無礼講 | 想像妄想空疎空想うそ日記

無礼講

 幻の銘酒『真・鬼壊し』を手に入れた。せっかくだからみんなで飲もうということで、友人たちを集めて酒盛りを開くことにした。
 だがやって来た呑み仲間十人のうちの三人は、いくら勧めても飲もうとしない。
「俺、鬼壊しはやばいんだよ。かわりにこれ持ってきたから、みんなも味見してくれ」
 そう言って、一升瓶を取り出した。なんと、これまた超入手困難な幻の銘酒『神殺・極(しんさつ・きわみ)』だ。
 すると今度は別の二人が困った表情になった。
「僕は鬼でいいよ。そっちはちょっとね……」と『神殺』には手をつけない。
 奇妙に気まずい空気が流れ始める中、さらに別の一人が言った。
「俺、『魔王退散』は駄目なんだ。滅多に出回らないから助かるけどさ」
 するとさらにもう一人がと告白した。
「俺は『仏殺し』。好奇心でちょっと舐めたら本当にひどかったよ……」
 全員が顔を見合わせて、乾いた笑いを漏らした。
 やがて気の利く誰かが話題を変え、別の安酒と肴を並べて大宴会に突入した。明け方に解散したが、みんな等しく二日酔いになったに違いない。
 しかし十一人集まって鬼三人、神二人、魔王と仏が一人ずつか。人間って意外に少なかったんだなあ。