すべてが見え透いているわけでも、何一つ分かってはいないわけでもなく、おそらくその中間のどこら辺かなのだが、とりわけ饒舌という設定で暮らしていたとして、沈黙こそが最も適切なメッセージという状況があるような気もするし、そんなものはまやかしかもしれない。というような感じで、何かを言っているようでいて実際には何も言っていなく、そもそもがベーシックに絶望があったとしても、どこまでが真面目でどこからが嘘かが分からなくて信じられないというようなことを、遠い夏の日に埼玉から通っていたあの優等生にすらすでに言われていたわけである。そんな2021年、最高の季節こと夏真っ盛りなわけだが、体調が万全で頭の中がスッキリしているような瞬間などは、いまやなかなかないわけなので、このご時世の常としてやはり何らかの不安を感じながらいつものように帰宅したところ、今年の3月に引越したマンションのポストに小さな荷物が届いていた。それには1枚の7インチシングルレコードと、CD-R、つまり、吉田哲人「光の惑星/小さな手のひら」が封入されているのだろう。
私のような本格的ではなくミーハーで軽薄な音楽ファンは今日、ストリーミングサービスで音楽を主に聴いていて、そこに無いものはダウンロードで購入したりもするのだが、それでアナログレコードを再生するためのプレイヤーなどは、とっくの昔に処分してしまっていた。ところが一昨年に、NEO・ニューミュージックの新星こと吉田哲人さんのシンガー・ソングライターとしてのデビューシングル「ひとめぐり/光の中へ」がアナログの7インチ・シングルだけでしか発売されないということで、これを聴くだけのためにアナログレコードプレイヤーを購入したのだった。その音源はデジタル化した上でiPhoneに取り込み、主にそれで聴いていたわけだが、内容はこのためにアナログレコードプレイヤーを買った甲斐があったというべき素晴らしいものであり、個人的に好みの音楽であることはもちろんなのだが、新しい日本のポップスの可能性を感じさせもするようなものであった。
それはそうとして、今年の3月に私は千歳烏山から柴崎に引越したわけだが、ちょうどその時に吉田哲人さんの「光の中へ」の作詞をしていた加納エミリさんサウンドプロデュースの鈴木祥子「助けて!神様。~So Help Me,GOD!」というシングルがやはり7インチのアナログレコードでのみ発売されたので、タワーレコード渋谷店のパイドパイパーハウスに買いに行った。それで、やっとこさ引越したばかりの新居で聴こうと思ったのだが、どうやらレコードプレイヤーのACアダプターがどこかに行ってしまったらしく、聴くことができないという状況に陥った。とはいえ、ポール・マッカートニー&スティーヴィー・ワンダー「エボニー・アンド・アイボリー」のそれによく似たジャケットもなかなか良かったので、いまのところは持っているだけで満足することにした。
それで、そのうち吉田哲人さんのニューシングル「光の惑星/小さな手のひら」のリリースが発表されたのだが、こんなのなんぼあってもいいですからね、というぐらいに絶対に良いに決まっているのだが、やはり7インチ・シングルのみでのリリースなので、現状のままでは聴くことができないではないかというような気分になったのだが、たまたま見かけたツイートでCD-Rが付いているものもあるということだったので迷わず注文、それが届いたということなのである。
CD-RをiTunesにインポートし、iPhoneでも聴けるようにしたのだが、なんとなく忙しくはなく落ち着いた時に聴こうと思ってそのままにしていたところ、新宿でのいたいけな仕事からの仕事の帰りに京王線に乗っていたところ、買ったことに対するリプライを吉田哲人さんから直々にいただいたので、これはしっかりと聴こうと思いながら、帰宅したのであった。たまたま翌日に休めることになったのだが、埼玉県出身の20歳の女子とずっとLINEでトークをしていたので(キモい)、実際に聴くのがチト(河内)遅くなってしまったのだが、やっぱり良いな、好きだなと感じた次第である。
そういえば、これは感想をTwitterに数十分だけ上げていたのだが、吉田哲人さんといえば3ヶ月ほど前に公開された、れいちも「愛の武器よ!」という曲が素晴らしすぎて、今年上半期に聴いたうちの一番というぐらいに気に入っているのだが、あの日は神保町の丸香という店の讃岐うどんを食べていて、四国地方最高、という気分になっていた。ちなみに高円寺の中華そばJACという店で食べた徳島ラーメンも最高で、また食べに行きたいと思いいま検索したところ閉店してしまったということで悲しい気分になった。
それはまあ良いのだが、私が吉田哲人さんを知ったきっかけというのが、札幌出身のオーガニックガールズユニットと当時は名乗っていたWHY@DOLLの「菫アイオライト」という曲であり、その次のシングルのカップリングに収録された「ラブ・ストーリーは週末に」を私はしばしば史上最も好きな曲だと言ったり言わなかったりもするわけだが、このWHY@DOLLというユニットは一昨年の11月に惜しまれながら活動を終了し、メンバーは札幌に帰っている。この時に私はいつかまた会えるだろうという確信がなぜか強烈にある、ということをごく限られた方々には言っていたとは思うのだが、特に根拠があったわけではなく、単に直感の域を出てはいなかった。その時点で私はライブにまったく行けていなかったのでまったく何を言っているのだという感じではあったのだが、横浜のリリースイベントに行って、かぐや姫の感想を伝えた時にいただいたNeo New Musicのトートバッグはいまだに使いまくっている(昨日も新宿ミロードでの仕事に持って行っていた)ので、とても助かっている。
それで、来月には一日限りの再結成ライブがあるなどという、いまだに実感がなさすぎて信じてはいない情報があるのだが、よく現実感覚がつかめない状態でいることはいる。なぜなら、私はいわゆるライブアイドルのファンなどということはなく、あのようなペースでライブに足を運んだり特典会なるものに参加するのは後にも先にもあれっきりで、いまや本当にあれが現実だったのかすらよく分からない状態だからである。しかも、それは実質的に約1年間だけのことであった。しかし、もしもあれが現実ではなかったとすれば、おそらく吉田哲人さんのことを知らなかったのであり、今回、この新曲を聴くこともなかった可能性はひじょうに高い。
それで、「光の惑星/小さな手のひら」のうち、「小さな手のひら」は昨年、ドネーションCD的なものですでに入手していて、このシングルに収録されているのは別バージョンであるようなのだが、いまのところまだ聴けていないのでこれについては定かではない。しかし。とても素晴らしい曲であり、WHY@DOLLの浦谷はるなさんが作詞をしている。
今回、「光の惑星」がCD-Rに収録されていたので、それをiTunesにインポートして、iPhoneで聴いている状態なのだが、この曲は元々はバーチャルアイドルグループのようなものに提供されたのだったと思う。その時点もやはり良い曲だと感じていたのだが、このバーチャルアイドル的なものに対する素養というのが私自身にほとんど無いというか皆無に等しいため、ろくにまともな感想すら持つことができず、ひじょうにいかんともしがたい気分にはなっていたのだった。
WHY@DOLLでは主にいわゆるディスコファンク的だったりシティ・ポップ的だったりする曲の方が特に好きだったのだが、必ずしもそうとはいえない「ふたりで生きてゆければ」などが時間が経つごとに好きになっていき、昨年末などはサニーデイ・サービスの「心に雲を持つ少年」と続けて某リモートオフィスパーティー的なものではかけて悦に入ったりもしていたものである。ポップでキャッチーなポップスを志向しているようでありながら、根っこの部分ではインディー・ポップなのではないだろうか、というようなその辺りに良さを感じていたのだ。
音楽的にはそれに近いような印象も受けるのだが、そこはかとなく漂うエレガントな魅力のようなものがやはりとても良いな、と再認識したのであった。それで、ボーカルなのだが、男らしくゴツゴツしたものではまったくなく、かといって弱々しく繊細でかわいらしいのかというとそれとも違っていて、ナチュラルにソフトでジェントルでエレガントなのだが、しっかりとしたコアが感じられるというか、とにかくそういうとても良いものである。これには、昔から男性シンガーが女言葉で歌うような音楽を何の違和感もなく聴いていたとか、女性ものの洋服もこだわりなく着ることがあった、というようなエピソードと関係があるのかと思ったり思わなかったりもするものである。
それで、メロディーとかもそうなのだが、リズムとか間奏のオルガンソロのようなところとか、トータルして自分が好きなポップ・ミュージックの良い部分を抽出してアップデートしているようなところが感じられるな、などとやはり思ったりするのだが、これはほとんどかつてWHY@DOLLに感じていたことそのままでもあり、ある程度は幻影を追いかけているのかな、というように思えたりもする。性別も年代もジャンルも違っているのかもしれないが、そのスピリッツというのかエッセンスにあり、私が主に聴いたり感じたりしているところには共通点があるというか、かなり近いのかなというような印象を新たにした。
あとは、やはりフィジカルの良さというものを大切にされているというか、ジャケットにもいろいろなアイデアが生かされているような気はするのだが、英語で書かれた文字などもくまなく見ていくと、WHY@DOLLのメンバーの名前がさり気なく入っていたりもして、この辺りも良いものだなと感じさせられる。
それと、裏ジャケットの細かい文字を読んでいくと、この曲はデビューアルバムに収録されるというようなことが英語で書かれていたりもするのだが、このアルバムというのが本当に楽しみであり、このようなご時世において、ベーシックに絶望はしているとしても、未来に楽しみにできる何かがあるということはとてもありがたいことだなと思わされもするのであった。
CD-Rに直筆サインが入っていたことはミーハー的にとてもうれしいことではあったのだが、シリアルナンバー的なものがTETTO会(なるZ回的な)ものの会員番号にあたるという噂もあり、私の場合は032番だったのでおニャン子クラブでいうところの山本スーザン久美子にあたるということで、満更でもないなと感じた。
