古本屋は宝の山
古本屋の三百円均一ワゴンで『実践・魔法使いになる方法』という本を見つけた。
常々魔法には憧れていたので、さっそく購入して読んでみた。一つくらいは自分でもやれそうな方法が載っているかもしれない。
なになに……。
「魔術師ギルドに入会する」
「師匠に魔法を授けてもらう」
「呪文が記載された魔法書を読む」
「悪魔(神・精霊)と契約する」
「魔術師と戦って相手の能力を奪う」
「魔術師に呪文を分けてもらう」
「マナフェルニテ樹の実を食べる」
「魔法を使う種族(竜・吸血鬼)などに習う」etc……。
どこにあるというのだ、魔術師ギルドが。っていうか、魔術師や竜なんて見たことないし! マナフェルニテ樹ってなんだよ……。
むなしく逆切れしてから奥付けを見ると、聞いたこともない出版社名とその所在地が記載されていた。発行年月日もサ暦二十八年神白月三日、定価は2500セクレピオなどとなっている。
そういえば、本の中にところどころ言葉遣いがおかしいところがあった。 どうやらこれは別世界から落ちてきて、紛れ込んだ書物らしい。
老舗の古本屋には、時たまそういうことがある。世界を渡る際に勝手に言葉が翻訳されてしまうので、正体が判りにくいのだ。
つまり魔法使いになる夢はおあずけだ。残念。今度は古本屋で別世界の呪文書が見つかるよう祈ろう。