言語聴覚士「けつ」の伝えたい話 -4ページ目

言語聴覚士「けつ」の伝えたい話

言語聴覚士として病院で働いている自称「けつ」が、仕事や日常生活で感じるちょっとした気づきや考えを綴ります。とくに、経験の少ない言語聴覚士を含むコメディカルや学生に聞いてもらえるとうれしいな。

ブログは続けて書かなきゃ~と思いながら、Facebookとは違い、ゆっくり書きたいとも思ったりするから…と、言い訳から。

STにとって出勤前夜(厳密に言うと休み中もですが…)はなかなか寝付きが悪いものだったりします…。なぜでしょう?それは、休み明けの患者カルテをみる緊張感だったりするんです。摂食嚥下障害の患者さんは、休みの間は看護師や介護士、または家族さんに食事の介助や対応をしてもらうこともある。もちろん、STのみで対応した方が良いと思う場合は、医師に確認して、食事を止めてもらう場合もある。

これまで6カ所の病院で休み明けを経験してきた。その状況は…みなさんの想像はどうでしょうか?特に週末や祝日、連休では、病棟の体制も週末、祝日、連休体制となるわけで、ようはひと言で言えば、人手が足りない。結果は…。座らせない、姿勢調整方法を守れない、入れ歯を入れない、外さない、口腔ケア不十分、吸痰不十分、声かけなど刺激不十分…などなど。決して文句じゃないんです。もちろん、STが完璧に申し送れているかと言えば、そうでないこともあるかと。ただ、休み明けに所謂、“ 崩れてる ” 経験があまりにも多いきがする。これが今の医療現場の実際でもある…。

だから、我々STは個々の患者さんに対してはもちろんのこと、病院全体や病棟に対して、もっともっと対策を考えたり、啓蒙したりするひつようがあるのだと思う。またブログでも触れたいが、認知症状を伴う患者さんが増えてきているのも現状である。だからこそ、“ 人手が足りない ” を理由にする医療であってはいけないと思う。

明日は月曜日。日曜日休みをあけたST部門の全担当患者さんが、先週からの継続性をもたせたリハビリの好スタートが切れますように。
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今日は報告したいことがあります。5月中旬から担当していた癌ターミナル期の患者さんが退院されました。もともと特別養護老人ホームに入所されていたMさん。今回は全身に癌が転移しての状態に、貧血が加わっての入院でした。私は現在、がん患者リハビリテーションにも携わっております。入院の早い段階でリハビリ処方が出され、私は嚥下評価に対応、認知機能評価及び言語能力の評価を実施しました。お年寄りはちょっとしたことでも食べられなくなってしまったり、認知症状が進行してしまったり、環境変化にともなう混乱等から転倒転落をしてしまったりすることも少な
くありません。

Mさんへの早期介入は、その予防にもつながったみたいです。徐々に食欲を取り戻し、笑顔や発話が増えていきました。そして、Mさんは私が訪室するのをとても楽しみにしてくれていました。「おっ、せんせっ!」そんなひと言で始まる二人の時間…。Mさんは私に、たくさんのことを話してくれました。大工をしていたこと、息子さんが役場に勤める偉いさんだということ、食べることが好きだということ、歴史について、珍しい建造物について等々…。Mさんの教えてくれる場所や話してくれることを少しでも聞き洩らさないようにメモ帳に書き留めている様子を、笑顔で見守ってくれながら、また話続けてくれました。

Mさんの余命は1カ月…。緩和ケア病棟のある病院に移る話もでましたが、待機期間がながいとのことで、話し合った結果、もとにいた特別養護老人ホームで最期を迎えることとなりました。退院前カンファレンスで、これからの生活について話し合いました。そして…今日の日を迎えることができました。

私は泣き虫です。臨床家になってから15年経っても、それはまったく変わりません(笑)。

今朝、Mさんが言いました。「退院かぁ~、うれしいな~。あっ、でも先生と別れるのは寂しいな~」と。私はMさんの手をとって…そしていつも大切な大切な患者さんが退院したり、転院するときに送るこの曲を唄いました。

♪別れることはつらいけど~ 仕方がないんだ~ ○○さん(Mさん)のため~ 別れに星影のワルツを唄おう~♪ 途中から、Mさんも口ずさんでくれました。二人して目を見つめあいながら、目がしらは熱くなっていました。「落ち着いたら先生に手紙書こうかな」認知症でもう字も忘れてしまわれているMさん。でも、そんな事実よりも…そういって下さった気持が私は本当に本当にうれしかったです。

余命1カ月…。退院前カンファレンスで施設の担当者から家族さんに何度も確認がありました。「状態が悪化した場合も病院へは搬送しないということでよろしいですね。亡くなった後に、往診医に死後の確認をしてもらうことになります。」と…。もう会えないんだな~。Mさんは、笑顔で家族さんとともに帰られて行きました。エレベーターのドアがしまる直前、「先生、またお会いしましょう!」と言ってくれました。

私はこの仕事が大好きです。Mさんの残してくれたたくさんのコトバを、これから会うであろう方々に伝えていきますね。♪今でも好きさ死ぬほどに~♪

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「なぜ言語聴覚士になったのか?」「なぜ言語聴覚士になるのか?」

ただ漠然としていたとしても「なぜ今の仕事を目指そうとしたのか?」は一度は考えなければならないと思う。勿論、就職活動時の施設見学時や、面接などでも聞かれることも多いだろう。私はここ数年、とてもこれが気になる。時代のせいなのだろうか、「暑苦しい」とか「まじめ」とか「肩に力入りすぎ」とか何だか誠実な意見を言おうとすることに躊躇いがあるような気がしてならない。数か月前に実際あった話なんだけど、実習生にこの質問を投げかけてみたところ、驚きの返答があった。「別に言語聴覚士じゃなくてもよかったんですが…」

…。…。…。私は次の言葉が出ませんでした。

たかだか1週間の見学実習に来た1年生だったからいいんだけど(年齢は30代後半でしたが…)、自分が目指そうとしている職業に、「別に…」はないんじゃないかな~と思った。この実習生のように、大学を卒業した者であれば2年の養成校を卒業すれば言語聴覚士になることができる。頭がよい子で、そつなく試験をクリアしていけば、そしてそつなく実習をクリアしていけばきっと卒業は出来るだろう。そして、そつなく国家試験にも合格し、そつなく就職先の選考会や面接もクリアしていくのかもしれ
ない…。

でも、そのそつなくはきっと長続きはしない。就職先としてという意味ではなく、患者さんや家族さんの心をつかみ、その関わりの中で感動を生みだすことに難渋するという意味だ。勿論、そんな場合は患者さんや家族さん、その他周囲のせいにしてしまう者もいるのが正直なところだ。今までもたくさんそんな言語聴覚士や学生をみてきた。

「なぜ言語聴覚士になったのか?」「なぜ言語聴覚士になるのか?」私のこの質問を、もう一度考えてそして、よければ聞かせてくださいね。
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