母は脳梗塞になってからも、毎日電話をくれました。
目が見えないから、看護婦さんに頼んで連絡しているというので、電話があったら必ず出れるように、ずっと携帯を持ち歩いていました。
長い話は出来ないし、言葉も辿々しいし、何を話しているのかわからない時もありました。けれど、母の声を聞くだけで安心しました。
電話口の母は、大体泣いていました。
「こんな手術受けるんじゃなかった」
「早く帰りたい」
私は励ましの声をかける事しか出来ませんでした。
「大丈夫。必ず元気になるから。」
脳梗塞から3日後、病院にお見舞いに行ける事になりました。母の前で泣いてはいけないと、妙な緊張をしながら病室に入ると、そこにはいつもと変わらない笑顔の母がいました。
せん妄なのか、脳梗塞の影響なのか、大分おかしな事を言っていましたが、母の笑顔を見れたので安心して帰ろうとした時、母が私を呼び止め
「この前買い物行った時、あなたに似合いそうな服を買ったから、持って帰りなさい。」
と言うのです。
こんな状態になっても、私の事を考えてくれている母の気持ちに、堪えていた涙が溢れてしまい、母も泣かせてしまいました。