(高田馬場個室居酒屋「あげ屋」生ガキの安さにご注目)
会社時代の同僚Aさんと久しぶりに高田馬場で飲むことになった。Aさんと飲むのはかれこれ2年ぶり、高田馬場で飲むのもそれくらいぶりだろう。
高田馬場は基本が早稲田大学の学生街である。通りには学生が溢れ、店にも学生クンの集団がいたりと、なんとも騒々しい。
ところがそんな喧騒に満ち満ちた街のあちらこちらにぽつねんと大人の良店が混じっているのが高田馬場の素敵なところである。
(30年来お世話になっている「まずい魚 青柳」とゲテモノとジビエの店「米とサーカス」の記事)
現役で働いている人との二人飲みはけっこうややこしい。
相方に出がけに緊急案件が入ったりして30分、1時間待たされるなんてことはよくあることだから、店を予約して先に入店したりすると相方の到着を待っている間にべろべろになってしまう。
そんなわけで待ち合わせ時間には現地でウロウロし、会社を出た時点で連絡をもらってからそれに合わせて店を決めるというのが安全なやり方である。
この日Aさんが到着するまでおよそ30分。いい機会なので新たな店を物色することにし、雑踏をウロウロしていると「栃尾揚げ」の看板が目についた。
店の名はずばり「あげ屋」。
私の守護神は稲荷神だから(ホントか)、私も筋金入りの油揚げ好き。これは入ってみる価値がありそうだ。
(待ってる間にビールをグビリ つきだしも栃尾揚げというのが好感度が高い)
挨拶もそこそこに飲み、食い始める。
私はハレの日だから(←ハレが多いね)日本酒「作(ざく)」で行くことに。
まずは「長崎ゴマサバ」。
しょせん学生君向けの居酒屋でしょ、と見くびっていたが大間違い。実に旨い。
(あまりに美味なのでもう一皿追加した)
(生ガキ1個99円なり(お一人2個まで)これも外せません)
Aさんもすこぶるお元気そうな様子だが、身体のあちこちに不具合が出始めているそうで、シニア飲みの定番「健康ネタ」でひとしきり盛り上がった。
(ゴマサバがすこぶる旨かったので「刺身盛り合わせ」も)
6月に会社時代の後輩が急死したのを教えてくれたのはAさんだが、その後社内でめぼしい(?)人は死んでいないらしい。
醤油味のものばかりだとバター味のものが食いたくなるのが人情というもの。
口直しにおすすめの海鮮グラタンを食ってみた。
(「あげ屋」には系列店「うに小屋」というのもあってどうやら海鮮には強い模様)
(生アジフライ「アジフライソース派」の私としてはソースがないのが残念 これもいちおう揚げ物だが今日はハレの日だから)
Aさんのお父上は85歳、ここんとこ終活に熱心になっていらっしゃるとのこと。
「棺桶をどう出すか、なんて悩んでます」
「病院で死んだら焼くまで葬儀屋にガラを預けておけばいいんだよ。家で祭壇こさえたりする手間もはぶけるし」
「なるほど。二階で亡くなって階段が狭くて棺桶出せないなんてこともあるでしょうね」
「そんな時は冷蔵庫やソファなんかと同じように窓から吊るすんだろうなあ」
「あまり見たことないですね」
「そりゃ冷蔵庫は10年に1回入れ替えが出るけど、遺体は80年に1回だからね」
「なるほど。遺体をうっかり途中で落としたりしたら大騒動ですね」
「大騒動になるのは冷蔵庫の方だよ~。巻き添え死とかもありそうだし、壊れた冷蔵庫代を誰が負担するかでもめるだろうし。その点遺体は落ちても誰も文句言わないよ、本人も死んでるからサ」
「なるほど~」
そんなバカ話をしていると本日のメイン「栃尾揚げ」がやってきた。
熱々で旨いが、味が濃い。私としてはネギと生姜でさっぱりと食いたいところだ。
(左から 焦がし味噌、しそチーズ、おろしネギ)
魚系ばかりだと肉が欲しくなるのが人情というもの。
箸休めに「和牛赤身ポン酢」を追加した。
(肉系も強い模様)
「もぐもぐ。社長はどうしてんの」
「パクパク。社長はお元気で、〇〇で××です」
「でかちん(←仙台にいる共通の同僚)は」
「むしゃむしゃ。元気です(人が食ってる時にあれこれ聞くなよ~)」
肉系を口にすると再び海鮮系が食いたくなるのが人情というもの。
「イカゴロ焼き」というのを追加した。
(イカのくちばしを醤油とみりんで炙ったようなヤツ、と思っていたが鍋仕立てのものだった)
どうやら若者の街高田馬場では味は濃いめのようだ。
そうなると最後にさっぱりしたものを食いたくなるのが人情というもの。
仲良く「伊豆わさびめし」にするあたり、この街では二人とも高齢者なのである。
(ごちそうさまでした)
現役世代におつきあいいただくのはナンなのだが、Aさんのおかげで楽しい一夜を過ごすことができた。