…こんなコト…しちゃダメだって、解ってても。
…どうしても、したくなるときって、あると思う。
…例えばそれが、今の私みたいに。
真夜中。
春の始めの、満月で。
…月明かりが溢れる、彼の部屋。
余計な物が一切置かれていない、その部屋で独り。
畳んだ洗い物を、届けにきて…。
佇んでしまう。
…何も真夜中に来なくたっていいのに。
…別に明日だって、良かったのに。
部屋の明かりが、灯っていない事を確認して、忍び込む。
…まるで、この部屋の主みたいね。
監察方の彼が、この屯所に居る事は、少ないから…。
…彼の気配を、少しでも感じたくて…。
畳の上に座って。
洗濯物を、置いて。
…せっかく畳んだのだけれど。
その黒装束を、そっと腕に抱く。
石鹸の、ニオイがしたけれど…。
それは、余計に淋しさを増しただけで。
両肩を摘んで、バサリと広げる。
…こんなコト、しちゃダメだって、解ってる。
…でも。
よく着こなし方も解らないその衣装を、どうしても纏ってみたくて。
『…えっと…この紐が…こう、かな?』
なんて。
立ち上がってもしょもしょしてた、時だった。
『…まず俺は、何から突っ込めばいいんだ?』
背後から、音も無く。
この部屋の主が、現れた。
っきゃあぁぁっ!!
と、叫ぶ前に、素早く動いた影に後ろから、口を塞がれる。
『…予想通りの反応に、感謝するよ。』
耳元に囁くような、落ち着いた…声。
『…いいか?
手を離す。
だが、叫ばないでくれ。
…この状況で、副長の追及をはぐらかす理由が、全く思い付かない。』
淡々とした声に、コクコクと頷く。
早く離れてくれなきゃ、私の心臓が、持ちそうになかった。
ゆるりと離れた腕。
カクン、と膝が抜ける。
『…山崎、さん…あの…何て言うか…あのっ……
…ごっ・ごめんなさい…っ!!』
覆面をしたままの、釣り目が私を見据えている。
闇に溶けそうなその姿で。
『…まだ、お帰りにならないと…思って…。
…あの、…この衣装が、ですね、…、
…どうやって、着るのかなぁって…。』
思い切って、正直に告白した私。
だって、もうこれはごまかせない。
半分、着ちゃってるし…。
『…あの、ほんっっとーに、すみませんでした…っ!』
何も言わない山崎さんの沈黙に耐え切れず、
着込んだ時と同じようにもしょもしょと脱ごうとして。
『…面白いな。
…君は。』
…と。
山崎さんの、柔らかな声がした。
す…と、私の手から衣を取り上げる。
覆面を人差し指でずらし、晒した素顔には。
…意外にも、優しい笑みが浮かべられていた。
『…今、君が、片足を突っ込んでいたコレは、上着だよ。』
『……え?』
クッと、笑う声がした。
『…こうやって、上着を着て…この紐と、この紐を結ぶんだ。』
ふわりと、私にその衣を纏わせ、着せてくれる。
『…あ、の…?』
『…いいよ、着てみたらいい。
夜中に俺の部屋まで忍び込んで来るほど、
忍装束を着たいなんて、よっぽどだろ?』
…違う。
…山崎さん、違うんです!
忍装束に興味があったワケじゃなくて…っ!
『…で、ここをこうして…完成。』
言い出す間も無く、気が付けば私は、すっかり山崎さんと同じ格好で…。
『…鉢金、いる?』
とか、聞かれたり。
…山崎さんと…お揃い…。
だけどコレってどうなの?
恥ずかしいやら驚くやらで、どう反応していいのか解らない。
『…監察に、…置いておきたいよ。
…こんな…。』
小さく呟いた、山崎さん。
『…似合いますか?』
『…似合わない。
…君には。』
キッパリと言われて、少しだけ、ガッカリした。
『…こんな服じゃなくて。
もっと華やかな着物の方が、似合うに決まっている。』
…え…?
『…女なんだから。』
するり、と。
山崎さんの腕が、一度着せてくれた…。
…黒装束の紐を、解く。
『…あ、の…。』
冷たい指先が、触れた。
『…何故、こんな時間に俺の部屋に?』
その腕から逃れようとする私の動きを、封じるように。
静かな声が、問い掛ける。
『…それは…っ!』
『何故、俺の服を着てみようなんて…思った?』
スルスルと解かれていく衣装を、掻き抱く。
『…悪いのは、俺?
それとも…。
…君?』
妖しいほど、妖艶な笑みを口許に浮かべて。
そんな風に、言わないで。
『…山崎、さん…。』
抗えない。
彼の腕に、堕ちていく私。
『…答えは、君のカラダに聞く。
…いいね?』
月明かりの中。
長く伸びた、影が重なる。
そっと、優しく。
横たえられて。
…私は、目を閉じた。
…寂しい想いを、させてゴメンと。
貴方がそっと、囁くのを聞いた。
…真夜中、月光、あなたの部屋。
【真夜中、月光、彼の部屋 END】
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この時代に、コスプレしようと思ったら、
どうしたらいいのか?
とか、考えたら・・・。
こんな話が!!!!wwwww。
違う。
なんか違う!!