ラファエロ展 | くそねこ にゃんにゃん ニャンコロリンのリン ✨ 徒然猫 雑記

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いろいろ メモ帳。
イタズラねこが 顔だけ出すこともありますが。

具体的な内容としては、
テレビ番組視聴メモ、気がついた展覧会予告、好きな音楽や作曲家などのデータ、Twitterでメモした内容の修正・追加など。



ラファエロ (Raffaello) という画家の名前を初めて目にしたのは、恐らく小学生の頃読んだ漱石の「坊ちゃん」だった、と思います。
舟からターナー島(あるいはその島のそばにある岩だったか?)を眺めながら、野だいこが赤シャツに、ラファエロのマドンナを岩場に置いてみたら 、いい絵になるとかいい絵が描ける(?)、と言うようなシーンがありました。子どもごころに、この「ラファエロのマドンナ」というコトバだけが強く記憶に残ったのですね。

「坊ちゃん」の中には、マドンナとあだ名される女性も(物語の中では、ほとんど他の人物により語られる存在として、ですが)登場してくるのは、ご存知の通りです。とてもべっぴんさんなので、マドンナと呼ばれていたーーと記憶します。
ラファエロが描いたマドンナはもとより、ラファエロのことすらあまり知らない、まあ普通の小学生でした。有名なヨーロッパの画家の名前という程度のことしか知りませんでしたから、「坊ちゃん」のストーリー、その文脈の中で、勝手にラファエロのマドンナを想像していたように思います。泰西名画の巨匠・ラファエロが描いた、しかもあの野だいこが話題にするわけですから、やや通俗的な、少し肌を露わにしたような美人画なのだろうと捉えていたような気がします。
今から思えば、明治期の知識人・漱石が、野だいこというおべっか使いの田舎教師にラファエロを語らせているところこそ面白いのかもしれません。


与太話はともかくとして、西洋絵画を語る時、絶対避けて通れない画家がこのラファエロです。37歳という若さで他界したにもかかわらず、当時の人々にも、その後の多くの画家にも、計り知れない影響を与えたと言われています。
実はそのラファエロがラファエロであるゆえんの一つこそ、まさにマドンナというか、ラファエロが数多く制作した聖母子像にあるようなのです。
しかも、そのラファエロの聖母子像の中でも、傑作の一つといわれる「大公の聖母」が来日しているのですから、子どもごころにそのコトバが記憶に残ったワタクシとしましては、出かけて見に行かなくてはと考えていました。

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4月19日 (金)、午後5時半頃西洋美術館に到着。金曜日は午後8時まで開館(入場はその30分前まで)。
人気のある展覧会ですから、ある程度の混雑は想定していましたが、会場内は想定内の観客密度で、見たい絵の前では少し待てば絵の正面で見ることができました。

ラファエロ・サンツィオ(1485~1520)、若い頃の自画像を見れば、誰が見てもヤサ男風情。巷の一部では、栗原類にそっくりとも。
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その様々な絵画作品から受ける、全体的な印象は、見るものをスーッとその中に引き込んでいくような優しさです。まさに今回の展覧会のキャッチフレーズ《ルネサンスの優美》が目の前に展開します。
恐らく見るものが引き込まれる優美さというのは、相当な画家の力量がないと無理であることは言うまでもありません。

この極致が、おそらく「大公の聖母」なのだろうという気もします。
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(1505-06/フィレンツェ パラティーナ美術館蔵)
慈愛と気品、そして子の行く末を悟っているかのような憂い、そんなものが、その表情に込められている気もします。そして、この作品の前では、やはり佇んでしまうのです。

もう一枚、今回来日している聖母子像は「聖家族と仔羊」。
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(1507/マドリード プラド美術館蔵)
大公の聖母に比べると、サイズはかなり小さくなりますが、ラファエロらしい安定したバランスの良い構図が見て取れます。

様々な肖像画も今回展示されていますが、その中で一番気に入ったのが「無口な女 (ラ・ムータ)」です。
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(1505-07/ウルビーノ マルケ州国立美術館蔵)
構図としては、ダ・ヴィンチのモナリザとほとんど変わりません。上半身を少し左に向けたところ、手を前で組んだポーズなどそっくりです。ところが、描かれたモデルの女性(現在でもまだ特定されていないらしいのですが)、その女性の個性・意思の強さみたいなものが、本当によく伝わってきます。顔の表情から、少しキツそうな感じの女性であることは否めませんが、決して嫌味とか、尊大さみたいなものは、あまり感じにくい‥‥むしろその人物の魅力のようなものに、巧みに変換されている気もしてきます。

ラファエロがダ・ヴィンチから制作途中のモナリザを見せてもらっていることは有名です。ラファエロらしいモナリザ習作と言ってしまえばそれまでですが、この作品を見れば見るほど、習作の枠にとどまらないように私には思えてきます。
コトバにすると何とも単純なことになってしまうのですが、描かれた女性の気品というか品格みたいなものが、その視線や口もと、全体の顔の表情などから伝わってくる、そんなことかもしれません。
ラファエロが西洋近代絵画に及ぼした影響の大きさや、彼のたぐい稀なる才能、それを私に思い知らせてくれた作品です。


会場には、ラファエロの作品だけではなく、ラファエロの後継者の絵画や、ラファエロが下絵を制作した超大型タピスリー、更に日本ではなかなか見る機会のない、16世紀初頭の(カンヴァスに移された)フレスコ画まで展示されているのも貴重です。

ラファエロ「エゼキエルの幻視」
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(1510/フィレンツェ パラティーナ美術館蔵)

*ここで使用した絵画図版は、絵はがきを撮影し、若干のトリミングを行い掲出しています。光沢仕上げの絵はがきのため、一部外光が作品上に写り込んでいるものもあります。


以下、様々な蛇足情報

①図録:
通常のこの手の企画展につきものの、かなり重い(値段も高い)図録以外に、今回はハンディな(文庫本よりやや幅が広いサイズの) ハードカバーの図録(¥1200)も用意されています。
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②日本におけるイタリア2013
今年は日本国内で、様々なイタリア関連イベントがめじろ押し。ラファエロ展は、その皮きりに近い位置づけのように思います。現在東京都美術館で開催中のダ・ヴィンチ展もこの一つ。
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秋に開催予定のミケランジェロ展などへ続きます。
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美術だけではなく、イタリア歌劇場の日本公演も。既に4月に行われたヴェネツィア・フェニーチェ歌劇場公演、9月のミラノ・スカラ座公演なども、この日本におけるイタリア2013関連です。

③テレビ番組
5/12・日曜美術館(Eテレ)で、テルマエロマエの作者・ヤマザキマリさんをゲストに、このラファエロ展が取り上げられました。ゲストのラファエロ体験談がやはり面白かったのですが、幸いにも5/19・21:00~再放送されます。オススメ番組。

④アングルの聖母
7/6~9/16・横浜美術館で開催予定の《プーシキン美術館展》。ラファエロ展を見た時、このリーフレットを持ち帰りました。この展覧会では、アングルの「聖杯の前の聖母」が見られます。のだいこにとってのマドンナは、むしろこちらにイメージが近そうな気もします(*^^*)