暗く重たい雨雲をくぐり抜け、飛行機がハンブルク空港に着陸すると、天井のスピーカーから小さな音でビートルズの『ノルウェイの森』が流れ出した。僕は1969年、もうすぐ二十歳になろうとする秋のできごとを思い出し、激しく混乱していた。

 限りない喪失と再成を描き新境地を拓いた長編小説である。村上春樹の作品は初めて読んだ。深い森を彷徨うように、するすると物語世界に引き込まれていく。

しゅん