異次元の壁の隙間部屋 -9ページ目

異次元の壁の隙間部屋

小説やら創作やらを投下するブログです、
オリジナル設定多し、苦手な方はすぐ逃げましょう。
相互リンク大歓迎


 この世界はどこまで巡ればよいのだろうか。
問いは蟠るばかりで還る場所はなく。
指の痛みは未だ消えず、ただただ嘆くばかり。
 皆消えてゆく。
 皆死んでゆく。
 何故、置いて逝く。


「なんで止めなかった」


 言葉は返らぬ。


「……なぜ、あの時」


 言葉は、涸れた。

 風が鳴る、風は啼く。此処から落ちればきっと果てるだろう。
 真を言って死ぬのは、今やもう踏ん切りがつかぬ。
 怖いものは、怖い。


「調子はどうだ?」


 廃ビルの屋上に、人影が一つ増える。
赤い髪のソレは、何時しか殺しかけた神。に、なりそこねた愚物。
なぜか彼も此処にいる。


「最高」

 もちろん、最悪。

「そうか、それは悪かったな」 

 嗤う。哂う。もうそれを咎める気力はない。

「何時まで死体に涙を流し続けるつもりだ?」
「さぁ、でも、涙は枯れないよ」


 涙は枯れたよ。言葉と共に。
あぁまた風が泣く。そんなに泣くなら後押しをしておくれ。


「後押ししようか」

無言で頷く。彼の手を借りるのは非常に不愉快だが、もう、どうでもよくなった。
……空が赤い。
血の色のように、赤い。
あぁ、嫌な色。


 次の呼吸をした時には、既に空の中にいた。





 海に突き落とされて死ぬというのは、想像以上に苦しかったりする。
息が出来ない。エラ呼吸など出来ないもの。
肺が水で満たされて、とうとう呼吸が止まるのか。
耳鳴りが酷い。無音なのに、痛い。
誰も、何も、差し伸べられる手などない。 


「────ッ」


 苦しい。

 苦しさからなのか、涙すら零れる。
 その涙は海に解けて消える。


 あぁ、塩辛いのは、やっぱり辛いや。




 思えば、なぜ彼女は止めたのだろうか。
 生きていて、ほしかったのだろうか。
 あぁ、やっぱり傷つけてしまった。


「イクス、止めないで、やめないで……!」

 あの言葉すら痛かったんだ。
 だって彼女は死んでしまうもの。
 自分が死ぬしかなかったんだよ。
 なぁ。



「ありがとう」

 謝らないでよ。

「イクス、大嫌い」

 そんな言葉、今使わないでおくれよ。

「あたしなんて、大っ嫌い」

 そんな真で逝かないでよ。


 どうして、なぁどうして?
 何故。
 何故止めなかった。
 まだ間に合ったはずなのに。
 止められたはずなのに。



「ごめんなさい」


 
 今は、コレだけしか言えないや。








「貴方は、また死ぬのかい」
「あの時もそうだった。主様は最後の最後で死を選ぶ」
「その選択が間違っていると、否定は出来ないぜ」
「でも、賛成したくもない」


「キミは、今度こそ生きなきゃならないんだよ。今度はキミの番なんだよ?」


 また、彼は死に急ぐのだ。
 悲しみと狂気を引き連れて、
 黄泉路へと至るのだ。





 海に溺れたまま、どれほどの時間がたったか。
もう、分からないや。


「なぁ」


誰もいないミズの空間に問う。


「俺、やっぱりあの子嫌いだよ」
「一緒にいて辛いよ」
「死んだイミ、あんのかな」
「無いよな」
「こんなにも辛いのは、想定外だ」


途切れ途切れ、連ねる言葉は怨恨の言葉か。
それとも、愛憎か。


「……助けて、やれなかったなぁ」

嘆きの声か。

「それなのに」





只の、懺悔か。









「たすけてなんて、言える訳ないよな」








 また、彼は死にました。


 今度は、涙と懺悔を引き連れて


パキンッ 硝子が割れる音がした。


「……残りは、こいつか」


 殺人者は哀れみの瞳でソレを見据える。
遇われてしまった以上、もう放置するわけにも行かない。
合成獣キメラは嘆きの鳴き声を上げ、暴れだす。


「夢すら見れない、哀れな子」


 只一言、呟いた言葉はキメラの墓標となった。




 六旅目、5 贈るは哀憎の宝玉




 重い重い沈黙が場にいる全員へ圧し掛かる。


「とりあえず、さ。どうすりゃいいんだ?」

 炬燵は耐え切れなくなり、言葉を投げかける。
一旦皆は帰還し、奈零沙の元へ戻った。因みに彼女は全治しており、今後に支障はない。
とまぁ、多少の明るい話題があるだけマシだろう。
 任務でもないのに【あんな事】を仕出かしてしまったイクスは、今この場にいない。
水雷いわく、事後処理の責任は全て彼と、同じ場所にいたが暴走を止められなかったトリガーにある為、
かなりの問題をなんとか片付けている。らしい。
 ティダは未だ行方知れず。まぁティダだからね。生きてはいるだろう。



「わ、分かりませんよ……」

現場を見ていない奈零沙は戸惑っている。当たり前の反応だ。

「俺は別に……現状維持でいいかと思ってるけど」

ぼやくように龍牙が言う。彼にとっては、正直仲間が人殺しであろうがなんだろうが関係ないようだ。
因みにエリザベスは『最後に自我戻ってきていたのだから大丈夫だろう』とかなり投げやりだ。


「私がどうこう言う権利はないだろうが、一応意見は言っておこうか」


 水雷が見かねて発言した。
 未だ炬燵と奈零沙は迷っている。異界から来た龍牙の図太さは、多分世界固有のものだから
あまり突っ込まない。彼の世界はシビアなのだ。


「職場的な目線で言えば、ぶっちゃけ『お咎め無し』だ」
「なんでだ?」
「あの研究者共をこれ以上生かしておいても、利益は見出せなかっただろうしな。
ブラックウィングの情報源が一個潰れたが、たかがキチガイ連中、寧ろ潰せてラッキーって感じ」
「俺から見れば、お前らのほうがよっぽどアレなんだけどな」
「こたっちゃん酷い」


 一連の会話は確かに水雷のほうが惨い事を言っている。
だが、情報屋的にはあの暴走は有益だった。それには変わりない。


「イクスさん自身は、どう思っているのでしょうか」
 奈零沙が問う。
「反省はしている。後悔はしていない……って雰囲気だったな」
龍牙が冷静に返答した。どうやら、客観的に観る事が得意なようで。





「……懲りないねぇ、アイツも」

 水雷は、ため息混じりに呟いた。







「おわんねぇええええ!手がたりねぇえええ!」
 トリガーが叫ぶ。事後処理である情報漏洩防止作業中に。
世の中にはチャットや掲示板という便利なツールがあるもんで、かなり怖いもんだ。
偽情報を流したり、ちょっといえない技術で真実を伏せたり、こんな作業、

二度とするかと思えるほど面倒くさい。
 その面倒くささは、無人島生活でちねり米を作るレベルである。


「先輩、口動かす暇あったら手と頭動かしてくれ」

 イクスは淡々と釘をぶっさした。異様なほどに平然としている。

「……分かってるよ」

 トリガーは慣れないパソコンのキーを打ち始める。この機械、

レジスタンス及びブラックウィングの産物だが
かなり使える。カニングシティーではもう普及しているらしい。流石流行の街だわ。


「ところで」
「…………。」

 作業しながら、トリガーは話し出す。

「後悔してないんだよな」

 返答はない。

「それ、本当か?」

 返答は、ない。

「私が持つ勝手なイメージでは、お前が人を斬って、何も思わないとは考えられない」



 ふと、彼の手が止まる。



「お前の勝手なイメージを押し付けるな」

 何処かのカードファイターの迷言を言い放っては、また作業に戻る。
今は何も答えたくないのだ。整理がついていない。




「なぁ、あのパーティは抜けるのか?」
 トリガーはなにとなく聞く。あ、よし、偽情報流れ始めた。ありがたいありがたい。
「…………皆の返答次第」
「賭けるねぇ」



 お前本当に17歳か?と問いたいが、今は関係ないので言わない。
戦争屋経験者というのは聴いたこと在るが、詳細は知らないのだ。
英雄の後継者として、過去に一戦交えたぐらいで、正直あまり情報を持っていない。
情報屋所属の悲しい性なのか、疑う事が常の癖となってしまっている、あぁこの悪癖は直さねば。










「あーあ、断罪じゃないのかー」

 頭に餅を乗っけた風変わりな格好をした少年、リヴセシルはため息をつく。

「断絶って、断絶ってないよー……向こうは向こうでバリバリの仕事人だし……

何コレ、僕を殺す気なの?」



 暫くはクエスト漬けかなーと、少年は嘆く。
錬金術師の街、そういえば、あの聖騎士となった少年の愛剣はこの街で作られたんだっけか。
そこらへんの資料も当たってみようかな。







「ま、精々楽しませてもらうよ」












それらしく、それらしく
(嗤って、泣いて、恨んで、哀れんで)
(人らしく、それらしく)