ひびが入ったお気に入り陶器を探し当てる | 八ヶ岳ゆるふわ日記

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八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

 今から2年前の2021年のことだが、「八ヶ岳クラフト市」で美濃焼の楕円皿4枚を衝動買いした。

 

(当時の写真 水玉2枚、短冊模様2枚を購入)

 

 形状と紋様が気に入って買ったのだが、これがすこぶる使い勝手がよい。

 カレー、パスタ、グラタン、餃子、煮魚からぼっちメシの麻婆豆腐、肉ともやしの炒め物となにを盛りつけてもちょうどいい感じ。

 

(残ったらこのまま冷蔵庫にしまえるのもありがたい 2023年8月撮影)

 

 あまりに便利なものだからこの2年というもの毎日のように使っていたところ、とうとう1枚(短冊模様のヤツ)にうっすらヒビが入ってしまった。

 今はなんとか命脈を保っているが、いずれ割れてしまうだろう。

 

 さあ困った。

 もともとお客さんが来た時にパスタなどを楽しむために買ったものだから、3枚というのはいかにも中途半端だ。もう1枚、できれば予備も含めて2枚買い足したい。

 

 ところが窯元の屋号が2年前の写真では「夢貴庵」、または「夢青庵」という風に見えるのだが、ググってみても全くヒットしない。

「美濃焼オーバル皿」でAmazonにあたってみてもむなしいばかり。

 結局買い足しはあきらめることになった。

 

 そんなことをすっかり忘れたところに、先日偶々メルカリを見る機会があった。

 そういえばと皿のことを思い出して、未練とは思いつつ「美濃焼オーバル皿」で検索すると、なんと同じ商品にヒットしたのである。

 

(水玉が大きくなって数も増えているが同じモノでしょ)

 

 やった~。

 出品者によると1枚3100円(結構高いね)だが、「複数枚購入の場合は値引きします」とのこと。

「スミマセン、2枚購入時、3枚購入時の値段を教えてください」

とメッセージを送ったのだが返事がない。2度ほど催促してみたのだがやはり梨のつぶてであった。

 

 縁がないというのはこういうものなのだろう。

 こんな不誠実なオヤジ(たぶんオヤジだろ)から買うのも業腹なので、再び断念することになった。

 

 それから3日が経ち、1週間が過ぎると次第に未練が湧いてきた。

 この蜘蛛の糸よりも細いつながりを断ち切ると、おそらく件の皿は永遠に手に入らないだろう。

 ハインリッヒ・シュリーマンがトロイの遺跡を見つけるまでに、あるいはハワード・カーターが王家の谷でツタンカーメンの墳墓を発見するまでにどれだけの歳月とカネを要したことか。

 それに比べれば私の努力や絶望は屁のようなものではないか。

 

(ハインリッヒ・シュリーマン(1822~1890)ドイツの実業家 ホメロスの叙事詩「イリアス」をもとにトロイの遺跡を発掘 ちょうど150年前の1873年に遺跡を発見)

 

(ハワード・カーター(1874~1939)英国の考古学者 今から100年前の1922年ほとんど手つかずのツタンカーメンの墳墓を発見 写真はツタンカーメンのミイラと対面するカーター博士)

 

 意を決した私がポチると、間髪をいれず出品者からコメントが帰ってきた。

「お買い上げありがとうございます。現在在庫がなく窯元が新たに作成することになりますので発送までに7日~10日ほどかかります」

「承知しました。新たに作成するなら2枚買いたいのですが価格はどうなりますか」

「大して値引きできませんが、1枚3000円とさせていただきます」

 

 う~む。在庫がないもんだからヒヤカシの客を相手にするのが億劫だったとみえる。

「同じ窯元の皿で短冊模様のヤツがあるはずです。できればそっちが欲しいのです」

「了解しました。窯元に問い合わせますのでしばらくお待ちください」

 

 翌日出品者から連絡があった。短冊模様はもうこさえておらず、水玉のみとのこと。

 じゃあ水玉でお願いします、と返信すると、

「では最初の購入をキャンセルしてください。大泉湧太郎様(←メルカリのハンドルネーム)専用のページを建てますから、そこから改めて購入ください」とのこと。

 

(メルカリでよく見かける専用ページ、ってこういうことだったのね)

 

 一連のやりとりから2週間ほど経って、ついに皿が届いた。

 

(窯元は「泰青庵」だった)

 

(以前のものと比べると水玉が明らかにデカくなっててちょっとポップな感じ) 

 

 あたかも12月26日はシュリーマンの命日。

 偉大な先人たちの努力にはもとより及ぶべくもないが、欠けていたピースが埋まった時のような、なんともいえない充足感。年末のうれしい出来事である。