人の輪がつながるその先は・・・ | 八ヶ岳ゆるふわ日記

八ヶ岳ゆるふわ日記

八ヶ岳南麓大泉と東京を行ったり来たりの毎日。日々のよしなしごとを綴ります。

 先日メロン友(←「犬トモ」とか「飲みトモ」よりこっちの方が格上の称号ぽい)のAさんご夫妻と八ヶ岳南麓屈指の焼鳥屋「心粋」を訪れた時のこと。

 なんでそういう話になったのかは失念したが、奥様の弟さんが〇〇省の元官僚で要職に就いていたという話を伺った。

 

(「心粋」の鉄板餃子はまさに鉄板の旨さ 私は焼き鳥よりこっちが目当て)

 

 そういえば私の高校時代の友人も弟さんと同じ〇〇省でした、と紹介したのは中学高校時代の同級生S君である。

 

 S君は、当時から性格が歪みに歪んでいた私にとって数少ない友人であった。

 性格温厚、明朗快活、真面目で誰からも好かれるS君が何故こんなクソガキに目をかけてくれたのかいまだに理解に苦しむが、同君のお母様ともどもいつも私のことを心配してくれた。

(さんざんお世話になったお母様が亡くなられて4年経つ)

 

 いつ頃からか記憶が曖昧だが、放課後に学校からほど近いS君宅に転がりこんで晩メシを食わせてもらった上にそのまま宿泊、翌朝はお母様から「これでお昼を食べてね」と昼食代までもらって登校することもしばしば。

  その頃S家の家業は相当切迫していたようで、日頃S君の弁当はウインナ1本と梅干1個なんてことがしょっちゅうだったから私のメシ代だってバカにならなかったはずだ。

 

(毛利家家紋「一文字三星」 これを「一文字一星」にしたものがS君の弁当 目を盗んでウインナを横取りすると温厚なS君も烈火のごとく怒ったっけ)

 

 高校時代の私はドロップアウト寸前で、授業をサボっては駅前の雀球屋(パチンコ台で麻雀の役をこさえるゲーム 役に応じてコインをもらえる)に入り浸っていた。

 とある級友が「自宅の和ダンスの鍵が雀球台のコイン払い出し穴(台の上部にあって鍵を差しこんでひねるとコインが出てくる)にピッタリ」という校史に残る大発見をしたおかげでタネ銭となるコインには事欠かなかったのである。

 

(パチンコ玉が入ると牌がめくれる仕組み 役満の四暗刻は雀球では出来やすい役なのでコインは2枚か3枚だった 「下町っこの上の空」様のブログから借りました

 

 セブンスター(ハイライトは当時校内で「不良のタバコ」とみなされていた)やらお菓子やらを抱えて意気揚々と教室に戻るとS君はいつも悲しそうな表情で私を見た。

 そのうちなんだか戦利品がとても薄汚いものに思えてきて雀球屋から次第に足が遠のいた。今日私が多少なりともヒトがましい日々を送っているのもS君の薫陶の賜物である。

 

 長じてS君は国家公務員試験に合格、第一希望の通産省(現経済産業省)だか運輸省(現国土交通省)だかの内定を見事ゲットし、すべりどめの〇〇省入省を断りに行った。

 その後S君に会うとなんと断りにいったはずの〇〇省に入省する、というではないか。

 聞けば、

「僕は〇〇省のこういうやり方には反対です。そんな役所では働く気になれません」

「そうか。君が反対ならそんなやり方はなくしてしまえばいいんだ。これからの〇〇省を作るのは君なんだ」

と言われてすっかり感激、そのまま入省の誓約書を提出したのだという。

 

 あ~あ、採用担当の口車に乗っかっちゃって。名にしおう減点主義のお役所のこと、いきなり省の方針にたてついたSは出世はできないだろう。

 私は純粋ではあるが世間知らずの友人の不幸に心から同情したものだが、あにはからんや、その後S君は省内のトップクラスに昇りつめたのである。

 

 翌日AさんからLINEがきた。

「弟はSさんと同期入省でした」

「ギョギョ」

「人の輪はどこかでつながるんですね。・・・悪い事はできませんね」

 

 確かに。これはまずい。

 ことによると私の「思い出すだけでも転げまわりたくなるほど恥ずかしい」黒歴史がS→弟さん→Aさんと伝播され、やがて八ヶ岳南麓全域に叢雲のように広がるかもしれない。

「しっ、来たよ本人が」

「あいつか~、ビリヤード屋で出来もしないマッセやってラシャ紙破って逃げたヤツ」

「雀球屋で補導されかけてビルの屋上から隣のビルに飛び移ったけどデブってたせいであわや転落死するとこだったってさ」

「文化祭の時なんかさ(あ~恥ずかしい 以下カット)」

 

 私はあわててS君にLINEした。

 勝手に名前を出したことをお詫びするついでに口封じである。

 温厚篤実なS君は奇遇だねえってな様子で、おそらく余計なことは一切口外しなさそうでひと安心。

 

 それよりうれしいのはこれがきっかけとなってS君がこの秋に八ヶ岳南麓に遊びにきてくれるというのである。それも単身でだ。

 何十年も前に家業を盛り返したお父上が生前に買った土地が南麓にあるというから、その様子見もかねての単独行だろう。

 

 やった~。

 あこがれの「オーベルジュ清里」のコテージに二人で泊まっちゃおうか。

 S君と枕を並べるのはかれこれ50年ぶり。星降る夜にたき火で暖まりながら来し方行く末をしみじみ語り合う。なんて素敵なことだろう。

 

 人の輪のつながりは、旧悪が露見することを差し引いてもなお余りある喜びをもたらしてくれそうだ。

 

(宿泊費が高い・・・まあその時考えればいいや)