バーテンダー 距離感 ハリネズミ
改めてバーテンダーという職業について考えて見た。
僕はバーテンダーという仕事をして1年半になる。
営業時間中のバーテンダーの仕事というのは大分すると二つ、接客とお酒を作る事である。
その上で僕が1番大事にしていることは、お客様との距離感である。
というのは、例えば男性と女性のペアでいらしたお客様にペラペラと話しかけに行ってしまってはムードも何も無くなってしまう。そうでなくても仕事の話をしてるとき、その方の内情に大きく関わるような話をしているとき、何はなくともとにかく盛り上がっている時、こういった時僕は極力聞こえていないふりをするし、自分からはなるべく話に口を挟まないようにする。しかし、それでも急に同意、意見を求められた時のために、そして何より注文の際の「すいませーん」という声を聞きこぼさないために、常に耳はそばだてている。
例えばカウンターに5組のお客様が居たとしたら4組の客様がその時何を話しているかの大体の流れは把握できているつもりだ。だから、逆に話題に困っているようなことがあれば、近くに行って「そういえば…」なんて言ってお客様同士で話が盛り上がってきたなという頃合を見計らってスススと引く。まさしく「ヒット・アンド・アウェイ」である。
それと、僕がもう一点気をつけていること、それは接客というのは決してお客様を笑わせる事ではなく、楽しませることである。と思っている。
その結果お客様に笑っていただければそれがもちろんベストである。
Barというのは自殺願望者が死ぬ前に最後による場所だといわれている。
酒を飲んで勢いをつけてから逝こうということだろう。
バータンダーはあまりお客の内情に立ち入ってしまうのは御法度なのだ。
そして、適度な距離感があるから非日常性というものが生まれる。
僕が客なら求めることはそこである。
例えば、僕がBarに行ったとして、ジントニックを頼んだとしよう。
ハッキリ言ってしまえばジントニックなど家庭でも作れるお手軽カクテルの代表例見たいなモノだ。
それでもBarで飲むジントニックはホントにおいしい。
それはひとえにそこのバーテンダーさんの腕前ということもあるかもしれないが、それよりもその『非日常性』に因るものの方が大きいだろう。同じジントニックでも家で野球を見ながらスルメをつまみに飲んだって美味いわけがない。
だから、僕はこれからもその『距離感』を大事にして行こうと思う。
距離を置くことで逆にお客様を大事にするという一見矛盾とも取れるこのハリネズミスタンスが僕なりの最高のお客様のおもてなしの仕方なのだ。