本「いまだ、おしまいの地」こだま | MOONLIGHT EXPRESS ムーンライトエクスプレス

本「いまだ、おしまいの地」こだま


匿名作家のこだまさんは「夫のちんぽが入らない」という私小説で鮮烈にデビューした。

タイトル通り大学生から付き合い結婚した夫と性交渉が出来ないことを始め自分と夫の半生を赤裸々に語ったその小説はとても衝撃だった。

こんな事まで書いてしまうんだという内容が満載でとても面白かった。

10年前にブログを始めた時にタキザワに赤裸々に描いてよと言われ、僕のブログでも出来るだけ包み隠さずに記事を書くことを心掛けているが、とてもこだまさんの様にはいかない。

どうしてもこんな事は書けないというブレーキがかかってしまう。

こだまさんは自分の事を守るよりも読んだ人に面白いと思って欲しいという気持ちが勝るようだ。

内容が内容だけに公に姿を見せない事が最後の砦だが、以前からの知り合いはこだまさんの事をもちろん知っているし、いつまでも隠し通すことは出来ないんじゃないかと思う。

今作はこだまさんの三作目の作品でタイトルからも前作「ここは、おしまいの地」の続編になるようだ。

「ここは、おしまいの地」は自伝的エッセイで第34回「講談社エッセイ賞」を受賞した。

今作も自伝的エッセイで自分の人生の一部を切り取った内容だ。

こだまさんの面白さは自虐的に自分の弱点や失敗を正直にさらけ出すところだ。

本人は至って真面目な人だが、ちょっとずれていて、抜けている。

パートナーである夫も変わり者だ。

ただ、二人とも正しくありたいという気持ちが強く、こだまさん独特の優しい視点が加わった点がエッセイを面白くさせる。

真面目だが心が弱く周りと馴染めないが一生懸命前向きであろうとする点が良い。

「夫のちんぽ~」にこだまさんの両親に結婚の挨拶にいった夫が、こだまさんの父親に「なんの取り柄もない娘で」と言われた時に「あんな真っ直ぐな人を知りません」と答えたシーンが描かれていた。

両親よりも長年付き合った夫が見抜いているようにこだまさんは本当に真っ直ぐな人なんだと思う。

今回のエッセイも本当に面白かったし、こだまさんや夫の心根の良さに打たれた。

こだまさんは病気を抱えているが長生きして次々と作品を書いていって欲しい。

こだまさんの赤裸々な告白をこれからも追いかけていきたいと思う。