その歌声は、甘く危険な香り。 「混乱の時代における愛の尊さ」をテーマにした、コンテンポラリーR&Bアルバム。
●ロバート・グラスパーと並んで現代ジャズ・シーンの最先端を走ってきたヴオー カリスト、約3年ぶりのオリジナル・アルバム。
●「混乱の時代における愛」をテーマにした、コンテンポラリーR&Bアルバム。ア メリ力のみならず世界各地で起こっている貧困、人種・女性・移民への差別な どの問題に向き合い、日々の暮らしや愛の大切さを綴ったオリジナルを収録。
●タリオ(アンタリオ・ホームズ)やライクマインズをプロデュースに迎え制作。 2016年の年頭から制作がアナウンスされ当初は2枚組となる予定だったが、 結果的には厳選された12曲で構成。メロウなソウルやエレクトリック・ポップ・サ ウンドの中に「愛」に関する真撃なメッセージが込められている。
●日本盤ボーナス・トラックには、代表曲「トラブル」の最新リミックスと、話題のエ クスペリメンタル・ソウル・バンドWONKによるリード・トラック「リヴ・ユア・ファンタ ジー」のリミックスを収録。
ホセジェイムス
ミネアポリス生まれ。14歳のときにラジオから流れてきたデューク・エリントンの「A列車で行こう」を聴き、ジャズにのめり込む。最も影響を受けたミュー ジシャンはジョン・コルトレーン。 ニューヨークのニュースクール大学でジャズを専攻しながら、各国の様々なジャズ・コンテストに参加。コンテストでロンドンを訪れた際に、世界的クラ ブDJのジャイルス・ピーターソンと運命の出会いを果たす。ホセの声と音楽性に魅了されたジャイルスは「15年に1人の逸材」と断言し、自身が運営 するブランズウッド・レコーディングスとの契約を即決。そして2008年、同レーベルからアルバム『ドリーマー』でデビュー。ヴォーカル・ジャズの歴史を 塗り替えたとまで言われる美声は世界中で大絶賛されジャズ/クラブ・チャートを総なめにした。 2012年、名門ジャズ・レーベル、ブルーノートへ移籍し、アルバム『ノー・ビギニング・ノー・エンド』でメジャー・デビュー。日本でもジャズ・チャート1位を 記録し、シングル「トラブル」も全国ラジオチャート洋楽1位(2013年1月度)を獲得した。 決して1か所にとどまることない貧欲なアーティスト性で、続く2014年発表の『ホワイル・ユー・ワー・スリーピング』ではインディー・ロック・サウンドに大 胆シフト。さらに、敬愛するビリー・ホリデイの生誕100周年に合わせて発表した2015年のスタンダード集『イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース〜ビリ ー・ホリデイへのオマージュ』では、オーセンティックなジャズ・ヴォーカルを披露した。

 

 

ホセ・ジェイムスは自身7作目となるオリジナル・アルバムの制作際し、明確なヴィジョンを抱いていた。「僕のジャズのキャリア の終わりを告げる作品だ。完全に」そんな彼の言葉の真意をまず は少し説明すべきだろう。2015年にビリー・ホリデイへのトリビュー ト・アルバム『イエスタデイ・アイ・ハド・ザ・ブルース』を発表したこの NY在住のシンガー・ソングライターは、今回、コンテンポラリーR&B 界へ新風を巻き起こすパワフルな声として生まれ変わるのだ。これ までも1つのジャンルに縛られたことのない彼にとっても、本『ラヴ・ イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』は新たなサウンドとなった。ソウ ル、エレクトリック・ポップ、そしてトラップ・ビートを基盤に、アフリカ ン・フォーク、アメリカのゴスペル、そして、彼が生まれ育ったミネア ポリスで身体に減みこんだミネアポリタン・ファンクの影響を深く感じ るサウンド。ホセ・ジェイムズの軽快なヴォーカルと彼の大胆で冒険 的なサウンドへのこだわりはそのままでありながらも、感情の全てあ らわにして愛情や恋愛関係の浮き沈みの細部まで描いた本作は、 彼のこれまでの作品の中でも最もパーソナル、あえて言うならば、 最もセクシーな作品となった。 「この作品に取り掛かる際、重大なことに気付いたんだ。これまでの作品で、自分はたくさんのものを詰め込みたいと必死になり過ぎていたということに。そして<自分のために作品を作りたくない。他の人たちのために作品を作りたい>と今回初めて思った。初めからその気持ちだけは固 まっていたんだ」
その言葉通り、『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』ほどカタルシス効果を強く感じるコンセプトのアルバムが2016年に発表されただろうか。ホ セ・ジェイムズの当初のコンセプトは本作品を2枚組にすることだった。1枚は愛について語る作品。そして2枚目は、現在アメリカ国内で問題とな っているアメリカの有色国民に対して犯される暴力的制裁と、それを許すシステムの崩壊に代表される現社会に墓延する狂気に対する思いを 込めた作品。しかし、彼は制作段階においてこう感じたという。「社会の狂気があまりにも手におえない状況まで陥ってしまった。殺人が次々と起 こり、もう自分の中でも感情を整理できないほどショックを受け、意気消沈してしまった」と。そんな苦しみを記録するよりも、彼は社会に癒しを生 み出してくれるだろう力を倍にしてアルバムへ注ぎ込むことにした。愛だ。“完全に敗北し、落胆したこともある、自分の中の良心を全て失ってしま うのではないかと思ったことも/知らなかったんだ、僕に再び命を吹きかけてくれるこんな愛が存在するなんて"と、ドリーミーな楽曲「トウ・ビー・ウ ィズ・ユー」でシルキーなバリトーン・ヴォイスで恋人への想いを歌いながら。
だからと言って、ホセが表現する愛が全てバラ色の世界だというわけではない。荘厳なピアノと最小限に抑えられたヒップホップのビートで織りな されたその楽曲がアルバムのターニングポイントとなり、ロマンスが常にロマンチックなものではないことを物語っていく。アルバムのオープニング 曲「オールウェイズ・ゼア」は揺るぐことのない関係を語り、2曲目「ホワット・グッド・イズ・ラヴ」ではカップルが<嘘に塗れた海>へ感情が沈没して いく様を物語る。サウンドからもそれがよくわかるだろう。(ホセの曲ではシャーデーの影響を感じる声で歌われているとはいえ)ザ・ドリームやドレイ クが制作したかのような機械的に弾む音と細かく弾けるシンセの音から、少し不気味なトーンと冷淡なパーカッションまで、音作りも今までとは違 っていた。マリ・ミュージックと制作した3曲目の「レット・イット・フオール」になると、ルーツ感溢れるギターとハンドドラムによる減みわたるサウンドを バックに独りになったばかりの状況を受け入れる様子を描いている。そうかと思えば、次の楽曲「ラスト・ナイト」で彼は薬物やセックスの世界に溺 れ自分を忘れる姿を物語っている。もちろん、のちに和解と癒しへの物語をアルバムが語り始めるわけだが、ホセは愛に関わる全ての物語を語 りたかったのだ。
「真実に基づいていれば限界など一切なかった」と、彼は楽曲の全てに自叙伝的要素が込められていることを示唆した。「(2014年に発表したロ ックに影響を受けた作品)『ホワイル・ユー・ワー・スリーピング』のツアー中は、完全にロックの世界に入っていた。それから様々な変化を自分の 中で感じてきた。恐らく、ビリー・ホリデイの作品を深く知り、彼女の最期のことを考えるようになったことも1つの要因かもしれない」。
サウンド面では、ホセはポップスの特徴とソングライティング法を用いたモダンなアプローチに影響を受けていると言えるだろう。グライムスが描く 世界、カニエ・ウェストのクリエイティヴカ、FKAツイッグスのキュレイター的素質、ジ・インターネットのジャンルの融合のバランス、ブライソン・ティ ラーの宇宙観、そしてエリー・ゴールディングのスタジオへの拘りにいたるまで。ホセはこれまでの作品を共に制作していたバンドではなく、本作で はAリストのソングライターとプロデューサーらと制作する道を選んだ。ミゲルのコラボレーターとして知られるタリオと共にファロア・モンチやアンソ ニー・ハミルトンを手掛けたことで知られるライクマインズが『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』のほとんどを手掛け、ホセ自身ヴォーカル・レ ッスンを受け始めたり、ジムへ通ったり、これまで経験したことのない新しい生き方を受け入れ実践し始めた。
現在のソロ・スターの姿はまさにアンディ・ウォーホルが断言した<アートとアーティストは1つであり同じだ>という定義を確信づけるものだという こと。そして、クインシー・ジョーンズが『オフ・ザ・ウォール』で<ハイ・レベルのサウンドのまま>、時代にあった音楽を創り上げたアプローチ法。そ れを頭に刻み入れ今回ホセは制作に臨んだ。そして彼はトラップ音楽の複雑さの虜となり、前述のアーティスト達の音楽を聴きながら自分が聴き育った音楽を思い出していた。
踏しない新しい世代が登場してきた。再びこういうサウンドを世界が求めているんだよ」
まさにホセ自身がずっと準備し心待ちにしてきた瞬間。ジャズだ けに拘ることなく、ホセはこれまでにも柔軟なマインドを持つロバ ート・グラスパーやピノ・パラディーノらと音楽を制作する道を選ん できた。彼の代表作『ノー・ビギニング・ノー・エンド』がまさにそう だ。彼は音楽が劇的に進化し続ける時代のミネソタ州で育った。 プリンスのパワフルなファンク・ポップ、モリス・デイに影響を受け たジミー・ジャム&テリー・ルイスがニュー・ジャック・スウィングを ラジオフレンドリーに変化させ、ラップは、自身もパーカッション& サックス奏者でもあるホセの父がリヴィング・ルームでよく聴いて いたジャズの楽曲をそのままサンプルしていた。そこまで聞け ば、『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』に収録されているア ップビートの「リヴ・ユア・ファンタジー」や「レイディース・マン」での ワイルドなシンセに、ヴォーカルのチャント、手拍子や指を鳴らす
音でお馴染みのオールド・ミネアポリス・サウンドを、現代の踊れ * 。 るR&Bに見事に融合したサウンドが生まれたことは何の驚きでも ="ないだろう
「そのムーヴメントをずっと考えていた。心やマインドへ訴えるだけの音楽でなく、みんなにダンスフロアで踊ってもらいたいと思っていた。一生ジ ャズ・アルバムを作り続けることも出来る。でも、大勢の人たちに聴いてもらいたいんだ。僕はマイルス・デイヴィスの音楽が好きなのと同じぐら い、ジェイミー・エックス・エックスの音楽も好きなのだから」
ホセの音楽にエレクトリックの要素を感じるのは、デビュー作及び2作目がBBCのDJジャイルス・ピーターソンによってリリースされ、ロンドンのクラ ブ文化に影響を受けていることを思えば当然である。しかし、これまでは脇役的存在であった。本作では、しなやかで魅惑的でムードたっぷりな 「ユー・ノウ・アイ・ノウ」や「クローサー」を聴けば、聴く人を踊らせたいと今まで以上に願うホセのそんな思いを強く感じるだろう。トランセンデンスと はまさにそういうことだ。大勢の人たちが共に歩んでいく。共に歌を歌い、メロディに合わせ身体を揺らし、ビートに乗って踊る。全ての人達のフィ ーリングがユニゾンで響いていく感覚。そして、『ラヴ・イン・ア・タイム・オブ・マッドネス』を締めくくる「アイム・ユアーズ」でその全ての思いが集約さ れていると言えるだろう。この楽曲で我々のナレーターであるホセの葛藤、混乱、喪失感、強い欲望が1つずつ剥ぎ取られ、より深い意味を露わ にする。ホセ・ジェイムズ1人の力だけでは得ることの出来ない、やっとの思いで得る愛。伝説的シンガー、オリータ・アダムスの参加もありゴスペ ルのアプローチも感じるこの楽曲でのこのメッセージこそが、我々全てが幸せな時も苦しい時も常に聞きたいと願う言葉であり約束。<ずっとそば にいるから>
NEWS 全世界で大ヒットした映画『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の続編『Ffty Shades Darker』にヴォーカリスト役で出演! 作品は2月10日に全米公開(日本公開時期は未定)。 ホセは2月上旬にハリウッドで行われるワールドプレミア上映のイベントにも参加予定。