森の中に大きな池がありました
ある時その池に風で飛んできた
小さな水草の種が落ちました
種は芽を出し池の上に一枚の
小さな水草が浮かびました

その浮草は一日でニ倍の数になる
繁殖力の強い浮草でした
最初一枚だった浮草は次の日に二枚になり
次の日には四枚になりました
増えていく浮草をジッと見ていた
生き物がいました
池の中にすむ魚たちです

魚たちは少しずつ増えていく浮草を見て
言いました
まずいぞ!毎日浮草が増えていってる!
このままでは池の表面が浮草で
埋まってしまうぞ!
そうしたらオレたちは
窒息してしまうじゃないか!

浮草は大量に発生すると水の中に光が
差しこまなくなります
すると水中の植物が光合成をしなくなるので
水の中の酸素が不足してしまうのです

実際 魚たちは池の上の水草が増えるたびに
少しずつ息苦しくなるのを感じていました
でも池の上にはまだ水面が多く残っています
そのうち対策を練らなくちゃいけないな!
ああ できるだけ早いうちに!

そう言いながら魚たちは
なにもしようとはしませんでした
卵の世話をしたり
自分たちを食べようとする鳥から
逃げまわったり
エサを取ったりすることで
毎日 忙しかったからです
そうしている間にも浮草は
どんどん増えていきます

そろそろ浮草をどうにかしなくちゃ
いけないな!
そうだな!
卵が無事にかえったらカエルたちに
お願いして
水草をよけてもらうことにするか!

そしてある時 とうとう池の水の半分が
水草でおおわれてしまいました
そこで魚たちは浮草の対策を
立てる会議を開き
話し合うことにしました

ある魚がいいました
それで浮草が池の表面をおおってしまうのは
いつなんだい?
ある魚が答えます
明日だよ!

そうです 今 池の半分をおおっている
浮草は明日には倍になって
池の表面すべてをおおってしまうのです
魚たちは大急ぎでカエルに助けを求め
浮草を池の外に出す作業を始めました

でも そんな努力は焼け石に水でした
しばらくして池はすべて浮草でおおわれて
魚たちは全滅してしまいました

この話に出てくる魚たちは
とてもおろかに見えます

もっと早く浮草を処分しておけば
そんな目にあわずにすんだのに
どうして大事な浮草対策を
先延ばしにしていたんだ!
と思う人も多いでしょう

でも私たちも魚のことを笑うことは
できません
なぜなら魚たちのように
急がないけれど大切なことを後回しにして
そんなに大切ではないけれど
急いでやらなければいけないことに
振りまわされている人も
とても多いからです

私たちの生活には
そんなに大切ではないけれど
急いでやらなければいけないことが
本当にたくさんあります

たとえばサラリーマンなら
会社の仕事がそうでしょう
主婦だって家事や学校行事の準備などに
忙しいものです

ある老人は見たいテレビ番組が
たくさんあって
時間が足りないと言っていました
子供たちも友達との約束や塾など
たくさんの予定に追われています

つまり私たちの生活は
大部分が趣味や睡眠などの
自分のやりたいことと
会社の仕事や家事などの
やりたくないけれどやらなければ困るとか
誰かに怒られるようなことで
予定が埋まってしまっています

そのうち時間ができたら
なんて言っていると
いつまでたっても時間はできないのです
そして本当に大切だけれど
そんなに緊急ではないことは
どんどん先延ばしにされているのが
実情なのです

ある男性は朝早くから夜遅くまで
仕事が忙しくて
まだ小さな子供たちと話す時間が
ありませんでした
週末もゴルフや休日出勤があり
子供たちと一緒に遊ぶことができません

自分でもそれではいけないと
思っていたのですが
仕事を頑張るのは家族のためだからと
自分に言い訳をして
家族とはほとんど会話のない生活を
続けていました

そんな男性の子供が
ある時病気になって入院しました
その時も男性は仕事があって見舞いに
行けませんでした
それをきっかけに男性は奥さんから
離婚を突きつけられてしまったのです

その時男性は決心しました
今の自分にとって一番大切なのは
家族と過ごす時間を作ることだ!
一番大切なことから目をそらしてきた自分は
なんておろかなんだろう

そしてその日から
仕事の飲み会は週に一度だけにして
週末も土曜日から日曜日のどちらかは
必ず家族と過ごすようにしました

上司や同僚からは少し反発をくらいましたが
そんなものは家族と過ごす時間の
大切さに比べれば重要ではありません

少し前まで仕事の予定でいっぱいだった
男性の手帳には今
大きな字で
たくさん家族と過ごす時間!
と書かれています

本当に大切なことは
緊急を要するとは限りません
急ぎの用事にまどわされないで
自分にとって本当に大切なことのために
時間を作りましょう

人は毎日の生活に追われるうち
本当に大切なものを
見失うことがよくあります