The Reader | south coast diaries

The Reader

感想をお伝えするという条件で映画The ReaderのDVDを貸して下さった方がいました。
東京を離れる前にお返しするので、その感想を書いてみました。

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お返事遅れて失礼しました。邦題『愛を読む人』、お借りしてすぐ拝見しました。とてもいい映画ですね。

私みたいに文学をやる人間には訴えかけてくるものが多い作品でした。たとえばナチスのガードだとかバスガールだとか、ウィンスレットが演じる女性がやって いるようなモダニティーが生み出す仕事は人間の内面性の豊かさを排除した世界で成り立っていて、文学作品は人間性そのものをとりもどすオアシスである、と いう考え。彼女が自分で読まない、読んでもらわないといけない、というのもポイントですよね。「読む人」「読めない人」の差はそのまま社会的落差にもなっ ているのだけれど、彼が彼女に文学作品を読む間は、一時的であってもそういった構造をつくりだす資本主義で刻まれるような単位ではない時間 の流れ方になる。年齢の差とか逆転とか階級の差といったことがどうでもいい世界になるという意味でふたりの関係自体のように既存の社会が持つルールが破ら れる空間になる。さらに裁判後は囚人として、歴史的な加害者であり被害者であるような、時代から「囚われの身」である彼女が文学作品で救われるということ で、刑務所にいる彼女にテープを送り続けるとか彼女がそれで本を読めるようになるとか、、最後はすごく揺さぶられるところでした。なのに感傷的になりすぎ ないバランスもいい。(ただ、文盲というのは配役が難しいですね、、Philip RothのThe Human Stainの映画化では二コールキッドマンが文盲を演じてましたが、あれも原作(はるかにベター)では文盲ではないかもという屈折したキャラクターだったとはいえなんだかしっくりこなかった。)

映画として好きだった考えとしては、「裁くためではなく理解するための裁判」というあたりかもしれません。ポエティックジャスティスというか、あの女性は 終身刑にもなるし最後には自殺するし、結局は彼女の動機などを肯定はしないものの、その立場の複雑さについて考えるのは正しいと思い ました。第二次世界大戦ではファシズムと戦ったかもしれませんが、20世紀より前にはアメリカの白人だってネイティヴアメリカンを惨殺した血なまぐさい (白人の)歴史なんかがあるのですから、、ナチスに関与した人たちを人間化するのはとても難しいことだと思いますが、それもとても大切だと思います。

なんだかプロモーションでは売ろうとしてか年齢差とかスキャンダラスな面がハイライトされていたので(却って)敬遠してしまった映画でしたが、あれだけいい映画なのにもったいないことですね。

ハドソンお気に召すといいです、よいNY滞在を。