◆下水復旧に経験生かす
「液状化現象がこれほどとは…」。習志野市は液状化で東京湾岸地域の主要な下水管が破損し、約千五百戸の下水道が完全に使えなくなった。今では制限付きで流せるようになったが、本格的な再整備には課題も残る。市都市整備部副技監として、その下水道復旧工事の陣頭指揮を執る。
「この揺れはまずい」。震災発生時は市役所にいた。部下をパトロールに出した。報告される被害にあぜんとした。「液状化ってこうなるのかと正直思った」
被害の大きい香澄地区に向かった。下水管の合流部が埋まっている道路が大きく陥没していた。陥没が広がって近くの住宅に被害が出る恐れもあった。
陥没した穴にもぐって状況を確認。壊れた下水管のわずかな流れを確保するとともに、穴に土のうを詰め込んで広がりを防ぐことを決断した。“応急手当て”は翌日の深夜まで続いたが、住宅への被害は防いだ。
下水管の破損が合流部だったため、上流の広い地域に影響が出た。汚水の一部は雨水用の管を通して近くの菊田川に流れ込んだ。
菊田川の水質汚染を防ぐ方法を探った。新潟県中越地震では、沈殿池を造って浄化する方法が実際に試された。これを応用して、河川の一部を鋼矢板で区切り、汚水をためる簡易式の処理施設を設置することにした。
管に詰まった土砂の除去や、破損部分を仮の管でバイパスする作業も進めた。六月末に暫定的な復旧は終わる見込みだ。
「初めてのことばかりで、教科書は使い物にならなかった。それでも、判断を下すのに四十年近い経験が生かせた」と胸を張る。
現場には必ず若い技術職員を連れていった。「もう起きてほしくないが、経験を積めば今度はもっと早く復旧できて、市民に迷惑をかけなくて済む」との思いからだ。
破損した下水管は、地震に強いとされる塩化ビニル製だった。それほど液状化の威力が大きかったことになるが、「多くの自治体は阪神大震災などの教訓を生かし切れていなかったと思う。この震災は今後につなげないと」とも語った。
下水管の再整備には難題がある。液状化で地下水の水位が上昇した。土壌の強度も低くなっている。余震の心配もある。壊れる前と同じように下水管を埋めるわけにはいかないという。「どうしようかと、頭の中はそればかり」。再整備の完了には数年はかかるとみられている。 (小川直人)