最近、小説を読むということをやっています。


今まで全然小説なんかを読んでこなかったのですが、ふとした拍子に読みたくなったのです。
元々、自己啓発書なんて類の本はよく読んできましたし、図書館にもよく借りに行ってました(・∀・)
そこで小説もたまには借りてみようかなと思った訳です。


本っていうのは良いことで、これだけデジタル化が進み、色んな紙媒体が電子本に変わっていったりしていますが、それでも本はなくなることはありません。資源を無駄遣いするなっ!とはほとんどの人が思っていないでしょう。


それくらい本というのは重要なツールで、紙をめくる時の感触や、実際に活字になっている文字を見ると文字通り「活きる字」になるのではないかと思っていたりもします(・∀・)




向日葵の咲かない夏

さてさて、今回読んだ小説は「向日葵の咲かない夏」です。養成所に行っている子からのオススメの小説とのことで、小説の面白さを知るためには丁度の良いのかもと思って読んでみました。


以下が主なプロローグです。

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。(Amazonからの引用です)



感想ははっきり言うと、グロテスクと異質という感じでしょうか。
いきなり犬猫の死体の話が出てきたり、性癖的にも行動的にも異端な人が多いのです。

怖い話でしたが、ドキドキ感のある面白い小説でした。
ただ、これは推理を進めていくようなミステリー小説のようでありながら、実際は全く違うファンタジー小説だということです。
どちらかというと両方が混ざっていると言っても良いかも。


以下ネタバレです。※かなり見づらくしてあります、読みやすくするには反転させて読んでください。
↓↓↓

ファンタジーと称したのはいきなりS君が蜘蛛になって現れてくるからです。普通のミステリーは多分、現実に起こりそうなことで推理を進めて行くものですが、自殺したS君はいきなり蜘蛛になって主人公の前に現れてくる辺りが妙に現実離れしています。


また、ミカという妹は3歳という設定ですが、大人過ぎます。読めない文字や、理解できない文字もありながら、理解している単語も多く、その3歳という設定とは程遠い人物です。この辺りも最初に読んだ時は非常に違和感がありました。


実は全部主人公の妄想で、ミカはすでに死んで、主人公の周りで死んだ人は何かに転生しているという話でした。
※実際には本当に生まれ変わっているのではなく、似ている物があったり、行動が似ていたりする動物を生まれ変わったと言っているだけ。


一見して主人公がまともに思えますが、読み進めて行くと非常に強い孤独と猜疑心の塊を持った人物で、気に入らないことがあると、その気に入らないことを回避するためにはどんな手段も厭わないというとても危険な少年なのです。


そのために犠牲になったのはS君、小瀬というお爺さん。
S君は「死んでくれない?」と言ってしまったがために、本当に自殺してしまいます。でも、普通の精神の持ち主だったら、こんなこと言いませんよね。

小瀬さんは本当に殺されてしまいます。その前にS君の飼っていたダイキチという犬も包丁で刺されて殺されています。小瀬さんも主人公と同じように妄想の世界を作り上げる形で生きていた人で、主人公の持っている物語を続けるためには小瀬さんの存在は邪魔だったのかもしれません。


ただ、最後で主人公はこの妄想を終わらせなければと言っています。その物語を終わらせるために自分をも殺そうとしたのかもしれません。

他の人の意見では、これはお父さん・お母さんを殺そうとしたと言っている方もいました。ただ、そうなると最後に起こした火事のシーンに違和感が出てきます。

目の前の景色がぐらぐら揺れだした。
全身の感覚が薄れてきて……
というのは明らかに自分が危険な状態であると思われます。殺そうとするなら、ここまで自分を危険な状態にするのは変な気がします。

ただ、ここのシーンでお父さんとお母さんが変わりに死んでしまっているのは読んで考えれば分かります。
(生まれ変わったと思われる)お父さんの言う「おいおい、ミチオ、大丈夫か?」の問いに「うん、平気。だいぶ治ってきたみたい」とも言っています。怪我や、火傷のことを言っていると思いますが、実際は心の中も再び戻ってきてしまっているのかもしれません。
実際に終わらせたハズの物語を再び再開しています。お父さんもお母さんも死んでしまったハズなのに一週間も経たない内に生まれ変わって主人公の周りにいるということになっています。

最後に「平気だよ」の言葉は少し前のページ(火事のシーン)に出てくる「平気だよ」とはニュアンスが大分違っていると思われます。


火事:(これから自分は死ぬ、物語が終わることに対して)平気だよ
最後:(これから1人だ、これからまた物語が続いてしまうけど)平気だよ

のような違いがあるのかなと思います。


最終的にはまともになったのかわかりませんが、一番最初の「彼女を思い出したりしたら、きっとまた自分が壊れてしまうと、わかっているから」と言っていることから、少し妄想癖は収まり、新しい生まれ変わりも生まれていません。
※ただ、大人になってもトカゲであるミカを彼女と言うくらいですから、どこかしらあれはミカであると信じているのは間違いないでしょう。



子供の妄想癖を上手く利用した非常に上手い本でした。何となく自分にも分かるところがあります。
ミカに違和感を抱きつつも、実際にいるように見せるテクニックは本当に上手です。※同様にお婆さんに対しても。

実際に一回理解した後、もう一度読むことで別の見方ができるようになる本なのは間違いないです。

ただ、あまりにも変な異端者や、犬や猫に対する描写が残酷すぎるので読み手を選ぶでしょう。
それでも最初の推理していくようなドキドキ感、最後のどん底に暗くなるシーンなど、見どころはたくさんあって面白いです。