた。
アルが本部に自身のパトカーが銃撃されたことを伝えるシーン。スイスチーズとはトムとジェリーに出てくるみたいな穴ボコのチーズのこと。つまり、「蜂の巣にされた」という意味で、分かりやすいように意訳するにしてもこうするのが自然かと思われますが、少し捻りを効かせるのが平田流。
I assume you are our mysterious party crasher. You are most troublesome for a security guard.
あんたが我々のパーティーをぶち壊してるんだな。非常に厄介な守衛だよ。
しかし君をパーティーに呼んだ覚えはない。ガードマンにしては態度が厚かましいな。
敵から奪った無線を介してハンス(テロリスト集団のボス)を煽るマクレーン。に応えるハンス。先程の「パーティーにようこそ」もそうですが、舞台がクリスマスのため、それに絡めたセリフが多いのも特徴。ここも、直訳するとやや堅苦しい表現になるのに対してテンポの良いセリフ回しに仕上がっています。
Sorry, Hans, wrong guess. Would you like go for double jeopardy where the scores can really change?
ごめんよハンス、間違いだ。得点アップのため賞金を2倍にしてみるか?
ブーッ、残念、ハズレだよハンス。さあどうする?ハンス。早く当てないと持ち点が無くなるぜ?
上記へのマクレーンの回答。「jeopardy」やら得点アップの賞金やらは本国のクイズ番組の話らしいです。どこまでも相手を煽ることに長けたマクレーンですね。
Oh,these are very bad for you.
これ(タバコ)は健康にメッチャ悪いぜ。
吸いすぎに注意しましょう。
殺したテロリストの所持品を探り、タバコをくすねるシーン。ユーモラスでウィットに富んだ表現に訳されています。ちなみにマクレーン自身もヘビースモーカーであり、このタバコで一服します。
ハンス「お前は何者だ?」
I'm just a fly in the ointment,Hans. A monkey in the wrench...A pain in the ass.
俺はちょうど軟膏の中のハエだな、ハンス。モンキーレンチ、ケツの穴の痛み。
お邪魔ムシといったとこかな。人の邪魔をするのがメシより好きでね。
現在進行形で計画を邪魔されているハンス。"軟膏の中の虫" "モンキーレンチ" "ケツの穴の痛み"は全て厄介者を表す慣用句表現です。モンキーレンチとは「産業革命時代にさかのぼる「a monkeywrench in the works」の変形。工場の大型機械の歯車にレンチが落ちたら、すべてが止まってしまう」という由来らしい。
unless you wanna open the front door for me.
俺のために正面扉を開けてくれるなら別だが。(=大人しく帰らせて貰えるなら別だが)
お宅が出ていきゃあ別だが。
ハンスに「まだいるのか?」と聴かれたマクレーン。こういう正反対の訳はコマンドーの「OK!(ズドン!!)」に通ずる物がありますね。
Yipee-ki-yea,motherfucker.
イピカイエー、クソッタレ。
イピカイエー、ざまぁ見ろ。
シリーズを通してのマクレーンの決めゼリフ。イピカイエーはカウボーイを象徴するセリフであり、「西部劇が好きだった」と語るマクレーンを象徴するセリフともなります。「当ったりめえよ」「てやんでぇ」などと訳されることもありますが、ここもやはりそのままの方が個人的には好みです。
They got missiles, automatic weapons and enough plastic explosives to orbit Arnold Schwarzenegger.
奴らはミサイル、機銃、そしてアーノルド・シュワルツェネッガーを打ち上げられるくらい大量のプラスチック爆弾を持ってる。
誘導ミサイルに、自動小銃に、プラスチック爆弾も持ってる。ランボーも真っ青よ。(別版吹替より)
テロリストの情報をアルに伝えるマクレーン。実はこのダイ・ハードという映画、元々はシュワルツェネッガー主演の「コマンドー2」として企画されていたという経緯があります。
ちなみに他にも、会話の中での比喩表現としてランボー(原文)やジョン・ウェインといった人名も引き合いに出されています。
Jesus Christ,Powell! He could be a fucking bartender for all we know.
なんてことだ、パウエル!彼はふざけたバーテンダーに決まってる。
バカバカしい、何が警官だ。どうせヤクでラリってるチンピラか何かだろう。
アルの応援で駆けつけた警察の指揮を執るロビンソン警視(ただし無能)。「アルが連絡を取る人物(マクレーンのこと)は誰だ?」と聴いたら「分からないが恐らく警官だろう」と返されたロビンソンのセリフ。原文ではヤクでラリってるなんて一言も言ってないよ?
Unless you like it messy,I'd start bringing us in groups to the bathroom.
貴方が汚いのがお好きなら別だけど、グループごとにトイレに行かせてほしいの。
グループごとにトイレに行かせてほしいの。
人質代表としてハンスと交渉するホリー。訳ではカットされていますが、ホリーも大概口が悪く、あの旦那にしてこの妻です。
Fuck me
みてろよ
Fuck it
殺してやる
マクレーンがテロリストたちにC4爆弾をお見舞いするシーン。直訳だとどちらもクソッタレ、くらえ、のような意味ですが、細かい悪態やため息、呻き声なども微妙にニュアンスを変えながら日本語に落とし込まれています。
「子供はいるのかい?」
Well,as a matter of fact, my wife is workin' on our first.
ああ、実は、女房が第1子を妊娠中だ。
実はもうすぐ初めての子が産まれるところだ。
マクレーンの質問に応えるアル。別の訳では「今女房が腹に1人目をブチ込んだところだ」というものもあります。こちらは中出しした時に使いましょう。
This shithead does not know what kind of man you are.
そこにいるアホはお前がどんな野郎か知らないが
人質の1人、エリスが自分がマクレーンと交渉するとしゃしゃり出てくる。エリスと無線で会話した後ハンスに替わるように促したマクレーンはこう放つ。「shithead」の訳としてはバカでもアホでも良いところでアホというチョイスが絶妙。
It's Christmas.It's the time of miracle,so be ofgood cheer.
クリスマスだ、奇跡が起きる時だ、頑張れ。
今夜はクリスマスイブだ、奇跡には不自由しないさ。
政治犯を装うハンスたちの真の目的は6億4千万ドルの債権の強盗。金庫の解除を担当するメンバーとハンスとの会話。複数の金庫の電子ロックの1番最後のものは手に負えないから奇跡が起こらないと無理だ、と言われたハンスの一言。ここも原文と訳はそこまで変わりませんが、言い回しがオシャレですよね。
「何故ここにいる?」
Got invited to the Christmas party by mistake. Who knew?
間違ってクリスマスパーティーに呼ばれてね、誰が知ってた?
間違ってクリスマスパーティーに呼ばれてね、このザマだ。
ここまで無線でのみやりとりをしてきたハンスとマクレーン。自らの手でマクレーンを消すため、ついにハンス自ら行動を起こします。逃げ出した人質を装ってマクレーンと対峙、質問するハンス。「Who knew?」のニュアンスが難しいですね。パーティーに呼ばれて来てみたらこんなこと(テロに巻き込まれる)なんて誰に予想がついた?という意味かと思われます。
ちなみに、舞台はアメリカに対してハンスはヨーロッパ人という設定。原語版ではハンスがアメリカ人の演技をするために訛りや発音を巧みに変える、というシーンでもあります。
God, that man looks really pissed.
なんてこと、あの人は凄く腹を立てているみたい。
やだ、あいつモロ頭に来てるみたい。
人質の1人の女性のセリフ。意味は同じですが、やはり言い回しが平田節です。
I'll fuckin' cook you,and I'll fuckin' eat you.
お前を料理して食ってやる。
叩き殺して、食ってやる。
テロリストの1人、カールと死闘を繰り広げるマクレーン。凡そ警察とは思えない口の悪さです。「テメェみてえな野郎は死んでこそ世のためになるんだ」という訳もあり、こちらも警察とは思えないセリフ。別シーンでは「署長はルールを守れと言うよ!」と他人事のように言うセリフもあり、マクレーンのはみ出しものっぷりがよく出ています。
What the fuck is goin' on?
何が起こってやがる?
クソォ、もう知らねえぞ!
最終局面。ここはガッツリ意訳ですが、ここまでの戦いで疲弊し、破れかぶれのマクレーンのボヤキが最高です。
If this is your idea of Christmas, I gotta be here for New Year's.
もしこれがあんたらの考えるクリスマスなら、年明けの様子も見てみたいね。
来年のクリスマスも荒れるぞ、この2人。
この映画を締めくくる、アーガイルのセリフ。ここでの「あんたら」「2人」はマクレーン夫妻のこと。そしてこの言葉通り、翌年のクリスマスも夫婦揃ってテロに巻き込まれるのでした。(ダイ・ハード2)
ふう、長かった。
本来こういう企画はコマンドーでやるべきなのですが、とりあえず企画倒れにならなくて良かったです。
あと、似たようなことやってる人がいました。
それでは。