この世界はどこまで巡ればよいのだろうか。
問いは蟠るばかりで還る場所はなく。
指の痛みは未だ消えず、ただただ嘆くばかり。
皆消えてゆく。
皆死んでゆく。
何故、置いて逝く。
「なんで止めなかった」
言葉は返らぬ。
「……なぜ、あの時」
言葉は、涸れた。
風が鳴る、風は啼く。此処から落ちればきっと果てるだろう。
真を言って死ぬのは、今やもう踏ん切りがつかぬ。
怖いものは、怖い。
「調子はどうだ?」
廃ビルの屋上に、人影が一つ増える。
赤い髪のソレは、何時しか殺しかけた神。に、なりそこねた愚物。
なぜか彼も此処にいる。
「最高」
もちろん、最悪。
「そうか、それは悪かったな」
嗤う。哂う。もうそれを咎める気力はない。
「何時まで死体に涙を流し続けるつもりだ?」
「さぁ、でも、涙は枯れないよ」
涙は枯れたよ。言葉と共に。
あぁまた風が泣く。そんなに泣くなら後押しをしておくれ。
「後押ししようか」
無言で頷く。彼の手を借りるのは非常に不愉快だが、もう、どうでもよくなった。
……空が赤い。
血の色のように、赤い。
あぁ、嫌な色。
次の呼吸をした時には、既に空の中にいた。
*
海に突き落とされて死ぬというのは、想像以上に苦しかったりする。
息が出来ない。エラ呼吸など出来ないもの。
肺が水で満たされて、とうとう呼吸が止まるのか。
耳鳴りが酷い。無音なのに、痛い。
誰も、何も、差し伸べられる手などない。
「────ッ」
苦しい。
苦しさからなのか、涙すら零れる。
その涙は海に解けて消える。
あぁ、塩辛いのは、やっぱり辛いや。
*
思えば、なぜ彼女は止めたのだろうか。
生きていて、ほしかったのだろうか。
あぁ、やっぱり傷つけてしまった。
「イクス、止めないで、やめないで……!」
あの言葉すら痛かったんだ。
だって彼女は死んでしまうもの。
自分が死ぬしかなかったんだよ。
なぁ。
「ありがとう」
謝らないでよ。
「イクス、大嫌い」
そんな言葉、今使わないでおくれよ。
「あたしなんて、大っ嫌い」
そんな真で逝かないでよ。
どうして、なぁどうして?
何故。
何故止めなかった。
まだ間に合ったはずなのに。
止められたはずなのに。
「ごめんなさい」
今は、コレだけしか言えないや。
*
「貴方は、また死ぬのかい」
「あの時もそうだった。主様は最後の最後で死を選ぶ」
「その選択が間違っていると、否定は出来ないぜ」
「でも、賛成したくもない」
「キミは、今度こそ生きなきゃならないんだよ。今度はキミの番なんだよ?」
また、彼は死に急ぐのだ。
悲しみと狂気を引き連れて、
黄泉路へと至るのだ。
*
海に溺れたまま、どれほどの時間がたったか。
もう、分からないや。
「なぁ」
誰もいないミズの空間に問う。
「俺、やっぱりあの子嫌いだよ」
「一緒にいて辛いよ」
「死んだイミ、あんのかな」
「無いよな」
「こんなにも辛いのは、想定外だ」
途切れ途切れ、連ねる言葉は怨恨の言葉か。
それとも、愛憎か。
「……助けて、やれなかったなぁ」
嘆きの声か。
「それなのに」
只の、懺悔か。
「たすけてなんて、言える訳ないよな」
*
また、彼は死にました。
今度は、涙と懺悔を引き連れて