背中に感じる、あのふかふかの布団の感触。
男の人の押さえる力。
覆い被さる身体が落とす影。
何もかもが、初めてで…。
『…風、柱…様…。』
いよいよその気になって貰えたのだと。
熱っぽく、その二つ名を囁いた。
早鐘を打つ胸の鼓動が、聞こえてしまうんじゃないかと思うくらい、速くて。
私の上に跨がる、風柱様を見上げた。
『…良いんです…、私…、ちゃんと…。』
心得てます…。
そう思いながら、瞳を閉じる。
…けど。
一向に、何も始まる気配が無い。
『…据え膳食わぬは、男の恥、たァ言うけどよォ。
…出来上がる前の膳に、手ェ付けられっかァ。』
私を布団に縫い付けておきながら。
…そんなコト、言うなんて。
でも、伝える手段が解らない。
『…子供じゃ、ない、です…。』
もう一度、伝えてみる。
キリ…と、掴まれた手首が痛い。
でも。
…胸が、もっと痛い。
『…ちゃんと、御奉仕…出来、ます…、私…っ!』
身をよじる度に。
薄紅色の肌襦袢が乱れていく。
見られている。
視線だけで犯されているよう。
でも、風柱様は。
私のはだけた胸元を、一瞥して。
『…この程度の乳なら、見飽きてらァ。(恋柱で)』
と、鼻で嗤った。
つまり。
幼過ぎて、抱く気にもならない。
…そう言われているんだ…。
やがて。
痛い位だった、私を押さえ付ける力が緩んで。
風柱様が、そのまま隣に身体を投げ出す。
『…寝る。
テメェも…もう、下がれ。
そんで寝ろォ。』
夜具に顔を埋めたまま、風柱様が言った。
本当に、眠そうに。
『…主人には、ちゃんと言っといてやる。
テメェには、何の落度も、ねェ。
…だから。』
気にすんじゃねェ。
朧気な意識のくせに。
抱いてもくれないくせに。
…私を、気遣うなんて。
疲れと眠気が限界に達したのか。
やがて身動ぎ一つ、しなくなって。
風体からは想像出来ない程、穏やかな寝息が聞こえてきた。
下がれ、と言われたのに。
離れ難くて、そっと身を寄せた。
…私の、初めてになる筈だったひと。
背中を向けられても、腕枕さえして貰えなくても。
…それでも、いい。
今日、抱かなかったこと。
…絶対に後悔させてやるんだから…。
そんな事を想いながら、私も、やがて、眠りに落ちていった。
【藤花の契 ④へ続く】