解放と記憶探しの新たな旅 四旅目、5 | 異次元の壁の隙間部屋

異次元の壁の隙間部屋

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どこかのダンジョンらしき遺跡にて、
そこは教会のようで、壁は白く、十字架が多く見られた。
だけど今は誰もおらず、すっかり寂れている。

一歩先を行く少年、黒い髪の彼は、突然独り言のように呟いた。


『オレさ、弟がいたんだ。双子の弟』
『え?』
『竜の襲撃の時に逸れて、それっきりでさ……』

少年は振り向かず、言葉を続ける。

『名前、友輪っていうんだ。意味はオレと同じ、『絆』。
 どこかで見かけてる……わけないよな』


────わりぃ、さっきのは忘れて。
どこか自嘲染みた掠れた笑い声は、無理やり絞り出したようなものだった。




四旅目、5 WorldWord




あの後、当初の目的であるキノコ姫が捕えられた鍵を入手、
それは、後から来た親衛隊どもに投げ渡しておいた。
国の問題は、国の中で終結させる。  それがセオリーってものだろう。
ただ面倒、という言い訳をすればそこまでだが。



帰り道、すっかり静まり返った森をスタスタ進む。
その途中は本当に何もなく、モンスターも出る様子が無かった。
暇すぎて嫌いだが、平和なのも悪くはない。



「なんか色々後味わりいなぁ」
ボソリと友輪は呟いた。
未炎も、ヘロンも、同じ反応。此方も同じだが。

あの少女の言葉が妙に引っかかる、答えを知る者は何処にもいない。
なんかモヤモヤするし、異様なほどに後味が悪い。
というか色々と思い出したいのに思い出せないのが、やけにむかつく。
正直、友輪に会ったときにふと思い出した「アイツ」というのも
誰だか思い出せない。相乗効果でハラワタ捩じり切れそうなくらい……というほどではないが
とにかく腹が立った、むかついた。どうしてくれようか。


「……あれ? ヘロンどうしたの?」
未炎がヘロンに聞く。
だか彼は問いに答えず、草むらへすぐ飛び込む。
なんだなんだと、草むらを覗いてみたら……。
「人!? おい大丈夫か!!」

黒いコートのような服、赤と黒のボーダー。相当ボロボロだが、かなりの美青年。
コートについているフードから見えるのは金色の髪、なぜか右目に眼帯を付けている。
冒険者だろうか? 武器は見当たらない、アイテムバッグにしまってあるのか、
それとも元々ないのか。そんなヤツがそこにいた。
龍牙が倒れていた青年を助け起こすと、青年は少し呻き、気を失ってしまった。



「い、いったん宿まで運ぼうぜ。だれか帰還の書もってるか?」
炬燵が聞くと、友輪がすぐにアイテムバッグから紙を取り出した。
それには難解な術式が描かれていて、これを地面に叩き付けたりして衝撃を与えると
魔法が発動して、瞬時に近くの街へ戻ることができる。というシロモノ。
情報屋でのゴリ押し修行の際は、わけあって所持が禁止されていたが、任務ではよくお世話になっている。
本来は相当堅苦しい名称なのだが、冒険者達はどうもそれが嫌で、それを差す略名のようなものが創られた。
それが、『帰還の書』。マナ(魔法を使うための精神力)を扱える冒険者のみが、使用できるものだ。



友輪は慌ててそれを地面に叩き付けると、橙色をした魔法陣が浮かび上がる。
移動魔法の特殊な円陣だ。
さぁ飛び込むぞ、という時に龍牙が声を上げた。


「わるい……代わりに背負ってくれ……」

体力ねぇなぁ……とぼやいたら、お前は後衛だったから体力消耗してないだろと
間髪いれず帰ってきた、龍牙も中々ツッコミが鋭い。いやそういう風に歪んだのか。そうなのか。
仕方なく青年を背負うと、俺等は魔法陣の中に飛び込んだ。




**




「(最悪だ……)」
そう、青年は心の中で呟いた。
時間は遡ること数時間前、イクスや友輪たちがドレイク達と戦い始めたあたりであろうか。
青年はそんな大乱闘が起きていることも知らず、怪我を負いすぎた体を無理やり動かしていた。


とある組織の追手によって負わされた傷は、相当重い。
今、右腕が使えない彼の現状。回復手段は奪われている。
彼の摂理では、回復の魔法は右腕(正確には右手)でないと扱えないのだ。



がさり、音がする。




人は移動する際、必ず音を立てる。音を立てずに移動することが不可能な生き物だから。
青年はまだ動く左腕で空中に何かを描き、言葉を発した。

「魔鎖─ロングリングチェーン─」

描き出された何かは物体と化し、黒い金属の輪が連なった鎖となる。
どういう訳か、それは重力に反して空中に浮き、計三本の鎖が現れた。
刹那、ローブを身にまとった者が二体現れる。
その状況を見、無理矢理作った笑みで、鎖を振るう。



刺殺音が鳴り、一瞬でカタが付く。
つまらない、だが死にそうだ。いろんな意味で。

「(所詮、俺も化け物か)」



その場から少し離れた草むらで、意識はバチン途切れてしまった。
もう限界だ、眠らせろ。そう数秒前に願ったことはすぐに成就されてしまった。




**






目覚めると、そこは宿屋だった。
まず飛び込んできたのは木造らしき天井、その次に吊り下げられたランプ。
俺は、簡素なベッドに寝かされていた。
あのあと、誰かに拾われたのだろう。傷も少しだが痛みが引いていた。



「あ、起きた! 生きてたよこの人!」

少女──未炎の声が聞こえる。というか本気で死に掛けていたのか?
そして足音がし、俺はそれが此処に辿り着く前に起き上がる。
視界の状態からして、眼帯は取られていないらしい。よかった。



やってきたのは龍牙、友輪、イクシオン、炬燵にヘロンが一匹。

どこぞのボスモンスターがいるというのに、驚かないのは不自然だろうか?
でも演技は自分の苦手分野なので、やめておく。
「おおよかった、死んでたらどうしようかと思ってた」
「失礼にもほどがあるぞお前」
始めに言葉を発した少年のセリフを流し、それに突っ込んだ青年を見た。
ああ、此処にいた。相変わらずだ。
安堵の笑みを何とか押し殺し、こちらにセリフが周って来るのを待った。



「傷は大丈夫か?」
炬燵が聞く。
「あぁ、痛みもだいぶ引いたし……助かった」
自分は素直に答える。
自身の目的がどうであれ、助けられたのは事実だ。
『このパターン』だって初めてだし、今回ならうまくいくかもしれない。



「そっか、イクスの調合した薬のおかげだな」
「え?」
え、ヤツ採取家と錬金術師のスキル持ちだったのか。
イメージ的に採掘師とかの感じだが、意外だ。
「おかげで薬草のストックが尽きたがな」
「結果良ければすべてよしってことで」
友輪、お前は知らないだけだ。採取家の苦労を。
此方もこちらで苦労人らしい、金銭面で。お疲れ様っす。



「あーその、いろいろ迷惑かけたな、すまん」
「別に謝るなって」
「そう、か。そのありがとうな。えーと……」



そういえば自己紹介してなかったな、と彼は言う。
正直彼らの名前はとうの昔に知っていたのだが、初対面のふりをした。
その後、自分の名前を名乗る番がやってくる。
名前、あーどうするか。この前は偽名を名乗ったが今回はどうするか。



「……ライ、『ライ・ディルカディア』。一応だが流派はパラディンだ」
四次転職の流派名をだしたら、意外と驚かれた。

「なにがあったんだ?」
友輪が戸惑いつつ聞いてきた。四次転職してる人が
何をどーやったらあんな大けがを負うんだ、とでも思っているのだろう。

「ちょっとわけわからん連中にフルボッコにされた、ブラックウィングだったけかな」
ホントは違うけど、任務遂行のためだ、しかたない。
「なんだって!!ヤツらどこに行った!」
炬燵は相当真剣な声で問い詰めてくる。怖い。
何処へ行ったと言われても、知らない。




「すまん、そこまでは分からない……ただ」




混乱させろ、シナリオから脱線させるように。


「ただ、奴らが聞いてきたんだ。『狂戦者はどこか』と」
「『狂戦者』? なんだそれ」





すぐ近くにいるだろうに、まあ本人が言いたくないみたいだから仕方ないだろうけど。
イクスは手を顎に当て、何かを考えている。


「狂戦者……心当たりはあるか?」
なんとなくだろう、イクスは問う。
ちょっとカラかってみようか?
「『いいえ』」
「まじで?」

お前も行ける口か。
ああそうですとも!



「あのーチョット待って。いま『いいえ』っていったよな?何で『はい』になってんだ?」
炬燵は当然の疑問を投げかける。
だろうなぁ、これは中々知らないネタだもんな。



「『はい』が『いいえ』、『いいえ』が『はい』。ムーンサイドの約束」
「無意味な狂気が怖いな、あれは」

なかなかやりこんでいる模様、こちらもだが。
こうなったらとっても大変なことになりそうなので、会話を切り替える。




「あぁそうだ、ちょっと質問いいか」
「なんだ?」














「記憶探しの具合はどう? 『ローディ・トラヴェラ』」


















掻き回せ、全てが狂うくらいに
(任務、クエスト?いや違う)
(これは世界の意思、世界の言ノ葉─ワールドワード─)












*あとがき*
次話でいろいろ過去説明。
オリキャラのライ登場、説明役だぜ。
いろいろ楽しんでいこうヒャッハーなヤツだけど、なんか暗いぜ。なんでだ。