映画「少年の君」
小学校にあがる前、僕はいじめにあっていた。
その当時の僕の性格が大人しかったことやアトピー性皮膚炎で皮膚が荒れていた事が主な原因だったと思う。
だいたいは遊びの仲間に入れてもらえなかったし、たまに遊びにいれてもらえる場合でもTシャツの首元を開けられ背中をのぞきこんで今日は肌が綺麗(いつもよりまし)だから遊んでやろうなんて言われていた。
いじめられているという意識がしっかりあったし酷い状況だった。
小学生になった時には僕のアトピーはおおかた治っていた。
僕の妹は大人になるまで症状の重いアトピーに悩まされていた。
その事は妹の性格形成に大きな影響を与えたと思う。
妹のアトピーはとても可愛そうだと思ったが代わってあげたいとは考えなかった。
アトピーが無くなった事が影響してか僕は歳を重ねるにつれてだんだん虐められなくなっていった。
小学生の半ば以降はクラスでも影響力の強いポジションになっていたし目立つ生徒だったと思う。
そうなってからも僕は自分がいじめられていた事をしっかり覚えていたし、僕自身は絶対に人をいじめたりしないと心に誓っていた。
僕の親は僕の成績について全く関心がなかったので僕は勉強をしなかった。
それでもそこそこの成績だったし、受験勉強しなくても普通に高校進学できると思っていた。
勉強しなかった僕は見事に受験に失敗し公立の進学校に行けなかった。
中三の時の担任の先生が家に来て前年に亡くなった父の仏壇に土下座をして謝った。
当時はなんで担任が頭を下げるんだろうと思っていたが、相当内申点を低くしたので申し訳なく思ったんだなと今では想像できる。
高校受験が失敗して一念発起し高校浪人して真面目に勉強してみようと思った。
しかし父の兄の進言により私立の高校に行くことになった。
僕は同じ学年のみんなと進学できた代わりに勉強する機会を失った。
高校は特進クラスだったが相当出来が悪かったので勉強しなくても良い点が取れた。
三年間禁止されたアルバイトもしたし、彼女を作って一緒に過ごしたりしたが大学への推薦をいくらでもしてくれたし、内申点も相当色をつけてくれた。
僕は自分が思う大学に入れたしそこはとても楽しかった。
社会人になって病気になったり色々したが学生生活に関しては概ね満足している。
偏差値のとても低い大学だったが僕の受験は成功だったと思う。
あれだけ教育に関心のない親の元に育ったにしては中々良い成果だ。
ただ人生の後悔を一つ挙げるとすれば一度も一生懸命勉強したことがない事だ。
この映画は受験競争の激しい中国で一流大学を目指し一生懸命勉強する女の子の話だ。
彼女は恵まれない家庭環境にいながら家族の生活を変えるために必死で受験勉強に励む。
そんな中である事をきっかけにいじめのターゲットにされてしまう。
救いのない状況の中である少年と出会う事で物語が展開していく。
この映画は中国映画だが僕は中国という国をイマイチ掴めていないと思った。
経済的に急激に発展しているが色んな地域や民族を虐げ全体主義で自由を許さない国だと思っている。
そんなイメージから中国の芸術が成長するのは時間が掛かるのではないかと考えていた。
この映画では自国の問題をテーマにしながらそれを隠さずに立派な映画として仕上げている。
主人公の少年・少女はとても惹きつけるものがあるし、彼らを取り巻く環境や周りの人間たちも見事に描かれていた。
評判が良い事で疑ってみたがとても見応えのある作品だった。
それは例えば韓国映画なんかと同じような泥臭い事実に基づいた物語を表す映画の力を感じた。
中国に対する好き嫌いは関係なくこんな映画ならもっと観てみたいと思った。
経済的な成長を後ろ盾に国を挙げて映画に力を入れたらこれからもっともっと凄い映画が生まれると思う。
一人の観客としてとても楽しみだ。