6.お気持ちな問題
「まあ、今回は<埋め合わせ>だから あれだとしても…」
準備された服を着終わった亜夜さんは、姿見の前に立ちました。
「別にアーさんにこんな事させなくても寒奈家には、那世ちゃんのそっくりさんが ふたりもいるじゃん」
ベットに腰掛けていた那世さんが、唇を尖らせます。
「沙世っちと汰世っちには頼みたくない」
全身の様子を確認していた鏡から、亜夜さんは目を離しました。
「…何で?」
「だって、あのふたりの『なんで、こんな服買ったの?』オーラを見たくないし」
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ふと何を思い付いた亜夜さんの視線が、室内を彷徨います。
「あれ、クローゼットだよね?」
頷く那世さん。
何歩かで部屋を横切った亜世さんは、指を扉の取っ手に向けました。
目が合った那世さんが、ひと呼吸おいて頷きます。
「じゃあ、開けちゃうね☆」
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「こっちが、お揃い服のゾーン?」
背後に近づく気配を感じながら、亜世さんは呟きました。
「じゃあこっちが、自分ひとり用の服達だね」
右隣で頷く那世さん。
亜世さんは、その顔を横目で見ます。
「この2つ、随分イメージが違う服だねぇ」
「─ お揃いで用だと、僕の意見はあまり聞いてもらえない」
「まあ、そうかもだね」
那世さんは、頬を膨らませました。
「── 僕のセンスが悪いって、言いたいのかな?」
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「そうじゃなくてぇ」
亜世さんの右手の人差し指が、自分が着ている服に向けられます。
「例えばこの服なら、那世ちゃんには似合うかもだけど、アーさんには似合わない感じな服だって事」
「…僕と亜夜っち、同じ容姿じゃん」
答えを待つ那世さん。
言葉を探していた亜夜さんは、頭を軽く左に傾けました。
「まあ── <お気持ちな問題>かもね」
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「例えばぁ」
亜夜さんの右手の人差し指が、自分の鼻の頭を突付き始めます。
「うちの香夜ちゃんの選ぶ服、那世ちゃんはどう思う?」
左隣の動きが目に入ったた那世さん。
自分も真似をすべく、鼻の頭に右手の人差し指の先を当てました。
「可愛いとは思うけど、着たくないかな」
「何で?」
「…香夜っちには似合うと思うけど、僕には可愛すぎる」
「そう言う事☆」
「……なるほど」