ある農村で野菜コンテストが開かれました

その村でその年に収穫された野菜の中で

一番キレイでおいしそうな野菜に

グランプリが与えられます


最初の年 優勝を勝ち取ったのは

Aさんの大根でした

Aさんの畑では虫が発生する前に

何度も農薬をまいているので

収穫される野菜は虫食いの跡などありません


また化学肥料を大量にまいているので

葉っぱも青々と広がっています

そのコンテストでは

味までは評価されないので

味の方はどうかわかりませんが

とにかく見栄えがいいということで

Aさんはグランプリに輝きました


その次の年も その次の年も

優勝したのはAさんでした

あいかわらずAさんの畑では

農薬や化学肥料をたくさん使っていたので

見栄えのいい野菜ができるのです


ところがある年から

野菜コンテストにAさんが現れなくなりました

どうしたんだろう?

とみんながウワサしました


じつはAさんの畑からは

ある年からさっぱり野菜が

採れなくなってしまったのです

化学肥料をまいても葉っぱが

大きくなるばかりで肝心な野菜は

ちっとも育ちません


農薬と化学肥料を与えすぎて

土がダメになってしまったのです

それでAさんは農家をやめてしまったのです


次の年 野菜コンテストで優勝したのは

Bさんの大根でした

じつはBさんはAさんが優勝した第1回目から

このコンテストに参加していたのですが

いつも評価はビリでした


Bさんの畑は農薬を使っていないので

葉っぱは虫食いの跡だらけだし

化学肥料を使っていないので

大きさでもなんだか見劣りしていたのです


でも今年のBさんの野菜は違いました

虫食いの跡は少しだけあるものの

葉っぱはピカピカ輝いて

いかにもおいしそうです

大きさだってほかの畑の野菜と

見劣りしません


なにより評価されたのは

その香りです

Bさんの野菜からは野菜のいい香りが

プンプンと漂っているのです


それまでビリだったBさんの野菜が

突然優勝したので

ほかの参加者たちはいろいろな

ウワサをしました


本当はよその畑から持ってきた

野菜なんじゃないか?

という人もいました


でもその野菜は確かにBさんの畑で

採れた野菜です

Bさんは化学肥料や農薬を使わない代わりに

毎年 土の中にたくさんの枯葉や牛フンを

混ぜ込んでいました


その作業はとても大変だったけど

少しずつ土は成長して

野菜が育つための最高の土壌に

変わっていったのです


そしてその年以来Bさんの野菜は

毎年高い評価を受けました

今ではBさんは村中の農家の

尊敬を集めています


おいしい野菜や果物を作るために

一番大切なものは何か?


その答えは

土なのだそうです


植物を育てるためには

土の中に三要素(チッソ リンサン カリ)

などといった栄養素が多く含まれることが

大切です

また 土の中に空気が十分含まれていることも

根の成長を促進し植物の育成が活性化します


そのため野菜を育てる時は

土を耕してチッソ リンサン カリを

肥料として土に混ぜ込んでいくのです


このチッソ リンサン カリの成分は

化学肥料として簡単に手に入ります

化学肥料は小石のように小さな粒になっていて

機械で畑にまくことができます


ですから 手っ取り早く野菜を

作ろうと思ったら

土に化学肥料をたくさんまけばいいのです

Aさんはこのやり方で野菜を作っていました


しかし ここからが興味深いのですが

買ってきた化学肥料をまいて

野菜を作り続けようとすると

数年のうちに野菜に病気が発生したりして

野菜が採れなくなってしまうのだそうです


アメリカには化学肥料を大量に使っていた

土から塩が吹いて

畑として使えなくなってしまった場所が

たくさんあるといいます


その反対に見栄えはよくないし

いい野菜が採れるまでには時間がかかるけど

土がどんどん豊かになっていく農法があります

それがBさんの行なっていた

有機農業です


Bさんの畑では

化学肥料を使わない代わりに

枯れ葉や牛フンを集めて土の中に

混ぜていました

枯れ葉や牛フンは そのうち腐って分解して

土になります


そしてそれわ毎年続けていくうちに

土のバランスが野菜にとって

理想的なものになっていくのです

森の木がいつまでたっても枯れないのは

枯れ葉や動物のフンや死体が分解して

土になり植物に栄養を与えているからです


有機農業はこれと同じ原理です


それにしても面白いのが

長く使える土を作るには時間がかかる!

ということです


理屈ではチッソ リンサン カリの

バランスが揃えば

それが化学肥料で与えられたものでも

野菜はずっと収穫できるはずです


でも 外から栄養を与えられることに

慣れた土は

そのうち いくらたくさんの栄養を

与えられても

野菜を作るパワーを発揮できなくなるのです


つまり短期間で簡単に栄養を整えた土は

長くはもちません

本当に長く使える土を作るためには

自然のゆっくりとした時間の流れを

活用するしかないのです


この話を聞いた時

人の努力と同じだと思いました


要領が悪くなかなか結果が出ない人も

コツコツと自分の中に実力を備えていけば

時間が成果をもたらしてくれることも

あるでしょう


反対に短期間で楽をして手に入れた成功は

その後持続することは

簡単ではありません


地道な努力を放り投げて

ズルをしたくなった時は

AさんとBさんの話を思い出すといいでしょう


長い時間をかけて培ったものには

簡単に手に入れたものにはない力が

あるものです